桜を見る会

 12月9日、臨時国会は閉会し、「桜を見る会」の件も、結局、有耶無耶のままここまで来てしまいました。

 ところで、この「桜を見る会」の会場となっている新宿御苑には桜の木は65種で1100本もあるそうですが、桜を見る会への出席者は、新聞報道によると一万数千人になるそうなので、約十人で1本の桜を鑑賞する計算になります。一本の桜の周りに10人が集まって見ていると考えると何か滑稽な感じがしますが、各界著名人はともかく、その他も集まっており、中心に内閣総理大臣もいる訳なので、風情に桜を見ることはなく、総理を見る会なのでしょう。私は当然呼ばれたことはありませんが、もし万が一にも呼ばれたら、おそらく、桜なんぞは見ていないで、かといって総理大臣も見てないで、芸能人や金メダリストを見る会になってしまいそうです。

 昔、ワークショップのアイスブレークの一つで、「知ってるつもり」というゲームを地域住民とやることがありました。これは、半分は余興ではありますが、日ごろ接している環境というものは、見えているようで見えていないものであるということに気づいてもらい、環境保全を意識的に進める必要性を説くのが目的のゲームです。集落内で「桜の木はどこにあるか」なんぞはとてもいい課題です。

 ルールは簡単で、最初、参加者は室内に集まり、先ずは地域内にある様々な環境要素の存在について思い起こしてもらいます。要素はファシリテーターが用意しておきますが、地域の中にあって欲しいものではあるが、景観的に良くも悪しくも気になる存在になる要素が対象となります。

 例えば、「自動販売機は集落内に何台あるだろうか」と問いかけます。「スーパー○○のところに二台あるよね」「○○商店の店の横にも一台あるか」という風に、頭の中で数えていき、おおよその数字を回答用紙に記入しておきます。「公共のごみ箱って、何台集落内にありますか」と問いかけると、「児童公園の入り口のところに一つあるな。そうそう、小学校の裏門の傍にも一か所」という具合だ。そして、いくつかの質問に回答した後、参加者みんなで、実際にどれくらいあるのか探しに行くというものです。

 自動販売機については、全国清涼飲料協会が景観ガイドラインなるものを自主的に作っており、周辺景観との調和への配慮が示されているものの、結構目立ちすぎていたり、明らかに景観を壊している場合もあります。目立たないと売り上げが伸びないし、目立ちすぎると景観を壊すしと、なかなか難しい存在でもあります。こういう環境要素に目を見張らせることは、農村づくりにおいて重要なことです。

 その他、「バス停のベンチは木製か金属製か」みたいな問いもあれば、「青い屋根の家は何軒ありますか」みたいなことも対象にしやすい。予想数と実際の数値がおおよそ合致すれば、環境をよく見ているということで、数が大きく外れたら、環境をしっかりと確認できていないということになり、反省を促します。

 また、このゲームでは、決して気になるものだけではなくて、最近見ていないけど、絶対に一つや二つはあるというものを対象にすることもあります。例えば、石碑はどこにあるだろうか。地蔵様は何体あるのか、鳥居の数なども面白い対象です。

 そして、知っているようで、なかなか数値が合わないのが、実は、桜の木の本数です。

 私の住んでいるつくば市研究学園周辺の葛城地区では、「千本桜まちづくり事業」が平成18年からもうかれこれ十年以上進められており、マンション、公園、調整池周りに相当な数の桜の木が植えられています。桜並木で潤いある地域にしようと、地権者が中心になって始めたものですが、その後大きな地域づくり運動となって、計画当初は20本程度の予定が、今や膨大な数になりました。私が引っ越してきたのは平成20年で、まだ当時幼木だった桜の木が二、三十本だったように記憶していますが、今は数も多く、枝ぶりも立派になって、春にはすばらしい光景が楽しめます。私のマンションも、昨年あたりから、一時期だけですが春先のライトアップを始めています。

 しかし、「それじゃ、いったい何本あるのか」と改めて聞かれると、これだけ桜に癒しを提供してもらっているのにも関わらず、また毎年見ているにも関わらず、さらに、最近も周辺を散歩したと言うのに、なんとも答えられない。50本ぐらいかなと思っていると、なんと今は700本もあると言うじゃないですか。

 700本ともなれば、把握するのは無理と言いたいところですが、それでも、関心の度合いは低いということになります。もっと、地域の環境を知ることが必要でしょう。綺麗な景観を見て楽しんで、受益しているなら、管理に携わり、受苦(受益を受けたのならその益に対する感謝として、草刈りをするとか、掃除をするとかの労働に携わるということ)もしなければと、私自身とても反省しています。

 さて、「桜を見る会」を主宰する総理は、桜の景観に対する受苦はあったのでしょうか。掃除や草刈りをすることは無いでしょうが、国民への説明くらい受苦にもならないかもしれませんが、しっかり背負ってほしいものですね。

「えっ、桜は見てないから、受益していないって・・・」

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