テレワーク

 新型コロナウイルス対策において、とうとう「緊急事態宣言」が発出されました。

 不要不急の外出を自粛し、密閉、密集、密接の3密を避け、人と人との接触も8割削減という要請が、正式に国民に対してなされた訳です。一国の長が不退転の決意を以って呼びかけたのですから、対象地域だけではなく、ここは全国民に対して出されたと思うぐらいで良く、我々は中身をよく理解し、強い意思を以って実行していかねばならないでしょう。でも、仕事をこれまで通りにしようとすると、人と人との接触の8割削減は、なかなか実行し難しいものがあります。そんな中、注目されているのが「テレワーク」です。

 テレワークとは、情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことを言います。働く場所によって、在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務の3つに分けられます。中でも、モバイルワークというのは、今はもう多くの人が一部は使っていて、現場でのオンライン決済などの高度な使い方もありますが、現場作業者と事務所がスマートフォンで報告・連絡を交わすのも、モバイルワークの一つです。ただ、この使い方は、接触削減の効果よりも接触拡大のための機能の方が大きいので、今回のテレワークでは効果は薄いでしょう。また、サテライトオフィスというのは、勤務先以外のレンタルオフィスや会社が用意した郊外のオフィスなどでインターネットなどを使って勤務することを言うので、今回の対策として求められているものとは少し違います。よって、重要なのは在宅勤務の推進ということになります。自宅で仕事するなら、人との接触は家族だけになるので、ある程度行動が制限され、8割削減に少しは貢献するワークスタイルとなるでしょう。

 パーソル総合研究所が政府の要請を受け、新型コロナウイルスによるテレワークへの影響について、3月9日~15日に全国の正社員2万人規模の緊急調査を実施し、その結果を3月23日に発表しましたが、その内容を見ると、正社員のテレワーク(在宅勤務)の実施率は13.2%だったそうです。そのうち現在の会社で初めてテレワークを実施した人は半数近い47.8%となりました。テレワークを実施していない人の理由は、テレワーク制度が整備されていないことが41.1%、テレワークを行える業務ではないことが39.5%、テレワークのためのICT環境が整備されていないことが17.5%となり急には、企業側もテレワークに対応しきなかったということになります。

 厚生労働省も緊急で、3月31日、4月1日にLINEにて第1回「新型コロナ対策のための全国調査」を実施したところ、2400万人の回答を得ましたが、「仕事はテレワークにしている」との回答はわずか5.6%にとどまったようです。東京商工会議所の調べでは、東京23区内でのテレワーク導入率も26%で、どちらのデータにしろ、まだまだ普及していない。

 確かに、勤怠管理やセキュリティリスク対策、スケジュール調整、勤務評価等、ハードルの高い条件整備もありますが、テレワーク環境の整備はそれほど問題にはならないだろう。PCは会社の貸与でないと使えないとか、Wi-Fiを用意しろとか言わなければ、緊急なのだから、とりあえず自分持ちで、PCとインターネットさえあれば、やろうと思えば明日にでもできるはずです。大規模な組織がやるとなれば、また長大重厚なシステムを用意して、がんじがらめの制度設計をしてしまうが、小規模な組織なら、無料または少額で、軽いルールでおおよそのことはできる時代となっています。

 世の中の業務には、テレワークでは解決しないこともかなり多いことは事実です。しかし、テレワークが向かないような業務は別として、就業時間の4割、部署や管理職によっては5割と言われる、打ち合わせや会議ぐらいはテレ(遠隔)で十分だと思うのですが、どうでしょうか。

 当研究会も、楽ちん多面の令和2年度バージョンの開発(改良)に向けて、開発プロジェクトを立ち上げたが、新型コロナウイルス問題で、関係者がなかなか集まれないので、Slackというチャット(リアルタイムメール会話みたいなことと理解すればよいか)とZoomというテレビ会議システムを導入して開発会議をしていくことにしました。

 私は、ほとんどテレワーク素人でありますが、2回ほど練習をするだけで、おおよそのやり方は分かってきました。確かにこれで参加者の意思の8割は伝わります。しかし、何かちょっと足りない感覚が残る。膝突き合わせて喋らないと伝わらない何かがあります。

 ディスカッションによってアイデアを出すような企画に関することは、特定の場所、オフィスでの集合ワークでなければ機能が落ちるだろう。でも、まだこれはチャットでやれないこともないが、近くに人がいることによってのみ伝わり、デジタルでは伝わらないのが、合意形成の意思疎通に当たる部分みたいです。

 なぜなら、合意というものは、YesかNoの二者択一ではなく、総論賛成・各論反対みたいなYesもあれば、迷いながらのNoもある。中途半端な意思があるのが人間であり、それを汲み取った上での結論を出すのが、合意形成の下では重要な場合があるが、テレワークではそれがなかなか伝わらないのである。

 いつも不思議だなぁと思っているのは、SNSなどで意思表示するあの親指立てたマークやハートマークだ。「いいね」って言ったって、いろいろあるんじゃないのか。若い人たちは、どうしてあんなに潔く「いいね」をでき、あんなに素直にシェアを受け入れられるんだろうかと思う。まぁ、あれはSNSだから、無理して意思表示する必要はないが、会議で、「いいね」しか意思表示ができないとなると困ってしまう。

 「国会の法案だって、最後は投票して決まるじゃないですか、最近はかなりコミュニケーションの取りやすいテレワークシステムもあるし、更にこれから5G(大容量高速通信で素早く膨大な情報を取得できる通信)や4K、8K(高解像度画像)が普及してくると、人の顔色だって読み取れますよ。だから、テレワークで十分じゃないですか」って、デジタル派の皆さんから口撃されるかもしれない。また、「曖昧な結論って、まさに昭和ですよね。令和はもっと合理的に合意形成しないと」と、考え方そのものに若い人からクレームがつくかもしれない。しかし、いやいや、世の中にはなんとなく決まっていくというものもあります。それが合意の醍醐味で、それは小さな集団であればあるほど、中途半端なまま、なんとなく鶴の一声も入っているような、いないような、最後に言った人の意見が生きてしまったような決まり方もあり、膝突き合わせて話し、接触が密であることが意思決定の重要な要素になるのだが、この感じが、今のところ、メールやチャット(会話)やテレビ会議では再現できないのです。

 コロナ問題の真っただ中で不謹慎ではありますが、唾や汗が掛からないとお互い理解できないところがあるのかもしれない。それが人というものなんだろう。

 結局は、物事を決めるのは人と人なのである、曖昧で、有耶無耶な意思から合意していく過程があるからこそ、その決定に絶対的な自信とはならない賛成と反対がある。天才バカボンのパパではないが、「賛成の反対なのだ」。そして、とりあえず、「これでいいのだ」となるのだ。

 農村づくりは、時代が変わっても、人と人の密な関係で出来上がっていくことに変わりはないでしょう。集まって落ちつかないと「集落」にならない。テレワークを推進し、在宅勤務になったとしても、最後は膝突き合わせて話したいものです。

 農村づくりを健全に進めるためにも、なんとしても、新型コロナ感染を封じ込めないとなりません。8割接触削減のための無理やりのテレワークではなく、人と人とのより密接な関係を築くためのテレワークにしたいものです。 今は、夜の飲み会は「反対なのだ」でも、やっぱり、ビールジョッキはぶつけ合う方が「いいのだ」。

※以前にやったワークショップの写真だ。これは膝突き合わせて話し合うのが醍醐味だ。今は少し辛抱するしかない。

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