BUZZMAFF(ばずまふ)

 いつも、本研究会は最新情報を取り扱うのが遅いようです。テレビで話題が上がって、しばらくして、ちょっと忘れられた頃にようやく、「こんなのがあるのを知っていますか」という感じで出してしまうので、情報を取るのが早い人には、「今さら何を」と言われますし、遅い人、まだその情報を知らなかった人には、「なんか聞いたことあるけど、今、流行っているの。そうでもないよね」と、旬じゃないので興味をそそらないようです。

 本当は、私も、テレビやマスコミで話題になるよりも先に掴んでいる情報も多いのですが、一週間に一回の「言わせてもらえば」に掲載しようとした場合、別の伝えたい話題もあるため、次回、次回と回している内に、もう旬ではなくなってしまっているという具合です。

 今回紹介するのも、ちょっと遅すぎて恥ずかしいぐらいですが、農林水産省の職員が中心になって発信しているYouTube(ユーチューブ)チャンネル「BUZZ MAFF(ばずまふ)」について紹介したいと思います。

 農村づくりの観点から紹介していきたいと思いますので、興味がそそられなくても、是非、読んでみてください。

 YouTube(ユーチューブ)は今となっては知らない人はいないと思います。世界規模の動画共有SNS(ソーシャルネットワークサービス)ですね。簡単に言うと、自作した動画を配信して、多くの人に見てもらうことになるのですが、閲覧、評価、共有、レポート、コメント、チャンネル登録などを行うことができるので、うまく作れば、テレビのバラエティ番組が作れるみたいなものです。視聴者数が多くなれば、新聞の販売数やドラマの視聴者数よりも多くなることも考えられるので、そこには広告費が付いてくるという仕組みとなります。もちろん、広告費などにまったく目もくれず、ひたすら、自分の趣味のチャンネルを作っている方もいれば、とにかくかわいいと言う理由で、毎日、飼い猫の様子を送り続けている人もいますが、一度、人気に火が付くと、飛んでもないことになります。

 SNSは新聞やテレビと言った統制を受けたマスメディアの世界で育ってきた昭和世代が、固定した価値観を生きる拠り処とすることに対して、携帯電話を使い、広範囲で、地域も国も人種も飛び越えたネットワークを築ける平成・令和世代が、Webコンテンツ、メールを通して、より多様で、より拡張的な情報を自由に共有することで、閉塞した社会価値から脱却し、高い自由度を持った価値観を生んでいこうとしたことで、ここまで大きな社会の変革をもたらしたものだと私は考えます。犯罪の温床やハラスメントの拡大にもつながり、社会問題も孕んでいますが、最近では、小学生の成りたい職業のトップテンにYouTuber(ユーチューバー:自作動画に付帯された広告収益による配当によって生計を立てる職業)が入っており、憧れの職業の一つです。TouTube(ユーチューブ)なんか、生身で触れ合えない新人類の無責任な情報の垂れ流しだなんてことは言ってられないし、生活する上で、知らないで済ます訳にもいかなくなっています。

 官公庁でも、若い世代への政策の浸透のための広報活動において、このシステムを活かさない手は無いと、たくさんのチャンネルが立ち上がっています。さて、そんな中、農林水産省の有志若手職員によって、食や地方の魅力をSNSで発信するプロジェクトが、2020年1月に立ち上がりました。このプロジェクトに用いられるYouTubeチャンネルの名前が「BUZZ MAFF(ばずまふ)」と言います。名前は、「流行する」という意味で使われる「BUZZ(ばず)る」と、農林水産省の略称「MAFF(まふ)」の組み合わせによるものです。「霞ヶ関初の官僚系YouTuber(ユーチューバー)」集団が、公的に農林水産省大臣官房広報評価課広報室所管で動画配信に携わっているのです。

 特に、話題になったのは、2020年3月に、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う影響への対応として、農水省が花の販売促進のために始めた「花いっぱいプロジェクト」を告知するため、九州農政局のチーム「タガヤセキュウシュウ」の白石さんと野田さんのお二人が3月12日に投稿した動画であり、この時は、テレビなどでもそうとう取り上げられました。彼らの動画は、視聴回数が10万回を突破するものも多く、上記した「花いっぱいプロジェクト」の動画などは90万回というプロユーチューバー並みの腕前です。私のお気に入りは、大臣会見を様々な方言でアフレコするものとか、TASOGARE(たそがれ)松岡さんと言う方の、『農村プロデューサー養成講座』のPRポスターの制作秘話なんかですね。ポスターも斬新ですが、何と言っても、局長室へ持って入った時のポスター差し出す感じがいいですね。つい先ごろ、経産省の若手キャリア官僚が悪いことして捕まったなんて事件もある中、彼ら農水若手職員たち、とても好感が持て、こんな若者が農水省に居てくれてよかったと感じました。

 農水職員が「地」でやっていることから、コンテンツとしてはどうしても、農産物や食品の知識に関するものに偏りますし、中・高・大と勉強頑張ってきましたという人が比較的多いためでしょうか、一生懸命ふざけてみようとしても、まじめさというか、品の良さが表に出てしまい、5000回ぐらいの視聴回数で止まってしまいがちです。最近は特に、苦戦しているコンテンツも多いようです。視聴者の慣れもあるかもしれませんがね。

 BUZZ MAFFのチャンネル登録数6.88万人は多いのかというと、おそらくまだ少ない方でしょう。でも、親方の農林水産省の公式チャンネルmaffchannel(まふチャンネル)は2.42万人で、官公庁チャンネルでは、ひときわ飛びぬけているのが海上自衛隊チャンネルの23.3万人、首相官邸チャンネルの11.9万人で,外務省、国税局などに次いで、農林水産省は上位クラスであって、それ以外は軒並み1万人以下、ひどいところは数百人程度の登録数であることを思うと、「BUZZ MAFF」はしっかりBAZZっていると言っても良いかもしれません。

 私は素人なので、何が受けて、何が受けないかはよくわかりませんが、上司に、「視聴回数伸び悩んでいるじゃないか」、「広報効果が薄いんじゃないか」と、もし言われても、受ける受けないに左右されず、どんと胸を張って、「農林水産業と地域を愛しているだけなので、それが何か」と続けてほしいものです。

 YouTube(ユーチューブ)検索で「BUZZ MAFF」と入力して、是非、読者の皆さんも、どんなものを発信しているのかを見てみてほしい。中には、失礼だが面白くないものもあるし、見ているこちらが恥ずかしくなるようなものもあるが、内容の問題ではなく、若い職員の聴こうとする姿勢、伝えようとする意気込みに感動する。もしかしたら、地域での悩み事も、何とか課、何とか係のお役所のお堅いルートを通して相談に行くのじゃなく、こういう柔らかい若い職員に投げてみるのも良いのではないだろうか。最近は、地方においても、お役所が観光や物産振興を目的に、YouTubeの利用も段々と増えてきましたが、もっとローカルにもっとマニアックに、「私」となる地方ユーチューバーが「公」と連携して、地域情報を出しても良いのではないかとも思います。目的なんかなくていいのです。「地元愛」が大切なのです。

BUZZMAFF URL https://www.youtube.com/channel/UCk2ryX95GgVFSTcVCH2HS2g

 国の政策は、無理やり施行するものではなく、自然に施行されているものでなくてはならない。農林水産省職員は、常に、政策を国民にアピールするためには、どうしたら自然に理解が進み、政策が浸透していくのかを考えているはずだ。それに対して、これまでは、行政のルートを通して間接的に伝えてきたに過ぎなかったが、SNSとなると、国民の反応は直ぐに自分の政策に対する姿勢や考えに跳ね返ってくるはずだ。私は、毎夜遅くまで仲間同士で切磋琢磨し、世の中の反応を見極めながら、伝えるべき本質は何かを悩み、見極めながら動画編集を行っている彼らを想像すると、このプロジェクト、農水の基本施策として、久しぶりのホームランなのではないかと思うのです。

※アイキャッチはBUZZMAFFのタイトル画面。宣伝したいので、使わせていただきました。ジングル(タイトル音楽)は当時の末松広行事務次官と枝元真徹大臣官房長の見事な演奏です。

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