食品ロス

 以前もお話したことがありますが、山本家の食事については、退職以降すべて夫である私が取り仕切っています。妻が塾の講師をやっていて、どうしても夕食の用意をする時間帯に家にいないため、食事の用意ができないのです。そこで、私が栄養面を考慮しながら、美味しさ、季節性、経済性を追求して料理をしています。

 最近更に、SDGsの影響もあって、生ごみやプラスチックゴミを減らす、食器洗いを減らす、食材ロスを減らす等の環境面にも気を遣うようになってきましたが、その結果、様々な要素を複合的に組み合わせて食事の用意をすることが、如何に難しい家事なのかということがよく分かってきました。

 以前、子供たちの分の食事を作っていた頃は、全部きれいに平らげてくれるので、料理はどんぶり勘定で作って、夕食で買ってきた食材を一回で全部使えましたが、今は夫婦二人だけの食事となり、更に、以前は子供たちに負けじと食べていた私も、健康のため、腹八分目で押さえようと心掛けていることから、食材を何回にも分けて使う事が多くなりました。作り置きもしますが、適さないものもありますし、できる限り新鮮なものを食べたいので、そうすると否応なく、食材ロスが目立つようになってきました。

 妻は、自分は料理しないのですが、エコ志向が高く、食品ロスや生ごみ処理にはうるさく、多く作り過ぎて余らせたりすると、「勿体ない」と怒ります。私も環境に関する研究者であったので、かなり意識してはいるのですが、理屈は言えても、自分でその行動をとろうとすると、結構困難な課題にぶつかります。

 特に、食材の使い方、冷蔵庫の中の管理については、以前よりかなりシステマチックになりました。以前は、スーパーで安売りをしているとついつい買い込んでしまい、冷蔵庫を一杯にしてしまいがちでしたが、今では、冷蔵庫に何がどれくらい入っているのかを空で言えるほどになってきましたし、おおよそではありますが、冷凍食品の在庫も常に把握できるようになりました。スパゲティが4袋にゆでうどんが3玉、ギョーザとシューマイが2袋ずつ、冷凍野菜にアイスクリームが3種ぐらいは覚えてられるようになり、買い物に行く時には、料理するときに必要な食材から調味料まで何が足りないかが分かり、すでにあるのに買ってしまうことが少なくなりました。私は曲がりなりにもICT支援研究会の会長ですので、自分の記憶能力が劣ってきたところは、スマホのリマインダー(備忘録)のアプリを上手く使って補っています。

 また、食品ロスを削減するためには、食材管理だけではなく、食材をフルに使える献立計画も重要で、最近は、3日ぐらい先までの献立を描くことができるようになりました。例えば先週だと、月曜日に買ったマッシュルームを、その日ビーフシチューを作るのに使い、次の日は使わず、水曜日にはエビやブロッコリーと合わせてアヒージョに使おうと考えて、無駄なく料理ができるようになりました。毎日食卓に同じものが乗ると、妻に必ず、「昨日も食べたのに!」と指摘されるが癪に障るので、1日空けるのが重要です。

 何十年も家事に携わっていて、長けている皆さんからすると、そんなの当然の家事テクニックだろうと言われるかもしれませんが、いやいや、これはなかなか難しい。テレビで引っ張りだこの家政婦志摩さんやテレビ番組「家事やろう」で人気の食育インストラクターで3児の母、和田明日香さんなんかが、食材を無駄なくおいしい料理にしていくところを見ると、完全脱帽です。是非、今度は夫婦二人の無駄なし献立もやってもらいたいものです。

 夫婦二人でやっていると、結局、冷蔵庫に食材を眠らせてしまい、気づいた時にはカラカラかドロドロということもあります。私も、以前は、「あぁ、これもう駄目だ」「これも賞味期限とっくに切れてる」となって、妻の目が届かないところで、こっそりと食品ロスに加担する羽目になっていました。

 また、なるべく長く食材を使おうとすると、スーパーでは賞味期限の長いものを選択して買うこととなり、ヨーグルトや牛乳なんかでも、日にちを確かめながら買うことになりますが、最近は、日にちを確かめようとすると、食材の前に「食品ロスゼロを目指して~すぐに食べるなら手前を選べ~」なんてポスターが張ってあって、顎に手をやり考え込んでしまう。1箱2人で3日かかるので、今日から食べ始めるとすると、日にちの短いものを1箱、日にちの長いものを1箱で1週間2箱を買うというのが良いのだろうか。いやいやこれは、毎日食べるヨーグルトだから考えやすいが、ラーメンや料理に使う加工した焼豚だとどうしたら良いのか。賞味期限までにこれだけの量を使えるだろうか。毎日ラーメンでも私は問題ないのですが、妻からのブーイングは避けられませんし、健康的にもいかがなものか。簡単じゃないか。小分けにした量の少ないものを買えばいいじゃないかと言う方もおられるかもしれないが、そうすると食品ロスは減るがプラスチックゴミが増えてしまうし、少ない年金暮らしの家計を直撃する。なんとなく、学生一人暮らし時代の肉屋さんでの「50gだけください」みたいなのや、仲間とシェアでもしない限り、食品ロスは実現しないなと思ってしまう。

 農林水産省によると、10月は「食品ロス削減月間」で、10月30日は「食品ロス削減の日」だという。これを機に、私ももう少し、高齢夫婦二人(私たちももうすぐ前期高齢者)の食生活とエコを考えてみたいと思います。農村づくりの活動においても、食生活とエコは大切な課題です。是非、皆さん一緒に考えていきましょう。

 「東京オリンピックの食品廃棄ほどではないし、これぐらいまぁいいか」とは思いたくないので。

※文頭の写真は、かなり古い写真ですが、2006年の9月に高知県いの町で昼飯に振舞っていただいた郷土料理の数々です。手前の皿の右側の緑のはアロエ寿司です。左奥も確かアロエ。アロエの全素材を余すことなく使うところが魅力的ですが、いや、やっぱり美味いことが一番大事かもしれない。いの町の皆さん、あの時はありがとうございました。

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