総理候補者はBling-Bang-Bang-Born

 自民党総裁候補者はそれぞれの論点やそれに繋がる具体的な策は違っていても、国政論議の大きな柱としては、「経済財政再生と地域創生」と「安全保障」であるべきです。特に前者は政策の一つ一つが国民の暮らしに直接関わってくる重要な問題となります。「政治と金」の問題は関心事ではありますが、国政論議というよりはルールと禊の問題ですし、「社会保障」の問題も結局は経済問題に集約され、「日本の国どうしようか」の本質問題とはなり得ないと私は思います。また、「安全保障」にかかる憲法改正問題は国のあり方の根本になる問題で、重要であるとは思いますが、国民が直接この問題に触れるまでにはもう少し議論の題材起こしが必要で、間違っても、勉強していない内に国民投票なんかすべきではありません。

 今回、総裁選に向けて、自民党は、顔の怖い人、若くて意味不明な男前から、我の強いお姉様方までたくさんの人が立候補しています。また、政権奪回に意気込む立憲民主党も代表選に昔の名前で出ていますとばかりに、多くの候補者が細くて折れそうな杵柄(きねづか)を振り下ろしてきました。政治の世界、元気でまあよろしいんじゃないですか。でも、誰が総裁や代表に成っても、どっちが政権を担っても、国政としては「経済財政再生と地域創生」を争点としてもらわなければ困ります。気候変動の後戻りできない上昇1.5度限界と同じで、もうにっちもさっちもの状態なのですから。この本丸の争点に真っ向から向き合っている候補者もいますが、どうも公約の差別化を意識し過ぎて、本丸へ続く廊下を滑って渡る方も多い。民主党の代表候補である元総理の野田さんの言う議員定数削減の「政治改革」が先という議論はまだ良い方で、茂木さんの「増税ゼロ」の掌返しや小泉さんの「人生の選択肢拡大(多様性)」の論議も個性っちゃ個性でしょうが、そんなイメージ戦略としての気のてらい方を国民は求めてはいないように思います。(どれも大事ですけどね)

 誰が総理をやっても、議論が何に繋がるべきかというと、『人口減少社会における国民の経済的・国防的安全保障』に向けての将来像であることには変わりない訳です。その中に環境問題もエネルギー問題も多様性問題も包括されます。そこの話をしてくれないと、小手先のパフォーマンスは飽きてきました。

 ただ、この本丸の問題は、もう何十年と変わらずに議論を続け、施策を推進してきている訳ですが、そんなに変わったかというと、実は何も変わっていないというのも事実です。国防費のGDP2%の増額と憲法改正議論への展開は大きく変わったと言えば大きい方ですが、閣議決定による押し活だし、地方創生の問題なんかは議論も薄く、ほとんど何も変わっていない。そして、この牛歩のような歩みの中、頑張って生き残れる地域は生き残り、潰れるところは潰れ、過疎化はますます促進され、東京の人口は未だに増加を続け、一極集中は終わらないみたいです。もちろん人口減少自体は東京でも発生していますが、大きな政策の転換でもない限り、地域の個性を活かした地域創生の推進ぐらいでは、地域に人は誘導できず、人は東京に集まってきてしまうのでしょう。つまり、地方創生はこれまでずっと失政続きだと言って良いでしょう。

 どの角度からどの議論を聞いてみても、今の総理候補者に画期的な経済再生や地域創生論を展開する人はいないように思います。言い方は変わったとしても、やることは、金融政策、財政政策、成長戦略に資する施策の展開の組み合わせで経済成長を狙うのが基本ではないだろうか。その中に税制改革や働き方改革、規制緩和、人的投資や科学技術戦略があったりするだけではなかろうか。これは小細工という奴です。地方創生の議論ともなれば、もっと政策の範囲は狭くなります。地方の魅力創出の推進、成功事例の横展開、関係人口も含めた人的かつ産業連携の推進、ITC活用による産業創出あたりだが、どれももうすでに「Bling-Bang-Bang-Born※(生身のままでやりまくるために生きるみたいな意味か?)」とやってきているが「To the next, To the 1番上※」まで行ってしまい、パッとしないちゅうか、なんちゅうか、今では「暖簾に腕押し」みたいになってきている。そして、社会派の専門家たちの言う失敗の理由は、「住民が自ら学び、地域の将来像に夢と責任を持ち、共感と共有の地域づくりができていないから」という他人事問題になります。実際その回答は正解です。ただ重要なのは、「共感はどうやってもたらされるのか、意思の共有はどのように行うのか」の国民の意識づくりであり、国策がそこまでコミットした本質論議をして初めて何か少し動くということではないだろうか。それができていないのから何も進みはしないのです。よって、現在「地域創生」でなされる政策は、総理じゃなくたって国民の誰だって言える政策であるということです。総理候補者だというなら、この部分について本質議論をして何か画期的なことを言ってもらいたいのです。例えば、良いか悪いかは別として、「地方創生競争廃止論」とか「東京機能分散計画」とか「道州制の導入」とかを展開して欲しいのです。でないと、誰もが同じように見えてしまい、「誰が総理になっても変わらないんじゃない」と、達観して諦観してBornする国民になってしまいます。今回は総裁選、代表選を茶化して終わりです。

※日本のヒップホップグループCreepy Nuts(クリーピーナッツ)のヒットナンバー : テレビアニメ『マッシュル-MASHLE-』第2期のオープニング主題歌として書き下ろされた楽曲の歌詞。

※地方創生競争廃止論 : 地方の個性を活かした活性化施策は競争疲れを起こし、限界が近づいている。国(本当は道州規模が望ましい)が先導して、バランスの取れた拠点活性化施策を展開して、取捨選択の総合的な生き残り策を展開する時代が来ているのではという筆者の私見。

※アイストップの写真は横浜中華街の「善隣門」、9月8日ポルノグラフティのコンサートで横浜スタジアムに来た時に、中華街に寄った。門の裏側に「親仁善隣」という文字がある。これは「仁に親しみ隣に善(よ)くするは、国の宝なり」からきている。

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