ワークショップをやってみよう(7)

5.備えあれば憂いなし

(1)参加者の集め方

 参加者の集め方は目的によって異なります。集落環境点検を地域づくりのプロセスの中で行う場合、事業の推進や目標達成のための活動として行う場合、子供たちの教育、住民の生涯学習として行う場合で異なります。多くの人に来てもらうべきだから、とにかく老若男女、様々な参加者を呼ぼうと思いがちですが、実はそう考える必要はありません。もちろん、そのようなイベント的な集落環境点検が必要な場合もありますが、効果的に行うためには、やはり、ある程度絞り込んだ参加者募集を考えておくべきだと思います。地元で初めての集落環境点検をするなら、先ずは、自治会役員や子供会、敬老会、婦人会、消防団などの各種の地域組織の中心メンバーと行政担当者だけで廻る方が良いですし、環境づくり、景観づくり等を、集落点検活動を通して今後検討していきたいなら、子供たちを参加させたり、女性、外部者等に参加してもらうことも考えないといけません。また、道路整備や水路改修などの事業が控えている話なら、農業関係組織と自治会役員を中心にして行った方が良いでしょう。目的によって、臨機応変に参加者を選定した方が良い。

 但し大切なことは、どんなメンバーでやる場合でも、集落住民に広報を行い、どんな目的で、どんなメンバーで点検活動をしますと言うことを告知しておくことが必要です。参加できなかった人のことも考えておかないといけません。

 また、一般に広く参加者を求める場合は、ポスターの作成、有線放送による案内、集落新聞等への掲載を行い、事前に参加者を把握しておく必要があります。

 広報しても、たくさん来て困るほど集まることはない。むしろ動員しなければならないと言う場合もあると思います。是非このように考えてください。動員しなければ来ないと言うことは、①集落環境点検に意義を感じない。②忙しいため出てこられない。③広報が行き届いておらず住民に伝わっていないと言うことです。後者二つは、改良の余地がありますが、地域を再点検することに意義を感じない場合は、地域づくりそのものに関心がないと言うことなので、なかなか参加者を増やすことは難しいと思われます。①何か別のイベントとあせて実施する。②問題となるポイントが自分や子供にとって関心を持たざるを得ないような内容とする。③お奨めはしませんが、何かもらえる。等の工夫をして、動員は最後の手段としましょう。以前ある地区で、お土産を先に出したら、お土産だけ持って、ワークショップには参加せず帰ってしまった地区もありました。

(2)段取りの取り決め

 主催者となった人は、当日、どのような段取りで点検を行うかを考えます。とにかく集まって、集落内を自由に廻ってと言うわけにはいきません。事故や迷子があってはいけませんし、何よりも効果的に地域づくりに繋げられるようにしないといけません。次の4点について戦略を考えないといけません。

1)点検作業方法、点検のまとめと発表会の進め方を整理

 点検作業の方法やまとめ方については、前回でお話した通りですが、これはあくまでも一般型であって、この通りにしなくてはならないと言うことではありません。集まった住民の世代や属性に応じて、文字を書いてもらうのか、選択してもらうのか、口頭で言うのか、大きな紙にみんなで書くのか、小さな紙に個別に書くのかを検討します。

2)点検する領域、ルート、項目の選定

 住民と言えども、自分たちを取り巻く環境のすべてを知っているわけではありません。場合によっては、外部者の方が地域の環境をよく知っている場合もあります。よって、環境点検においては、点検する範囲がどこまでか、当日点検するルートはどこか、何をポイントに点検するかを決めておかなければ、効果的な点検とはなりません。効果的でない点検からは「気づき」が得られませんから、重要な資源があっても気づかずに通り過ぎる場合もあります。そこで、主催者は事前に十分現地踏査をして、当日、住民が点検するルートの下見をして、より効果的な「気づき」に繋がる項目を選定しておいた方が良い場合があります。あまりに、主催者側の意図を強調しすぎて、自由に住民が点検できないと言うのも問題がありますが、まったく戦略無しに点検するのも問題があります。

3)点検グループの分け方、グループごとのリーダーの選定

 点検グループの分け方は、当日の参加者の属性によって異なります。グループのリーダーは当日決める場合も多々ありますが、この人にリーダーをしてもらえると話が進むと考えられる場合は、その人を事前に割り当てておくこともあります。ワークショップは基本的にはコミュニケーションのツールですから、コミュニケーションの得意な人が先導する形となると、コミュニケーションを取るのが苦手な人も入り込みやすくなります。もちろん、自由度は重要で、強制的なコミュニケーションとならない工夫が必要です。しかし、リーダーがいつもいつも同じと言うのも問題です。確かに、あの人はまとめるのがうまいと言う人はいますが、その人がいなくなったら急に話がまとまらないようでは困ります。地域づくりは長い年月をかけて行なうものです。将来のことも考えて、若いリーダーやコミュニケーターも育てるため、いろいろな人が対応した方がよろしいでしょう。

4)会場設営、説明資料、掲示板、拡声器等の機材、必要となる機器や携行品等の準備

 会場設営は重要な段取りの一つです。机や椅子の配置、ブロックの作り方、移動する空間が適正でないと、説明が聞きにくかったり、作業がし辛かったり、話し合いが進まないこともあります。机の置き方や椅子の配置については、ワークショップの専門書などにも出ているので、それを参照することを勧めます。また、説明のためには資料を配布し、作業の段取りを説明するためのホワイトボードや作業の進行状態や注意点を掲示する掲示板も用意します。人数が多い場合、野外で行う場合は、拡声器も用意しておくべきです。さらに、最近はプレゼンテーション用にPCを使う場合も多いと思いますが、プロジェクターやスクリーンも会場の大きさや人数に合わせて準備しておくべきです。一般的には50人程度なら100インチのスクリーンが必要となりますが、地域づくりではお年寄りも多いと思われるので、30人で100インチ程度のスクリーンを用意したいものです。

 それ以外に、ファシリテータやスタッフは連絡網を作り、携帯電話で連絡できるようにしておくことも重要です。集落環境点検の場合は、ルートの拠点にスタッフが立っておいた方が良い場合があります。特に、その場合は、携帯電話での状況報告は大切です。

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