地方創生はどうなった

 「地方創生って、最近あまり聞かなくなりましたが、今どうなっているんですか」と、先日、若い人に聞かれた。地方創生が始まって5年が過ぎたが、平成27年に石破茂さんが担当大臣をやっていた時は、何やら動いていたような気がした。途中、片山さつきさんが女性活躍担当と併せて就任した時も、ちょっと何か関係ありそうでなさそうでみたいなところで、「地方創生」は話題になったが、確かに最近は、成りを潜めている。

 皆さんご存知だと思いますが、この政策はあの有名な「増田レポート(以前総務大臣だった増田寛也さんが中心になってまとめたもの)」に端を発するもので、地方都市の消滅をなんとか是正するため、東京への一極集中から、個性を生かした総合戦略を地方自治体が立てて、働き、暮らし続けられる地方社会を作ろうということで始まった政策であります。

 5年が経ちましたので、政府は、昨年の12月に5年間の分析をした上で、第二期の「まち・ひと・しごと創生戦略」をまとめました。その内容についてのお話もしたいのですが、今回はまず、一期を振り返ってみましょう。

 第一期の目標で最も重要であったのは、「地方への人の流れをつくる」ということなのですが、これについては、統計を見る限りではなんとも無残な結果のようです。まち・ひと・しごと創生本部のホームページにある情報を見る限りでは、未だに、東京一人勝ち状態で、東京圏への転入6万人減も、東京圏からの転出4万人増も達成できず、転入超過数は14万人に達し、減る傾向がみられないどころか、拡大傾向まで見受けられる。また、市町においては、全体的な人口減少傾向のまま、子育て支援の施策などのちょっとしたアイデアの違いで、周辺の市町間で人口の取り合いをしているだけで、東京への集中を阻止している訳ではなさそうだ。

 そもそも、こういった国家総合戦略みたいなものは、なかなか思ったようにならないのが常で、池田内閣の全総での、拡大路線、都市集中路線が実現しただけで、それ以降の新全総も三全総も四全総も、はたまた21世紀グランドデザインも、お題目こそかっこよく、『多極分散』や『多軸型国土構造』と立てて、大都市の人口と産業の集中を分散する方向で進められたものの、その達成度は著しく低い。

 この根源はどこにあるのかを考える時、私は、国の政策だけに責任を取らすのはどうかと思いますし、国の目標としては決して間違ってはいないと思います。では何故にこれほどまでにKPI(簡単に言うと、業績評価の指標値のことを言います。昔は「東京圏に人口が増えないように○○と▽△の施策を実行し、がんばります」とだけ書かれていたのですが、今は「東京圏内の人口を□□年までに、○○と▽△の施策を●件実行し、達成します」と書いてあり、より数値で具体的に達成目標を示した計画となっている)を無視する結果となるのでしょうか。

 私の答えの一つは、金太郎飴のような地域計画にあり、そうなる根源に、計画策定の他人任せ(コンサルタント丸投げ)問題があると思っています。昔から、多くの計画がそうなのですが、計画が他人事になってしまっています。

 地方創生実現においては、「都道府県まち・ひと・しごと創生総合戦略」や「市町村まち・ひと・しごと創生総合戦略」の地方版総合戦略なるものが策定され、策定の予算措置もなされています。この計画は、これまで市町村で策定されてきた総合計画のような空間計画が入っていないため、結局はお題目中心となってしまっています。自治体に策定義務はなくなりましたが、地域版総合戦略とは別に、これまでどおり総合計画も策定してもらいたいと思いますが、それらの計画も含めて、コンサルタントへの丸投げが横行していることに懸念を表したい。

 いろいろな計画を見ても、何か地域の実体のある夢が見えてこないのです。市町の職員の意気も感じないのです。もちろん、素晴らしい市町の職員も大勢いますが、昔と比べると少なく、弱いと思わざるを得ません。他人任せにするから、小手先だけのアイデアの書かれた計画になり、地域の根深い文化的重厚感のある地域計画でなくなっていると思います。

 数年前のことですが、とある自治体(○○町)で、策定中の地方版総合戦略を見せてもらった時、まだ途中段階ではありましたが、「○○町では・・・・・」と書かれている文章の一つに「▽△町では・・・・・」と違う町の名前を見つけたことがあります。私は、これはまずいと思って、その町の職員に「これ違っていますね」と指摘したところ、恥ずかしかったのでしょう、顔が真っ赤になって、「けしからなんなぁ、言っておきます」と言った。

 「誰に」言っとくのか、もちろん「外注しているコンサルタントに」である。自分の作ったものという意識が無いのだろう。

 創生本部のホームページにある「地方版総合戦略等の検証について(平成31年3月31日)を見ると、人口ビジョンや地方版総合戦略の策定に当たってシンクタンクやコンサルタント会社などの外部機関・ 組織に策定業務を委託したかどうかを地方公共団体に聞いたところ、770団体のうち、48団体(6.2%)が「すべて委託した」、600団体(77.9%)が「一部委託した」と 回答し、回答団体の8割以上が何らかの形で外部委託していることが分かったそうだ。私も、これまでにいくつかの市町村で、専門委員として、策定に携わった経験があるので、外部委託を受けた側ではあるのですが、これを仕切るコンサルタントは、同じような内容の計画を一人の担当者が数本作ることになるので、ワープロで市町村名の文字置換だけして、同じ文章を使い回ししているため、一つ置換し忘れたということでしょう。

 これが良くないのです。もちろん、本気で考えてくれて、町の職員と二人三脚で作ってくれるコンサルタントもありますので、それはそれで活用していかないといけませんが、遠く離れた東京から、数回程度、その町にやってくるコンサルタントの社員が地域の真の魅力なんか分かるはずがない。以前、本気のコンサルタントの社員がいて、その人なんかは一年間、担当する町に住んだということもありますが、一般的には、コンサルタントの経営上も、そういう訳にはいかず、結局は、資料を整理していくだけの役割しか果たせないというのが現状です。

 先ず、ここから変えないといけないのです。計画を策定するのは辛いですし、しんどいです。でも、市町の職員が、住民と一体となり、様々な専門家集団から意見を徴収し、書き方やまとめ方はコンサルタントと相談したとしても、自らが策定することが重要です。中身を作るということは、この市町の将来を作るということです。市町の職員の責任であり、首長の責任なのです。丸投げなんて絶対にしてはいけません。できれば、委託しないで作るぐらいの意気込みが必要です。

 以前、町の職員を対象にした研修会で、このことを言ったことがありますが、ニコニコして聞いていたのは町長さんだけで、部長さんなんかは憮然としていました。

 「いやいや、市町の職員はちゃんと頭を使っています。作業だけコンサルタントにしてもらっているんです」と反論される方もあるでしょうが、そういうことじゃないんです。手を使うことが大切なのです。計画はアイデア集ではなく、体を動かして実現する夢だから、計画も体から動かしましょう。住民へアンケート投げて、数字を整理して終わりじゃなくて、調査期間は、住民全員と膝突き合わせて話を聞くぐらいの意気込みが必要です。

 ある町の農業関連の計画策定に関わり、議会の農業委員会で担当職員が説明をしている場面に呼ばれたことがあります。後ろの席で聞いていたところ、担当者が「我が町も、うまいコメの産地でありますが、認知度が低いので、今回の計画では、今後ブラインド米として販売していく予定です」と説明していた。何度聞いても『ブラインド米』と言っていた。英語に弱かったのか、それとも、地方なまりが入っていたのか、それとも、計画丸投げで、しっかり読み込んでいなかったのか。真相はブラインドされたままだ。 (※「ブラインド」とは「見えなくする」という意味)

(※写真イメージ:「住む」ということは地域の文化が体に染み込むということだ。)

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