オンライン飲み会

 例年、この時期になると気になるのが、『現代用語の基礎知識』が選ぶ「ユーキャン新語・流行語大賞」と清水寺の舞台の上から発表される「今年の漢字」だ。私は毎年、発表の翌日の新聞を楽しみにしています。

 今年も、「新語・流行語大賞」は12月1日(木)に、「今年の漢字」は12月14日発表されました。どちらも新型コロナ関連で、『密』という字が入ったのですが、予想通りというか、選びようがなかったのだろうなぁという結果でした。

 特に、新語・流行語大賞に輝いた『3密』は、言葉そのものよりも、この人、狙ってんじゃないのと私の言った通り(「言わせてもらえば」のコーナーの8月24日『「エシカル」ってなんだ』に掲載)、小池都知事でした。発表を見た瞬間、数打ちゃ当たるって奴だよなとも思いました。

 ちょっと取り上げられたのが遅かったので、ノミネートはされませんでしたが、『5つの小』も秀逸かなと思います。中身は多すぎて、5つも覚えていられないですが、百合子女史の会見での説明が好きでした。特に最後のまとめ方がうまい。「会食は『小人数』。できれば『小一時間』。『小声』で楽しんで、料理は『小皿』に分けて、『小まめ』に換気や消毒をしていただく。5つの『小』を合言葉にして、感染防止対策の徹底をお願いします。さらに加えて、『こころづかい(『小』に引っ掛けてある)』。今も医療現場の最前線で必死に尽力されている医療従事者へのこころづかいも決して忘れてはなりません」ついでに、小池の『小』と、洒落っ気も満載だ。そこまで言わなくてもという感もあるが、こちらは流行語というよりは、標語大賞を私が贈りたいと思います。

 さて、新語・流行語大賞ですが、選考委員の金田一秀穂氏が、「『3密』は健気な日本語である。結婚の条件としての『3高』。大変な肉体労働を表す『3K』。いくつかある大切な項目をまとめる言い方が日本語にはあって、得意技ともいえる。この悲劇的厄災の中にあっても、日本語はその特性を発揮して注意すべき心得をまとめて表し、予防を喚起した」との講評を聞いて、なるほど言語学者らしい講評だと感心しましたが、それ以上に、「もうちょっと違う言葉を選びたかった。選考の会でもうんざりしながら探した。外来語も『パンデミック』、日本語も『濃厚接触』と、あまりにも未成熟な言葉が多く、それにもうんざりさせられた」と告白したのが印象的でした。

 それにしても、ノミネートされた言葉も、アンケートがあるからと言っても、少し範囲を広過ぎてはいないだろうか。トップテンに『鬼滅の刃』、『フワちゃん』、『愛の不時着』などが選択されているが、これらは流行語というよりは、流行した固有名詞であって、新語・流行語という範疇になるのだろうかと考えさせられました。そんなにくそ真面目に考える必要はないのかもしれませんが、『3密』のように、もう少し日本語の特性から生まれて来る言葉というものを大切にしてもらいたい。

 農村づくりにおいても、言葉というのは大切な要素ですよね。本ブログの読者や会員の皆さんの中には、農村でリーダー的存在である方が多いのではないかと思いますが、皆さんも、イベント、勉強会、会合の案内を出すときに、A4一枚のビラを作ることがあると思いますが、結構、表題の付け方やキャッチコピーの付け方で悩みませんか。『○○地区の明日を考える会の開催案内』、これは固すぎる。『○○地区の明日を担う子供たちに向けて』、これだと勉強会ということが伝わらない。『○○地区の明日を担う子供たちのために今を考える会』、ダメだ、長すぎる。考えてみれば、○○地区は必要なのか?

 一行で真意を伝える表題は、考えれば考えるほど難しい。しかし、ビラの表題はどうでも良いとは皆さん思っていないと思います。表題によっては、「いつもは行かないけれど、今回だけは行ってみようかな」と思ってくれるかも知れませんし、自分に関係するかもしれないと思えば、「勝手に何かやられちゃ困るから、行って聞くだけでも聞いておかないと」と思うものです。

 そんな時、この新語・流行語大賞とか、そうそう、NHKの俳句とか、ダウンタウンの浜ちゃん司会で、夏井いつき先生の毒舌かつ的確かつ腑落ちの批評が光る『プレバト』なんかは勉強になります。そもそも私は言葉が多いので、嫌がられるので、もっと勉強しないといけないのですが、短い言葉の中に、魅力ある言葉を詰め込んで、その風景(真意)が見えるようにするのは並大抵のことじゃありません。感性の問題でありますから、急に上達することもないのですが、是非、この機会に、表題に活かしてやろうと思いながら、これらの番組を見てみるのは良いことかもしれません。

 さて、話を戻しますが、ノミネートされた言葉の中で、私が最も注目したのは、『オンライン○○』でした。これ、無理に○○でたくさんあるとしないで、『オンライン飲み会』を選択した方が良かったように思います。オンライン授業、オンライン会議、オンライン就活などは、新様式としてありかなと思いますが、オンライン飲み会というのは、新しいとは思わないが、最も無味乾燥なる新様式かなと思ったものですから、今年の流行語としては良いのではないかと思ったのです。

 平成2、3年頃だったと思いますが、つくば市内で初めてINS1500(光ファイバーを媒体に使用したデジタル回線で、1本の回線で23chの使用が可能)の一般回線を引いて、遠隔操作による農村景観シミュレーションとテレビ会議をしたことがあります。つくばという土地柄、専用回線はすでにありましたが、一般回線でその容量を引いたのは初めてでした。どれくらいのことができるのかを試すために、一度だけ、テレビ会議の後、数人でそのまま懇親会(飲み会)をやってみたが、あまりにも面白くないのと、こんなことに高い通信料を払うのはいかがなものかと、乾杯だけして、10分もしない内に、回線を切ったのを覚えています。あれ以来、飲み会ほど人の接触が重要なイベントはないと確信していましたが、今年は、コロナ禍で、サラリーマンも、学生も、奥様女子会もオンライン飲み会をやっているというから驚きだ。テレビなどで見る限りでは、それぞれが好きな飲み物をPCの横に置いて、手酌でやっていて、これもこれで良いというのだ。「本当かよ。絶対無理」と、私は今でもそう思っていますが、それが新様式になると言うのなら、私としては、『オンライン飲み会』を新語・流行語にしてもらいたかったなぁと思いました。

 菅総理がGoToキャンペーンの全国一斉一次停止の発表当日に催した8人のステーキハウスの忘年会も、家でお一人用焼肉プレートで、ふるさと納税で取り寄せたステーキでも焼いて、『オンライン飲み会』にしておけば、5人以上はダメとか良いとかの話にはならなかったのに。

 それにしても、杉様も、みのさんも、ワンちゃんも、「忘年会です」って言う? 「政策浸透の感触を市民感覚として伝えた」で良いのではないの。おっと、どなたも市民感覚ではないか。正直でよろしいということか。

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