
片田舎のおっさん『食聖』になる
片や茨城県はつくばのおっさんと、片や北海道は江別のおっさんが二人で、2泊3日の北海道食べ倒しの気ままな旅に出かけました。おっさんは二人合わせて124才、先週7月9日~11日にかけて、私、つくばのおっさんが北海道に出向き、昔々、私の研究室に来てくれた研修生、今は友達以上恋人未満のおっさんと二人だけで、『片田舎のおっさん剣聖になる』ではなく、『片田舎のおっさん食聖になる』べく、旭川市を拠点にとにかく安くて美味いものを食べて、飲みまくってきました。『食聖』なんて言葉はないけど「まぁいいっしょ」。
今日は最後までしっかり読んでもらっても農村づくりの話も無ければ農政批判の話もなく、単にどこで何を食ったかだけですので、読者の皆様にとっては、あまり参考や知見になることはないと思いますし、「美味いもんの話ばかりしやがってこの野郎!」って感じかもしれませんが、許してください。前立腺がん患者のこんな老後の楽しみ方もありかって思っていただければ幸いです。
一人での飛行機による移動は本当に久しぶりで、10年ぶりぐらいになりますね。また、北海道のおっさんと会うのは15年ぶり、彼が研修生で私が講師だった頃はさらにその10年前で平成12年になります。ですから、彼とはかれこれ25年の付き合いということになりますが、今や彼も北海道職員を離れ、普通のおじさんになって、個人で農村の活性化や農業の振興に関わる仕事に日夜奔走しています。見た目は普通のおっさんですが、農村づくりへの情熱はまったく消えていない。その熱さが好きで、私も恋人未満の付き合いをしてきた訳ですが、今回は私の病気後初の再会となりました。新千歳空港へ迎えに来てくれた彼の顔を見て、ちょっと涙が出てきました。がんは完治していませんが、一瞬、これまで何も無かったかのような感覚に襲われたのは事実です。
でも感傷に浸ったのはここ迄でした。この後は、怒涛の食べ倒しがはじまったのです。彼が1日目案内してくれたのは、さっそく昼飯ということで、『宇宙軒』の本店で味噌チャーシューを頼むと、チャーシューが多すぎて麺もスープも見えない。時々テレビで見る奴だ。そしてそのまま旭川市内に入り、この日の晩飯は肉三昧の美味い店三連ちゃん、『成吉思汗の大黒屋』、16時スタートで、行った時にはインバウントの客が多く、店前には行列が出来ていましたが、彼がちゃんと予約してくれていたので、2番手で悠々と入店でき、サフォークの生ラム肩ロース、モモ、ショルダー、ヒレの大黒セット、その後、私は初めての部位である羊のタン、ハーブの肩ロースを追加注文し、ビールをメガジョッキで2杯行かせてもらいました。あっと言う間に食べつくし、孤独のグルメみたいに「そうきたか」とか、となりの席で頼んでいるメニューを横目で、「あれも行っておかないとな」なんて考えている間もなく、「次行きましょ」と、あの頃は私の方が上の立場だったのに、今じゃ食聖の先輩になった彼の言われるままに食聖になるための研修をこなす。そして、教訓、「成吉思汗は時間との勝負だ。ダラダラ食べちゃいかん」と教えられました。
で、お次は、細い小路『ふらりーと』の入口近くに店を構える『ぎんねこ』。なんとも年季の入った店構えだ、まだ17時にもなっていないで周りは明るいが、外に漏れる焼き鳥のにおいだけは、0時過ぎの様相です。店内はすでに一杯、かろうじて空いていた端っこの普通なら1人席のような小さな席に二人仲良く恋人のように寄り添い座り、そして、こんどはハイボールでやりはじめる。ここは旭川名物『新子焼き』の有名店です。さらに豚ロースを焼き鳥のタレで焼いたという『ちゃっぷ焼き』を頼んで、すすっと平らげた。そして教訓「おっさんに野菜は要らない」。更に彼のもう一軒行きましょうの掛け声で、また違う小路の『馬場ホルモン』へ移動し、今度は、選択の余地なしの塩ホルモンを食べる。焼き網が置かれて七輪の熱が通れば、そのままどどっと様々な部位のホルモン2人前が乗っかる。後は瓶ビールを継ぎ合いながらちまちまとホルモンを焼けたところからつつく。本能の赴くままの食べ倒しだ。なんていう幸福な時間なんだろう。古き良き友と長い年月を経てこのちまちまちとした付き合いをする。北海道に来て良かった。久しぶりに彼に逢って良かったと感じている内に、次は「いよいよラーメンです」と、連れて行かれたのが、塩ラーメンの聖地だと言うお店『すがわら』でした。摩周湖の水のようにこれ以上は透き通らないだろうというほどのスープに縮れた麺が漂っている。餃子と瓶ビールで敢えて口を汚しながら、透明度を荒らしていくのがこの麺の食べ方の醍醐味かもしれない。
満腹感を通り越してしまって、膨満感に至り、寝たような寝ていないような朝が来る。夜中3時半頃なのに、目を覚ますともうホテルの窓から薄く光が漏れている。おやっと外を眺めると、なんともう朝日が昇りかけている。北海道の朝は早い。
二日目は、お魚コースの食い倒しだ。旭川市内8時出発で、雲一つない真っ青な空の下、ひたすら増毛、雄冬へ向かう。北海道はかなり旅行しているつもりだったが、私は増毛も留萌も初めてだ。天北オロロンルートを南下し、『白銀の滝』を見た後は、今回のおっさん二人食べ倒しの旅の大きな目的地の『雄冬レストハウス』で『うにどん』、痛風なんか怖くないと向かったものの、海は時化ていてウニはなく、彼は真つぶに、いくらに、甘えびまで乗った『まかない丼』、そして私はここはぐっと堪えて『甘エビ丼』、またこれが最高。いやいや値段が最高、甘エビ丼1800円ってどうよって言わざるを得ない。エビの本数数えてみたら23本でした。夜はまた旭川に戻り、居酒屋『天金』さんで、今度は牡丹エビ、生真つぶ、ニシンの刺身を頼み、男山の燗でさしつさされつで昔話に花を咲かす。そして〆は美しいお姉さまがママを務めるお洒落な日本酒バー『和珈』で酒談義をしながら上川大雪、三千桜を飲ませていただく。茨城に住む私としては、火事で蔵が全焼した結城酒造を助けてくれた三千桜酒蔵の酒は、美味いと一言では表せない有難い酒です。少し酔いが廻り意識の飛んでいる私の横で、江別のおっさんとママが男山談義をしているのに妬けてしまい、その日は遅くなったのでそのままホテルに戻った。
そしていよいよ7月11日の最終日、後は帰るだけということになりますが、そこは流石におっさん二人旅、昔お世話になった地を巡りながら、食い物もしっかりと食べて帰りました。昼には美唄名物『しらかば茶屋』のとりめしとラーメンのセットを平らげ、三笠市の山崎ワイナリーで壮大なブドウ畑を鑑賞し、アイスクリームで有名な千歳市の『花茶』さんに寄って、アイスを頂き、昔お世話になったおかあさんに挨拶して、新千歳に向かい、『片田舎のおっさん食聖になる』ツアーの全行程を無事終了しました。
途中いろいろと寄り道したところもありますが、食べ倒しを中心に紀行を書くとこういうことになるのです。本州を旅立つ前は6月の異様な暑さに負けてしまっていましたが、北海度3日間は、カンカン照りの晴天にも関わらず、涼しい3日間でした。行いが良いということなのでしょうか。おっさん食べ倒し二人旅、あまりにも楽しすぎた。美味しいものを好き勝手に食べることが出来るというのは、何物にも代えがたい健康である。3年は寿命が長くなったと思うよ。






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