グリーンツーリズムや農業・農村体験等は、農村の豊かな自然や景観、農作業での触れあいを通して五感が刺激されることで、保健休養機能や教育的機能が発現されるということで、都市住民や国民に注目されています。都市住民の都市生活でのストレス緩和や国民の健康志向に伴い、農村の環境をフルに活用した都市農村交流は今後ますます盛んになっていくと考えられます。

 都会で疲れたからと言って、その捌け口だけを農村に求められるのは癪ではありますが、互いにウインウイン(双方にとって利がある)の関係となるなら、農村での癒し効果や教育効果をより高く発揮してもらうために、景観や環境の質そのものを高め、交流を促進することは重要かも知れません。

 人が景観を評価し、快適な気持ちになる際には、視覚だけでなく、聴覚、触覚、嗅覚等を併せた総合的な刺激を評価していることから、景観を整えるなら、これらを含めた総合的な評価行い、農村の空間計画をすることが必要になると考えます。

 簡単に言うと、景観だけが目を引くものであってはいけないということです。つまり、棚田の形態の審美性と歴史的意味に感動し、緑の爽やかな香りとともに柔らかな風を頬に感じ、近くから聞こえるせせらぎの音に微かな虫の音、さきほど沢で汲んで来た水で入れた特産のお茶なんかを味わえて、はじめて良い景観ということになります。美しい景観なのだけれど、シーンと静まり返っている(もちろんそれが良い場合もある)とか、逆に車の音がうるさいとか、近くにごみの集積場所があり、匂っているなんていうのはどうなのか。特に、音は景観にとって重要な要素だと言えるでしょう。そういうことで、今日は環境の音の話を少ししましょう。

 これまでの音の評価については、1つの音源を対象とすることが多かった。例えば、自動車の音、生物の音、水の音といった単一の音源の変動特性(場所や時間による変化)や質的特性(音の周波数の高低、連続性や方向)を問題としていました。しかし、農村環境に存在する鳥や虫、飛行機や車、農作業や人の話し声等、景観全体の音を総合的、定量的に評価することについては十分研究が進んでいません。一つの音の良し悪しを問題とするのではなく、空間全体での音のまとまりを評価の対象とすることが重要ではないかと思います。このように、音を景観として捉える考え方は、一般的に「サウンドスケープ」(景域音)と呼ばれています。

 また、これまでの音の評価は音の物理量である周波数、音圧、音色の3要素がどのような構成となっているかが問題とされてきましたが、サウンドスケープにおいては、単に音が大きい小さいではなく、「やかましさ」とか「鋭さ」とか「粗さ」等の人の感覚に近い指標での評価が重要となるようです。

 冒頭に一つの棚田の風景を掲載しました。これは静岡県菊川市の上倉川の棚田です。もう10年前のことですが、この棚田の音を採取してオクターブ分析したことがあります。 オクターブ分析とは音の周波数の成分量を示すもので、高い音や低い音がどれくらい含まれているのかがわかるものです。

 この棚田と静岡県の代表となる一般的な大規模茶園と東京丸の内のオフィス街の音と比較してみたのがこの図です。

オクターブバンド分析による周波数と音圧の特性

 一目瞭然に違いがわかりますよね。丸の内の音と比べると、棚田の音や茶園の音には低い周波数の音の成分が少ないことがわかり、特に、棚田については、高い周波数の音の成分が他よりも多くなっていることがわかります。測定は8月初旬ですので、高い周波数のところは、主に棚田の生き物が発生させている音です。それに対して、丸の内では低い周波数の成分がなんと多いことか。

 可聴域外(このグラフにはない12.5kHzよりも高いところ)の高周波成分は人の快適性に強く関与すると言われています。この棚田での音は可聴域ではありますが、高い周波数成分が適正な音圧で卓越していて、これが心地よいサウンドスケープを形成しているようです。 誰が心地よいと言ったのかというと、すみませんが、私が人間を代表させてもらいましたが、おそらくは10人中8人は間違いなく、良い音だと思われると思います。

 どんな棚田でもこのような音が出ているとは限りませんが、棚田景観を大切に保全していくなら、見た目だけではなく、サウンドスケープも考えていく必要がありそうです。

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