慣れから考えてはいけない

 過去最高クラスと言われた台風10号は、9月6日~7日にかけ、長崎近海を北上し、長崎県野母崎では最大風速44.2m/s、最大瞬間風速59.4m/sを記録し、韓国へ貫けていきました。沖縄、奄美、九州地域にとんでもない暴風被害をもたらしたものの、懸念していた九州上陸もなく、中心気圧も予想ほどには発達しなかった。その後、先週9月21日に発生した台風12号は、昨年、関東甲信越地方や東北地方などで記録的な大雨となり、甚大な被害をもたらした東日本台風(台風19号)と同じようなコースを北上してきたので、報道で騒がれ、関東、東北地方の皆さんはドキッとして、構え、準備したと思いますが、太平洋上で東に折れ、なんとか反れてくれました。

 今年は、秋雨前線の停滞による愚図ついた天気が続き、いくつかの地域で、集中豪雨による浸水や突風による家屋の損壊もあり、被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。只、昨年のような大きな人的被害には至っていないようで、そこが今のところ救いであります。

 台風の発生と発達は、太平洋の海面水温が影響しますが、今年は未だに28~29°という高いところもあり、まだまだ安心できない状況です。さらに、最近は台風ではなくても、災害は発生する可能性があるので、日常的に情報共有をしっかりとして備えておかねばなりません。いくら予想よりも被害が少なかったとしても、気象庁の予報を、「また、大げさに言ってるよ。今度も、言うほどじゃないだろう」なんて思ってはいけません。たまたま偶然助かっただけですから。

 今年は、年明けとともに、新型コロナウイルスの感染拡大が社会に暗い影を落とし、たいへんな状況であるので、台風や地震ぐらいは少しおとなしくして頂きたいものだが、自然現象と言う奴はほんと容赦がない。「天災は忘れた頃にやってくる」という寺田虎彦先生の有名な言葉があるが、先生もトホホだ。近年は「天災は毎年やってくる」という感じになっている。

 防災・減災への意識に慣れがあってはいけないが、もう一つ、災害に慣れてしまうのも良くない。

 どういうことかと言いますと、「この地域は滅多に災害は来ないから大丈夫」という過信は防災・減災に対する意識を低くするので良くないが、「ここは豪雨があるといつも床下ぐらいは浸水する。そういう土地柄なので仕方ない」という諦め感や慣れも、防災・減災に対する意識を低下させ、復旧・復興計画を人任せにしてしまうことに繋がるので良くないと言うことです。

 前半については説明するまでもないと思いますが、後半については少しじっくりと考えてもらいたい。

 ここは元々低い土地だし、床下浸水ぐらいなら仕方ないだろう。これだけたくさんの雨が降ったのだから。後は、公共事業で洪水時の排水能力を上げてもらって、より大きな災害とならないよう河川堤防も少し高くしてもらえたら、それで良いだろう。しかも、そんなことは行政に任せておけば、「よしな」にやってくれるだろうと考えてしまいがちです。対策もおおよそ決まっているので、財政が許すか許さないかが最大の焦点であって、自分たちの考えるところはほぼ無いのではないかと思ってしまいがちです。また、場合によって、行政がなかなか対応できないとなると、家を建て替える時に、自己防衛として、嵩上げでも考えれば良いかとも思いがちです。もちろん、自己防衛を考えることは大切ですし、ルールの範囲内で嵩上げ工事もやることに何も問題はありません。

 問題は、この程度は仕方ないとか、対策は決まっているとか、行政がやってくれるとか、自分でなんとかするという考え方に填まってしまうことです。例えば、自己防衛ですが、自分だけがその地域に住んでいる訳ではないですから、地域が被災すれは、地域の暮らしはできなくなります。上流から水が供給されない我田引水みたいに空しいものです。

 本来あるべき理想的な暮らしはどういうものなのかの将来像から考えていく対策としての復旧・復興計画であり、防災・減災策でなくてはならず、よく発生する被害に対する継ぎはぎだらけの対処策であってはいけないということです。

 土地の使い方というものは、様々な歴史的経緯を以って成り立っています。その成り立ちは、土地の理に適っている場合もあれば、理には適っていないが、致し方なくそうなってしまったという場合もあります。山や川といった、基本的に動かせない地理条件において、長い年月の中で、住居の位置、農地の位置等が配置されてきたのではあるが、その時々において住みやすい、生産しやすい位置や形状となっているのであって、その時に50年後、100年後の社会情勢や気候の変化を考慮したものではないし、どれだけ百年の計を以って計画された土地だとしても、土地の変化に伴い生じた様々な問題を微調整しながらなんとか生きてきたところに今の現状があるのであって、多くの地域が、到底、理想郷にはなっていないのです。どんなに素晴らしい農村空間にも綻びはあるということです。

 災害後の復旧・復興計画では、再び災害に見舞われたときの被害を最小限に食い止めることに議論が集中し、生命リスク回避を第一義とした計画が立案されます。それはそうしかるべきです。しかし一方で、本来、計画とは地域の総合的な再生を目指すものですから、防災や減災をベースとする現状復旧が基本であったとしても、「生活」「生産」「社会」「環境」「文化」と言った、地域で暮らす上で不可欠な要素を十分に複合的に配慮した検討が求められます。これを考えることができるのは、そこに住もう、そこで暮らしたいという強い意思を持った住民でしかありません。

 行政からのトップダウンで、復旧・復興計画案が出てきて、あなたの地域はこうしますよと一方的に言われます。まだ自分の生活のこともままならない、農業の再開についても思案しているところで、なかなか冷静に考えることは困難です。頑張れだとか、希望を持ってなんて言われても、余計に苛立つだけだと思います。

 でも、提案される計画案を素通りさせてはいけません。現状復旧が基本であっても、立ち止まり、防災・減災の観点からの空間評価と住民生活の各機能による空間評価とを相対させて、どの場所で、どのような生活行動が防災・減災とどのような関係になるのかを明らかにしていき、計画を読み取る必要があります。「良いようにして」とか「なるようにしかならないし」なんて言わないで、災害に対する慣れや諦めから脱却し、考えることができて初めて、本当に強靭な農村づくりを目指すことが可能となるのだと思います。

 もちろん、助っ人はいろんなところにいますし。

※東日本大震災の復旧・復興で建造された堤防の一つ。本当にこうなると分かっていたのだろうか。

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