ゲーム

 最近、息子に薦められて、毎週土日に家族でテーブルゲームをするようになった。きっかけは、基本的には私のボケ防止と家族のコミュニケーションの促進であるが、おそらく、ボケ防止対策が90%と言ったところか。テーブルゲームとは、数人のプレイヤーがテーブルを囲んで行うボードゲームやカードゲームのことで、将棋やトランプ以外にも、新しいものがたくさん開発されている。

 若い頃はテレビゲームをよくやったもので、30代は息子がまだ小さかったので、ドラゴンクエストに代表されるRPGやストリートファイター等の格闘のゲームなんかを一緒にやったものだが、彼も大きくなり、「お父さんやろうよ!」と言わなくなり、その内「親父弱いからやらない!」となって、こちらも40歳を過ぎると仕事も忙しくなり、まったくやらなくなった。

 只、農村づくり研究を進める中で、ゲームという手法がワークショップにおいて重要な役割を持つことが分かってきて、一時期は「日本シミュレーション&ゲーミング学会」にも所属し、平成14年には、大学の先生方と研究室のメンバーとともに、『都市農村交流ゲーム』などというシミュレーションゲームを開発したこともあった。

 そういう意味では、ゲームという世界とは長い付き合いと言える。しかし、さすがに50代になると、研究でも、趣味でもまったくゲームというものをしなくなった。なぜなら、じっくりとストーリーを味合うゆとりが無くなったし、特に、テレビゲームはリモコンの操作がどんどんと複雑になってきて、頭も指も追い付かなくなった上、老眼のため、目まぐるしく画面に表示されては消えていく文字が読めなくなってきて、さらに、3Dアクション系は表現がリアル過ぎて、少しやると3D酔いになって、吐きそうになるからだ。と言うわけで、完全にゲームとは離れてしまった。

 日本人は、ゲームというと、所詮遊びという感覚を持つ傾向がある。子供がゲームをすると、「ゲームばっかりしていると頭が悪くなるよ」なんて言われてしまう。中毒性があるコンテンツもあるので、部屋に引き籠って、太陽に当たらず、そればかりしてしまうようなことになると問題もあるが、ゲーム自体に問題がある訳では無い。実際に海外では、教育、環境、産業、医療などの多くの分野でゲームが積極的に活用されており、特に、社会にある複雑系問題の理解促進と解決への道を模索するためにはよく使われている。

 ゲームの意義については、人文、社会科学の分野で幅広く議論されていて、その内容は難しくてよく分からないが、農村づくりにもゲームが活用できるのではと考えた私が言えることは一つ。ゲームは、勝ったか負けたかの単なる遊びではなく、ゲームの過程と振り返りにおいて、社会問題の構造や様々な要素の関係性が見えてくるところがあり、感情的、近視眼的に見てしまうことを、冷静かつ俯瞰的に見ることができることで、本質に近づけるのではないかということだ。決して「子供の遊び」ではないと思う。将棋も囲碁もゲームであるが、深く追っていくと、単なる戦略や戦術だけではなく、人生のいろいろな場面での問題に解決の糸口を示唆してくれる場合がある。

 これまで、息子からはたくさんのテーブルゲームを教えてもらったが、特に、最近、填まっているのが『街コロ』というゲームです。ルールは簡単で、街とその周辺の農村を形成する様々なお店や農地がカードになっていて、最初は「麦畑」と「パン屋」のカードが一枚ずつとわずかなお金しかない状態から始まり、プレイヤーはサイコロを振って収入を得て、コンビニやピザ屋、フレンチレストラン等の経営に乗り出しても良いし、リンゴ園、ブドウ園、牧場と農業経営を広げても良い。また、スタジアム、税務署などを配置して、他プレイヤーから搾取もできる。どんどんと経済活動を広げて行き、最終的には、駅、港、遊園地、空港などのランドマークをオープンし、立派な街に育てることを競うゲームである。

 農業経営を基軸に街を発展させようとすると、一気に収入は得られないが、着実な発展ができる。コンビニやレストラン経営を拡大すると、収入は手っ取り早く稼げるが、派生した収入は得にくく伸び悩む。更に、鉱山への投資やマグロ漁船を出航させると、ギャンブル性が高く、一気に大きな収入を得る場合もあるが、なかなかサイコロの目が出なくて、じり貧になる場合もある。

 息子と妻と私の2時間ばかりの3つの街の経営の攻防がある。息子が7割勝って、妻が2割で、私が10回に一回勝利というところだが、勝負よりも、性格の表れる互いの経営戦略が面白い。ゲームが終わって振り返ると、サイコロの出目の問題よりも、「あそこで、花畑とフラワーショップ経営を促進したのが勝因だった」とか「いやいや、儲け過ぎて税務署に全部持っていかれちゃったよ。もっと地味な経営にしとけばよかった」などと互いの戦略を評価し合える。私は、研究会会長としてのプライドをかけて、農業関連経営だけで頑固に頑張ろうとするが、いつも苦しい展開だ。花畑とフラワーショップの複合経営でぐっと我慢しつつ、青果市場のカードでサプライチェーンの効果まで抑えながら、ブドウの当り年を待って、ワイナリーで高収入に繋げる感じだが、なかなかサイは厳しい。

 現実をそのままシミュレートする訳ではないため、「なんとなく、現実にもこんなことあるよな」ぐらいではあるが、そうは言っても負けると実に悔しい。そして、どうしたら打開できるかを考えてしまう。

 そして結論、『農業経営は結構難しい』となる。麦畑やコーン畑の収入が絶対低すぎるし、もう少し農業経営がしやすいゲームバランスにしてくれないと農業は儲からないということになってしまう。ちょっと首をかしげて、これは、米価低迷のことかとか補助金政策が必要ってことなのだろうかと考えさせられる。

 どちらにしても、負けると「こんチクショー」であるが、すくなくとも私のボケ防止には効いているように思う。皆様も、是非何かの機会にゲームに触れられることをお薦めします。

※このゲーム、日本人のデザインなのに、何故か「水田」が無いのと、環境がらみが少ないので、今後そういうのを増やしてもらえば、もっと入れ込めるように思う。完全に填まってますなぁ。

※この写真は、平成14年、日本農村生活学会の大会において、会員の皆さんと「都市農村交流ゲーム」をやった時の様子です。

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