言動の自由

 「言論の自由への攻撃だ」は、安部元首相が襲撃され亡くなられたときに、新聞を賑わした見出しです。結局、真相は違っていましたが、まぁ、その話はやめておきましょう。賛否両論ある中で、明日、安部晋三元総理の国葬は執り行われるらしいが、ここは静かにご冥福を祈ることにします。

 それにしても、最近の政治家を見ていると、なんだか空しくなってくる。

 山際経済再生担当大臣の’’写真に写っているのを確認したので、旧統一教会のイベントに参加していたのだろう。記録は無いので報告できなかった’’と言う言い訳、この他人事感は何なのだろう。何十年も前の話じゃない、4年ほど前、そんなことも忘れるような人に、大臣が務まるのだろうか。ネパールでのイベントだって、覚えていないはずがない。もしかしたら、忘れるから務まるのか?

 議員全員が全員この調子ではないが、萩生田議員もよく似た感じかな。二階議員のバカ呼ばわり発言に至っては、サンドイッチマンじゃないが、「ちょっと何言っているか分からない」。

 膨大な票を集められるような議員の大方は、情報量も不足しているし、偏っている。言動の論理構築も不確かで、「言論の自由」ではなく、「言動の自由」なように思う。所謂、言論の自由を自由たらしめるまでに至る議論が成立しない方が多いように思う。

 言論自体は自由であって良いが、それが言論として成立するためには、中身が理解され、本質を伝えるための議論が必要で、そのためには、論者の情報量や知識量の格差をある程度是正しておかないといけない。言語の意味が伝わらないなら、そもそも議論できないはずだ。また、同じ情報量や知識量を論者が持っていたとしても、理解の深度や解釈が違っていれば、言論の真意は本当には伝わっていない。さらに、言論を理解できるように論理的に組み立てることができないと、これまた正しいのか間違っているのかも判断できないので、議論にすらならない。

 また、もう一つ重要なこととして、それらの言論の題材の共通認識を持とうとする意思と、すり合わせによる修正ができる能力が必要だ。これには、歩み寄る優しさを持った話し合いの能力もあるし、論者双方の価値観の格差の刷合わせ能力も入るのかもしれない。

 国葬問題で、立憲民主党の泉代表が、「三権の長に諮ったか」と総理に問う。これは、諮っていないことは自明なので、「諮るべきではなかったのか」と同じ意味だが、岸田総理の答弁は内閣府設置法第4条を持ち出し、「行政権に属するものであると認識しています」を繰り返すばかりで、国会審議も含めたプロセス論の認識の違いは、これ以外の回答が用意されていないので、当然だが議論にはならない。以前より、「言わせてもらえば」では、国会の審議のちぐはぐさが漫才に匹敵すると皮肉らせてもらったこともあるが、国葬問題の閉会中審議も傑作中の傑作漫才ネタになった。

 政府は、謝ったら負けだと思っているので、絶対に謝らないが、一層のこと、「国葬についての閣議決定は、行政権の範疇と認識していたし、決定当時、安部元首相の衝撃的な死に対して、国民も国葬を求めていると理解してしまったが、その後の事件の成り行きの慎重な観察が必要であったし、審議プロセスも熟考すべきだったかもしれない。しかし、一国の長としての判断であり、世界に発言が届いたところで、日本国の信頼と礼節を以って取りやめると言う訳にはいかない。」と開き直ったらどうか。もちろん、自民党の信頼は地に落ちるが、議論としては成立するように思う。「ここまで来て、日本国の信頼を失墜するようなこと、あなたできますか。だからやらせてもらいます。参議院選で、国民は自民党政権へ期待をかけてくれたと理解している。自民党が駄目だと言うなら、次の選挙で評価を得たい。要人との会談を外交促進に繋げ、失策をもプラスにしていき、バタバタはするが、それが自民党の、総理岸田の政権運営なのです。ご理解ください。」ぐらいハッタリ聞かせても良いのではと思う。私は国葬賛成反対の話をしているのではなく、せめて議論になるようにして欲しいと言っているだけだ。

 農村づくりでは、地域住民が様々な意見を出してきます。自由に意見を求められるからと、言論の自由だということで、意見を述べ議論をするが、こんな国会審議みたいな議論をしていてはいけない。役員主導で早急に対処しなければならない農村づくり施策もあるとは思うが、住民全員参加の農村づくりを推進するなら、議論する全員が、情報と理解の深さを共有し、互いの価値観を認めながら、意見を一言一言聞いて、納得いくまで深く掘り下げて、ボケた議論にならないように進めることが大切だ。

※アイキャッチの写真は福井県の鳴鹿大堰側から旧鳴鹿堰堤の遺構を望んだもの。私は40年、仕事として全国の水利施設を見てきたが、忘れたところは先ずないと豪語できる。

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