
職業『遊び人』
アンケートなんかで、職業欄に何か入力しないといけない時、『年金生活者』という項目があれば、これはずばり○を付けられるんだけど、『無職』とか『その他』しかないと、ちょっと捻くれて、「そりゃあ、わたしゃ無職じゃわい。社会に貢献してなくてごめんよ!」とか思ってしまって、選択をためらってしまう。いやいや、時々、アルバイトもしてるんだから『その他』で良いのではと思わないでもないが、一般的に『その他』の欄は資格やスキル、受賞歴や表彰歴、ボランティア活動や地域活動への参加経験などを記載するものらしく、アルバイトは『アルバイト』の欄に〇を付けることになるから、『その他』ってのも選択肢としてはいかがなものか。
ここで、「いや~、私の職業はあえて言うなら『遊び人』なんですが・・・」と考え込んでしまう。『遊び人』は職業じゃないだろうと言われるかも知れないが、ドラクエでは、職業『遊び人』なんてのもあったじゃないか。あれはあれで『賢者』という職業のベースになったりしてたんじゃなかったっけ、と変なことを思い出してしまい、「遊び」は立派なスキルだよ、『遊び人』でいいじゃないかと思ったりもする。
「職業」という言葉を辞書で調べると、生活を支える手段としての仕事、生活を支えるに足る特殊な技能や専門とあり、この解釈からすると、生活を支えるものでないといけない訳で、年金だけで暮らしている人はどう考えれば良いだろうか、やっぱり無職か。でも、売れない歌手や作家は生活を支えていない場合もあるけれど、『無職』なのかというそうではないだろう、生活を支えるに足るか否かは本人の生活レベルとも相まって決まるもので、自分が足りていると思えば、それはちゃんとした職業で、『歌手』だし『作家』となる。また、『学生』は職業欄に選択肢として実際あるが、働いとらんし、遊びながら適当に掃除、洗濯、料理を楽しんでいたとしても、『主夫』も『主婦』も職業の一つであることを考えると、職業の定義はなかなか難しいものです。
こう考えてみると、職業は生活の糧としてのプラスばかりではなくマイナスも含めて考え、精神面、物質面の両方のバランスで成り立った糧ということにして良いように思います。ですから、生活を支えているのは年金という賃金であろうが、賃金をもらうために何を職業としているのかって言われたら、昔働いた分のプラスと今遊んでいる分のマイナスの両方と言っちゃだめだろうか。だから、精神的な生活を支えている意味で、かつ特殊な技能や専門を持っている意味でも『遊び』は職業であって『無職』ではないと言いたいのです。
だからと言って、『遊び人』って言ってしまうと、これはまったく違う意味になっちゃうのも確かです。遠山の金さんだよな『遊び人』は。一般的には、色事や遊びを重視し、責任感や安定した生活よりも、自由で刺激的な体験を優先する人物を指すので、辞書の意味からすると、私は『遊び人』って訳じゃないし、そもそも職業でもない。でも、最近は、社会への反発とあまのじゃくとウイットをミックスして、職業欄に適当なものが無い時は、『その他』の欄の括弧の中に『遊び人』と書いてやることにしています。
まぁ、こういう変なことに拘ったり、変なことを言い出すこと自体が老害の一つであるのだろう。なんて嫌な年寄りになったものだ。
ただ、これだけは言える。世の中に貢献するつもりで、細々とした年金から生活費をできる限り削って、なんとか遊びの費用を捻出して、観光やエンターティメントに対して支出しているのは、年金生活者が経済を回している歯車の一つと言ってよい。「どこにそんな遊びのお金があるんじゃ!!」と多くの年金生活者に怒られそうだが、遊びはお金のかかることばかりじゃない。自分の生活スタイルに合わせて、内容を選択すれば良いだけだ。年金は少なくても時間はたっぷりあるので、うまく工夫した遊びの方法はいくらでもあると考えます。
映画『ParfectDays』の役所広司さんが演じたトイレ清掃作業員という職業は、おそらくこの映画では、社会の底辺で生活をしている人を象徴しているのだと思いますが、彼は、清掃という仕事に誇りを持ち、規則正しく生活をしていく中で、毎日、銭湯で一番風呂に入り、週一で安い居酒屋で酒を飲み、たまにトイレで見知らぬ市民と文通し、パティ・スミスの曲をこよなく愛することで、遊びを自分なりに創出し、社会と関わりを持つことで、職業『清掃員』としての幸せな毎日を送ることができています。彼もいつかは歳を取り、清掃の仕事はできなくなり、年金生活者になる時が来るだろう。でも、彼は「職業に就かなければ暮らしていけない」とか、「年金だけじゃ暮らしていけない」なんて無粋なことは言わないだろう。そのなけ無しの年金を『遊び人』という職業に転換し、その後も『ParfectDays』を送っていくことになるだろう。そんな気がします。彼は死ぬまで『清掃員』でもなく、『無職』でもないのです。ちゃんとした『遊び人』という豊かな職業のように思います。私は『無職』と書きたくなくて、職業欄に『遊び人』と書いていますが、胸張って堂々と、職業『遊び人』と書いて良いのかもしれません。
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