食事制限

 私は、毎月一回、前立腺がんの検査のため血液検査をしていますが、その際に、前立腺がんの治療効果のモニタリングのマーカー値(指標値みたいなもの)となるPSAという数値以外に、糖尿病の指標値となるHbA1cについても同時計測していました。前立腺がんの方は、なんとかホルモン治療が効いていて、がん細胞の増殖を食い止められ、PSA値も低い値を保っているのですが、数か月前から糖尿病の指標値となるHbA1cの値が徐々に上がって、7月段階では6.3%だった値が10月の中旬には9.1%を超え、これはなんとかせねばと、がんの主治医の先生にも促されて、ようやく重い腰をあげて糖尿病専門医を受診しました。

 インターネットで調べてみると、正常値は6%以下で、8%以上になると自力でコントロールできないレベルみたいで、「なんとかせねば」どころではないのかも知れない。

 がんの検査でも毎月病院へ通っているので、それ以外に行くのは面倒だというのもありましたし、糖尿病の診断で指摘されることと言えば、間違いなく、「食い過ぎ」、「糖分の摂り過ぎ」、「油物ばかり食べるな」、「早食いしすぎ」、「酒をやめろ」と、身体にとっては良い指摘でも、精神的には悪いことばかりなので、ついつい足が重かったのですが、9%を超えるとなると、ちょっと恐くなってきました。

 お酒大好きの私としては、「酒をやめろ」は特に言われたくないところではありますが、前立腺がんがらみの合併症もありますし、今ではコロナにかかった場合の重症化率も上がりますし、このまま放置しておくと、動脈硬化、腎症を患い、透析を受けないといけなくなるなんてことになりかねないので、決心して受診した訳です。

 女性のお医者さんでしたが、空腹時の血糖値も測ってみると351 もあって、はっきりこう言われました。「あなた、もう限界値よ。ここが瀬戸際ですよ」と。とりあえず、血糖値を下げ、インシュリンの分泌を促す軽い薬をもらいましたが、とても有意義だったのは、1時間ばかり、これまた女性の栄養士の先生に怒られながら、食事制限について手ほどきを受けたことです。

 朝・昼・夕の三食の時間を尋ねられたので、11時、13時、21時と言ったところ、

栄養士「朝と昼が引っ付き過ぎ、夕食は遅すぎですね。あなただけ奥さんとは別に朝と夜を先にしたらどうですか」
私「いやいや、朝、夕2回作るということですか。そんな面倒なこと無理ですよ」
栄養士「このままいくとぼく死ぬよ。死んでもいいのって言って、奥さんに頼んだらいいじゃないですか」

 定年してから妻の食事の時間に付き合うことにしていたのですが、妻は塾の講師をやっていて、週日は夕方から夜9時近くまでいません。ですから、帰ってきてから一緒に食事すると、終了はいつも夜10時頃になってしまいます。また、私は夜12時には就寝するので、明らかにエネルギーは行き場を失い、脂肪となっていくでしょうし、膵臓は根をあげているはずです。妻は食べる量そのものが少ない上、家事をひと仕事してから遅くに寝るので、適度なエネルギー消費で、なんとかバランスを取っているのでしょうが、私は現役時代のままの量を食べているので、先ずはこれがダメ。また、朝も妻と私の起床時間が違い、私は6時起床から11時まで朝食を待たねばならない。これがダメと言う事で、食事を別に作れという指導なのですが、実はとても大事なことが抜けています。

私「先生! 妻の問題じゃないんですよ。私が朝飯から夕飯までの全献立をして、料理も全部するものですから、私が朝と夕飯を2回作ることになると一日5回も作ることになってしまいますよ。私ってなんとなく料理番か家政夫みたいじゃないです。それはしんどいですね」
栄養士「あなたが作っているなら、より良いことじゃないですか。自分でコントロールできるってことですよ。さぁ、がんばって。朝も夜も、先に作って、食べる! 奥さんには、これから作り置きや冷たいおかずが少し増えるけど我慢してねって言っておけば」

 自分の身体のことを考えるのに、周りの人の努力も必要と言うことのようです。

 次に、自分で献立を組んでいるので、どうしても好きなものばかりになっているのではないかとも指摘されました。これから一ヵ月間、食事の記録を付けて、次回指導させてくださいと言われたので、これもやり始めました。ちょうど、今、ホームページ上で開いている講座「ゼロからはじめる農村ICT」でもExcelの使い方の基礎編を執筆中(第19回で3ヵ月先の公開を予定)だったので、事例にちょうど良いかなと、食事記録をExcelで整理することにしました。

 食事制限やダイエットのためには、何を食べたかを記録して、チェックすることが効果的だとは聞いていましたが、「記録したからどうだって言うんだ」とあまり信じていませんでした。でも、今回は♪食事管理はじめました~♪。栄養士の先生に渡されたのは、単に日時と朝・昼・晩がマトリックスになった表でした。

栄養士「これに、毎日、何を食べたかを記録してください」
私「私、昔、研究者だったんですが、この表はダメですね。何をどれだけ摂取したかが分かりにくいじゃないですか。例えば麻婆豆腐200gと記録したとしても、家庭ごとのレシピは違うでしょ。豆腐が多いのか肉が多いのか分からないし、味付けも違うでしょ」

 変なところに拘る私である。面倒くさい奴が来たなと思われたことだろう。

栄養士「凡そつけてくれれば、標準のカロリー表はありますから。その程度でも、データ記録するのは大変ですよ」
私「いやいや、これは大丈夫です。得意ですよ。料理名、材料、量をできる限り書き込んでみますよ。調味料は適当になるかも知れませんけど」

 「あすけんダイエット」(明日の健康という意味だろう)とか「カロミル」(カロリーを見える化という意味だろう)等、たくさんのダイエット用食事管理のスマホアプリがあることは知っていて、最近は、写真を撮るだけでカロリーまで計算してくれるのも知っていましたので、少しやってみたところ、我が家は、食品選択も料理も量もオリジナルすぎて、対応して記録するのが面倒だったので、結局は自分で作ったExcel表に1ヵ月記録してみました。

 そうすると効果は覿面でした。自分で記録した献立表や材料表を見て、分析しながら、バランスを取る。ここ数日、野菜が少ないなとか、肉が続いているなとか、麺類が多すぎるなとか、振り返れると作戦が立てやすい。

 ここからが本題で、今日の「言わせてもらえば」と言うことになりますが、『計画や目標を達成するためにはデータの蓄積が大切。農村づくりも然り』です。気になることがあったら、とにかくデータを取ってみることです。農村地域の方々は細かいことに拘らず、おおらかなところが良いところでもあるのですが、適当過ぎるところもあると思います。データをしっかり取ってみるという意識が低いように思うんですね。しっかり取ればそこに地域独自の法則を見つけることが出来るはずです。

 私が農村づくりでは「データが大切」だとこれまで言ってきたことが、自分の健康管理にもそのまま役立ちました。一ヵ月経って、先日、病院に行ったところ、先生にも栄養士にもかなり褒められました。

先生「一ヵ月でこれだけ一気に下げられたのは凄いです。まだ改善点はありますが、この調子で生活していってください」
栄養士「朝と昼に野菜が少ないですね。少しでもいいですから、野菜を一緒に摂ってください」

 私のHbA1cは6.9%、2時間後血糖値は164まで落ちました。まだ境界線ではありますが、益々やる気が出てきました。

※以下は、私の作った食事記録表の一部です。お酒は当然止められましたが、1ヵ月で計2回、ハイボール3杯、日本酒2合、糖質0ビール500mlまで我慢しました。先生、これで許してください。

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