
相互感謝
先日、青森に遊びに行った時のことですが、帰りの新幹線に乗る前に駅弁を買おうと売り場に行ったところ、ちょっと混んでいました。順番に並んでいる風でもなく、店員が来た人順に声をかけて、注文を聞いていました。私と妻は3番目だと思ったのですが、私たちの後に来たご老人が、まだ1人目の注文に対応している所なのに、「早くしてくれよ」って、私の肩越しに手を出して、「幕の内弁当一つ」って何度も言っている。店員は困ったような顔をしながら、「ちょっとお待ちください。順番にしますので」としか言えない。そして、何度も応えきれず、終いには無視していた。
この老人は、2番目の客の時にもまだ、「早くしろよ」って怒っていた。そして、いよいよ自分の順番になった時にと言うか、順番的には私の方が先だったが、「ちょっとお先に」とも言わず、私の前に無理やり出ると、店員に向かってこう撒くし立てた。
「さっきから何度も注文してんのに、なんで答えないんだ。もっとこう優しい対応っちゅうもんがあるだろう。このバカが。バーカ。幕ノ内弁当とビール」
若い店員さんは、ちょっと泣きそうになっていた。私としては、「ちょっと待て、こっちが先だよ」と言いたいところでもあったし、「店員さんをいじめるなよ。一所懸命対応してくれてるじゃないか」と助け船を出したい所であったが、新幹線の時間が迫っていたので、ここで、事を荒立ててもっと遅れることになったり、最悪殴り合いになったりするとまずいと思い、早く怒りを収めてくれればいいやと黙っていました。
彼は、再度同じような内容のことを吐いて、「バカ」を繰り返していましたが、まぁ、こういう客も一日店頭に立ったら何人かには会うのだろう、若い店員は「申し訳ありませんでした」を繰り返しして、なんとか面倒なことにはならなかった。この老人も急いでいたので、吉本新喜劇の池野メダカの名セリフじゃないが、「今日はこのぐらいにしとったるわ」で終わりにしたのだろうが、もし時間がたっぷりあったりしたら、まだその後も続いて、私たちが新幹線に乗り遅れたかもしれない。困った『老害カスハラ』である。
11月11日、愛知県美浜町の町議会は、町職員に暴言を吐くなどのカスハラをしたとされる住民に対し、損害賠償などを求める訴えを起こす議案を可決したというニュースがありました。この事例では、町民の60代の男性が、役場の窓口や電話などで職員に対し、「お前らがやっていることは不法行為だ」とか「お前より上司の方が頭が良いんじゃないか」とか「男とは話したくない、女を出せ」の暴言を吐くなど、ほぼ全部署に対して計800件もあったというのだ。
こりゃどうにもならないと判断した町は、11日の臨時町議会で、男性に対して行為の差し止めと暴言などに対応した職員の給与相当額にあたる400万円の損害賠償を求めて提訴する内容の議案を提出したというのだ。
いゃー、わかるなぁ。カスハラについては、それぐらい毅然として対応したらいいのだと思う。兎に角、こういう人には、いくら説明しても最初から聞く耳を持っていないのだから、法的処置の場面に引きずり出すしかないだろう。
私も昔、つくば市に住む70才ぐらいのおじいちゃんが私の研究に絡んできてたいへんだったことがあります。「お前さんのやってる研究は税金の無駄遣いだ、すぐ辞めろ」って何度も長電話や研究室で責められたことがありました。こちらとしては、税金で研究をさせてもらっている身だから、税金を払っている人にしっかりと研究の説明ができないようではだめだと思い、丁寧に応えたつもりですが、毎日のようにお話に来られて、説教されるようになった。最初は住民の大切な意見だと思い、頷けるところは、「そういう課題もやっていくようにしたいと思います」など、相手に寄り添うように応えていましたが、そのうちにだんだんと内容がエスカレートして、「お前は何大学だ」、「なんだバカ大学じゃないか、俺は東大だ。だからお前さんはこんなしょうもない研究しかできんのだ」なんて平気で言うようになって、毎日3時間程度、就業時間外ではありましたが、御茶菓子食って、時間を潰すようになってきました。出張に行くと、出張先にも電話をかけてくるようになり、確実に仕事に支障が出るようになりました。あの頃はまだカスハラなんて用語もなかったし、私はどう対処したら良いか分からないまま、時間を潰していきましたね。そのうち、私がバカで、『糠に釘』だと思い始めたのか、来なくなりましたが、たいへんな思いをしました。
税金で飯食っているって言ったって、私自身が好き勝手に研究している訳でもないし、この美浜町の職員さんも、だらだらやっている訳じゃない。自分たちの給料は税金であるということをしっかり意識して、行政サービスの向上に努めているはずである。中にはそうじゃない人がいて、住民としての指摘が必要な場合もあるだろうが、だからと言って、「お前より上司の方が頭が良いんじゃないか」なんて言われる筋合いはない。
駅弁屋さんの店員もそうだ。手際が悪かったってことはあったかもしれないし、客の順番をうまく采配しきれてないこともあるだろう。でも、だからと言って、「バカ」って言われる筋合いはない。言っちゃいかんが、「そんなに文句があるなら、別の店で買ってください」と言いたいぐらいだろう。
この問題は、客は偉い、店員は下と見ている限り、どこかで発生する問題です。顧客も従業員も上下関係はないのです。お客様はお客様ではあるけれど、神様ではないのです。おそらく、神様だって、もっと下手に出るはずです。後、言い方にも問題がある。この老人が、「順番が不明確だと思うよ。改善した方がいいよ」ぐらいの助言をしたなら、まだしも、「このバカが」と来たから良くない。顧客と店員が互いにありがとうの精神が無いのだ。金出しているんだから買えて当然ではなくて、顧客は売ってくれて「ありがとう」だし、店員は、対応悪いとこあったかもしれませんが、買ってくれて「ありがとう」の相互感謝がないのがいけないのです。
外食でも、会計時に、ちょっと一言、「ごちそうさん」、「ありがとうございます」の言葉が互いに出れば、カスハラにはならないと思う。最近見ていると、そういう店員と客の会話が減っているように思います。食券買って、食べて、黙って出て行く。不味かったのに、「ごちそうさん」って言えないってか。違うなぁ。「あのメニューはもうちょっと工夫してみて良いんじゃないの」って言えば良いんだよ。わざわざ、カスハラの言い方にして、「あんな不味いもん食えるか、金返せって」言って、SNSに載せるから面倒なことになる。
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