国立科学博物館 あっぱれ!!

 国立科学博物館が8月7日から11月5日まで、「#地球の宝を守れ」を合言葉に、1億円を目標にクラウドファンディングを始めたところ、1日で目標を突破し、2日目には3億に至り、今日8月14日の朝には6億3千万円まで伸ばしていました。素晴らしい。あっぱれである。今回のクラウドファンディングは、コロナ禍の見学者数の減少による収入減や昨今の光熱費、原材料費の高騰によって、運営資金が大きな危機に晒されていることに対して、安定的に標本・資料を収集し、多様なコレクションを適切に保管しつづける体制を維持するために、国民に直接に支援を訴えるものです。

 7日の朝、このニュースを聞いたところで、日本人は間違いなくプラス方向で反応するだろうと思いました。筑波実験植物園には頻繁にお世話になっている私としては他人事ではありません。少額ではありますが、支援させていただきましたが、期待以上にプラスの反応をしていることに涙が出そうになりました。そして、「日本国民はよく分かっている」と思ったのと同時に、「国行政よ、しっかりしろよ」とも感じました。

 国立科学博物館の運営費交付金のここ10年の推移を見ると、2012年に30億3400万円であったものが、2016年には27億4900万円、2019年には26億9800万円まで削減されています。2020年には27億3200万円と微増しましたが、ここ10年では10%程度減額されており、物価高騰や光熱費の爆上がりで要求額が増えているにも関わらず、この微増では追いついておらず、実質的に必要な経費である要求額との開きは3億5000万円となってしまっています。

 博物館側が無理な要求をしている訳では無いと思います。最低これくらいは、もしかしたらそれでも少ないけれども、なんとかこれぐらいは欲しいと言って要求している額と、インフラ整備事業などで、1件増やして数十億円をより多く確保して、事業促進を図ろうとしている経済官庁の要求額とはだいぶ意味が違うように思います。しかし、国の判断は、金にならない、金になりにくい文化や科学分野よりも経済発展に直接寄与し、経済学的に評価されるフローとなる事業に惜しみなく使うのです。公共事業をちょっと削って、博物館の足りない3億を補うくらい微々たることではないかと思われるのですが、こんなことさえも、国は削減してくるのですねぇ。

 今でも名前には「国立」が冠されていますが、独立行政法人化してからは、どの法人も、成果の最大化が求められ、「必要な法人だと言うなら、運営費に頼らず、自助努力で運営しろよ。民間だってみんな頑張っているのだから」と突き放された感じだが、世の中は、経済的に成り立つものだけを求めてはいません。博物館も研究機関もそうです。短期的に経済的な有用性がなくても、長い年月の取り組みや研究に意味を持つものはあります。

 私は現役時代、「農村景観の保全整備に関する研究」を行っていましたが、平成21年、その一貫として4K3Dによる農村景観デジタルコンテンツのアーカイブ構想を立ち上げましたが、民主党政権下で始まった事業仕分けで「3D施設に研究意義なし」と、枝野さんや蓮舫さんにコテンコテンに叩かれて、事業廃止にまで追いやられた経験があります。「2位じゃだめなんですか」のあの時だ。失われていく農村景観を今のうちに映像や資料(棚田の設計図や整備技術など)をたくさん保管しておいて、100年後の研究資料として使うという目的であったが、全否定され、景観研究全体の予算もゼロとなった。しかしあの時、仕分けのおかげでたいへん重要なことを学ばせてもらいました。

 もともと、現場主義で仕事をし、研究の意義を伝えて来た私たち(景観研究の研究者メンバー)にとっては、国民こそが研究の理解者だという想いがありました。もちろん、「こんな研究なんの役に立つの」という国民はいます。今回でも、国立科学博物館に対して、「剥製になんの意味があるの」とか、「入館料だけでお金が取れるサービスをしていないのではないか。これは経営が下手だからだ」なんて言う国民もいます。それはそれで真摯に受け止めないといけません。しかし、国民は研究の重要性をよく認識していると思うのです。

 景観研究の仕分けが決まってからの一般公開では、4K3Dの農村景観アーカイブを見学しに来てくださった方のほとんどが、「こういう研究は是非やってもらいたい」、「おもしろかったです。農村景観を守ることは大事だと分かりました」と、マスコミのインタビューに素直な反応をしてくれているにも関わらず、新政権にすり寄るマスコミは、そういうインタビューの様子はまったく放送しなかった。テレビでは、古舘伊知郎やみのもんたが、連日、事業仕分けの対象となった様々な事業について、とことんやり込めている。ネット掲示板も人権無視である。「国の人間が税金無駄に使いやがって」なら、これは良い意見であるが、そんなものではない。「ああいう独りよがりのバカ研究者がいるから日本の国は良くならないんだ」とか、「あのブタみたいな奴が」と、事業とはまったく関係ない私の容姿を揶揄してくるものも多かった。泣きそうです。

 あの時、ボロクソに言われながらも、私が精神的に持ちこたえられたのは、一部かもしれないが、「こういう研究は大事だと」と励ましてくれた国民がいたからです。国民は、国の行政や政治よりも文化資源というものをよく理解しているのだと確信できたので、仕分けを甘んじて受け入れながらも、その後も誇りを持って仕事ができたと思っています。

 今回、国立科学博物館のファンドがこれだけ集まったから良かったとは手放しに喜んではいけません。重要なのは、国立科学博物館の取り組みを大切に思っている国民が相当数いるのだという事実を継続し、最低限、国はちゃんとこの国民の反応を理解しろよと言う事です。

 今回のことで、『日本の国が最も文化資源の重要性を理解している国である』と世界に発信していくための一つの契機になっていくのなら素晴らしいことである。最後に一言、「プレミアな返礼品は嬉しいけれど、無くても私は応援したい!」

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