ワークショップをやってみよう(3)

3.多様な方法をマッチング

    さて今回は、いろいろなワークショップの方法を紹介していきます。本当にさまざまな方法がありますが、それを体系的に整理して、紹介し始めるとおそらくたいへんな量になります。ですから、ここに書いてある以上のことを知りたい方は、詳しい解説はワークショップの専門家が出している専門書をお読みいただくことにして、ここでは、地域づくりでよく使われる方法について簡単に紹介してみたいと思います。  ここで、こういう方法を使ってみればいかがですかと私が紹介する方法は、地域づくりで、ある程度実績があり、それなりに効果的ではないかと思ういくつかの定まった方法ですが、前節でもお話ししましたように、本当は、地域の実情に合わせて、色々な方法をく組み合わせたり、改変したりして(手法に特許があるものは注意して下さい)プログラムそのものを創造していくことが求められます。  また、ここで方法を紹介しますと、まるでこれらの方法が万能であるかのように思われ、実践したけど、「うまくいかんじゃないか」とか、「なんだ遊びじゃないか」となって、「ワークショップ全然使えない」みたいなことになります。よって、お話しする方としてはたいへん怖いのです。あくまでも方法の一つに過ぎないと思ってください。また、ワークショップを進めるにはかなりの技能が必要となることも心得て下さい。

  さらに、地域づくりのワークショップでは、「いろいろ意見を言ったけど、どこが行政や事業に活かされるんだ」、「意見を言え言えと言われても、日頃考えとらんのに良いアイデアがそんなに出るもんかいな」と住民に言われる場合が多々あります。しかし、それは方法が悪いのではありません。それぞれの方法が持つ特徴や出口を明確にして、ワークショップによって得られた成果が地域づくりの何を担うのかについて、主催者と支援者が十分にコンセンサスを得た上でワークショップを行わないから生じる問題です。  よろしいですか。ワークショップは「意見集約」、「自己の気づき」、「新しい発想の創出」や「情報共有」の手段であり、地域づくりそのものではありませんからね。くどいようですが、勘違いするととんでもないワークショップになる場合があるので、念には念を入れてお話しさせていただきました。さて、それでは先ず五つの方法について簡単に特徴を述べた後、一つずつもう少し詳しい紹介をしていきます。

(1)集落環境点検

   この方法は、集落と言う地域環境(空間)を対象として、住民が集まり、集落の生産・生活に関わる様々な問題や自然・社会環境について点検し、その点検結果を集落の地図に表現するワークショップ活動であり、集落の計画づくり等の基礎ツールとして活用されます。  点検対象としては、自然環境、生産環境、生活環境、歴史文化的環境、土地利用、景観等が含まれ、点検活動を通じて、これまで気づかなかった地域の魅力を再認識することも多く、地域づくりの学習効果の高い手法として評価されています。

   (2)認知・想起マップ法

  集落環境点検は、実際に歩いて環境を確認する点で、啓発のためのワークショップとしては効果的ですが、準備がたいへんです。そこで、室内で、白地図を配布し、「あぶないと思うところ」とか、「子どもの時に遊んだところ」、「通勤で使っている道路」等の質問をして、認知している資源や想起される事柄を地図上に記載していくことで、情報マップを作成し、問題点を抽出し、構想マップづくりに繋げる方法です。

(3)KJ法

   文化人類学者である川喜田二郎によって開発、命名された方法で、数々のフィールドワークの経験を下敷きにした、調査資料を整理、分析する際の経験的なテクニックです。この方法は、明確な意見を出しにくいぼんやりした内容を扱うのに適します。  議論すべきテーマをできるだけ多くの視点から検討し、背景にある問題の構造を議論し、参加者の共通認識として理解することが目的となります。特に議論のテーマが抽象的でとらえどころのない場合やテーマの理解にバラつきがあったり、参加者が先入観や思い込みにとらわれている場合などに有効な方法といえます。  一般的には、テーマについて自由に討議した後、各自10枚ほどのカードに思いつくまま意見を書きます。そのカードの内容を分類し、それぞれ分かりやすい表現でタイトルを付けていきます。模造紙に内容の関連を考えながら配置を決めカードを貼り付けます。テーマにかかわる様々な要素の内容の相関関係が一目で見わたせます。集落環境点検においてもこの方法は応用されます。

(4)ファシリテーション・グラフィックス

  ワークショップにおいて、意見交換は、参加者のもつ情報を集約する最も一般的な方法ですが、従来の意見交換方法は、同一意見が何度も出されたり、意見が拡散したりと、非効率な場合も多々あります。ましてや、日頃、人前で発表することに慣れていない住民の場合には、そのような状況が発生しやすいと言えます。  そこで、意見交換の生産性の向上を目的に、米国のコンサルタント組織「MIG」が、新たな意見交換の運営手法として、ファシリテーション・グラフィックを開発しました。  具体的には、ミーティングにおいて、大きな紙を貼った壁を前面に参加者が扇状に座り、ファシリテータと呼ばれる進行役が、発言内容を書き出し、関連が出てきたら、四角で囲んだり、線や矢印で繋ぎ、場合によっては絵を描いて、全ての意見を紙面上に記録していく形式が取られます。視覚的メディアを通しての活発な意見交換ができますが、ファシリテータに能力が必要となります。

(5)パタンランゲージ

  アメリカの建築・環境研究者でありデザイナーでもあるC.アレグザンダーによって提唱され実践されているコミュニティ段階における住民参加方式を伴うデザイン手法です。パタンとは、環境の中に繰り返し表われるような典型、あるコミュニティに共通する基本的な合意事項を指します。  そしてこのパタンの集合が体系化されたものがパタンランゲージです。環境を構成する個々の具体的な要素に名前はついていますが、要素と要素の関係には名前がついていません。パタンランゲージとは、この関係を意識し、パタンとして「暗黙の了解」を「具現化」することによって、要素をより計画的に形成していくこと、そして、地域計画や建築の専門家以外の一般住民でも環境形成のプロセスに参加できるようにすることにねらいがあります。わかりにくいと思いますので、下の事例を読んでいただき、雰囲気を掴んで下さい。

(6)旗上げ方式アンケート

  多人数(30~50人程度)を対象にした短時間の説明会のような集会形式の場合に、参加者全てに最大限の参加の機会を作り出す方法として「旗揚げ方式アンケート」があります。  参加者には、それぞれ1番から5番までの番号札を一組配ります。5者択一のアンケートを数問用意し、その設問に答えながら会場全体で議論を進めていきます。このプログラムの大きな特徴は、参加者全員が一方通行でなく、自分の回りの人とわずかでも意見交換できると言う点と、会場全体の意見の有り様がリアルタイムで参加者一人一人にわかると言う点、さらに少数意見が無視されることなく、全て取り上げられた上で全体の場の意見を共有することができると言う点にあります。  最近では、旗の代わりに5者択一のボタンスイッチと連動したPCを使った集計機(反応分析装置も含む)によって、即時にアンケートができ、数値、円グラフや棒グラフをプロジェクターで投影することができるようになったものもあります。  この旗揚げ方式は、単にアンケートを取って、賛成多数を見つけると言うことではありません。それならワークショップになりません。どうしてそれを選択したのかの対話を行うことによって、問題点が明確になってくる。そのためのアンケートであることを忘れないで下さい。

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