プリテンダー

 固い投稿が続きましたので、今回は軽い話題を。

 昨年末、NHKの紅白歌合戦にOfficial髭男dism(オフィシャルひげダンディズムと読む)という4人組のポップアーティストが初出場しました。

 おそらくは、本ホームページの読者の中には、そんな名前初めて聞いたという方がいるやもしれませんが、彼らが歌った「Pretender(プリテンダー)」は、2019年に放たれたシングルとしては、同じく紅白に初出場となったKingGnu(キングヌー)の「白日」と並んで、ネット動画のアクセス数が一億数千回を超え、2019年を代表する二大ヒット曲となりました。

 私は、紅白歌合戦での放送の少し前になりますが、12月28日に千葉の幕張メッセで行われた国内最大の年越しフェスティバル「カウントダウンジャパン19/20」の会場で、両方のアーティストとも、生歌を聞いてきましたが、メインステージは一万人以上入っていて、間違いなく、今なら新型コロナウイルス対策で中止しなければならないほどの熱狂ぶりでした。

 彼らの「宿命」という曲は、昨年の甲子園の全国高校野球選手権の夏の大会で、朝日放送系の番組「熱闘甲子園」でもテーマ曲として使われました。

(引用:歌手official髭男diisdm 作詞藤原総 作曲藤原総)

と言う、なかなか熱い歌詞に、結構ほれ込んでファンになったのですが、紅白で歌ったこの「Pretender (プリテンダー) 」という恋愛曲の歌詞もなかなか面白いものがある。

(引用:歌手official髭男diisdm 作詞藤原総 作曲藤原総)

 韻もうまく踏んでいて、曲調も明るいのだが、歌詞そのものは、意味深で、もの悲しい。プリテンダーは「ふりをする人」と訳せるので、好きな女性に、素直に好きと言えず、うじうじと妄想の中で、恋人のふりをしているが、現実に戻るとディス(否定する)らざるを得ない情けない自分がいると解釈しても良いし、はたまた、既婚者の自分が他の女性を好きになったが、本当の気持ちではない自分を装い、どうにもならない運命を嘆いているようにも解釈できる。

歌詞は人それぞれの感じ方で良いとして、私が注目したいのは、歌詞そのもののストーリーではなく、最初の歌い出しで、普通、ポップスでは絶対使われないだろう奇妙な言葉が出てくることだ。

『人生柄』という言葉だ。これは聞いたことがない。

「季節柄」、「お日柄」、「場所柄」、「仕事柄」という使い方があるので、その使い方からすると、「~の様子からすると」みたいなことか。「人生」に当てはめて訳すなら、「自分の人生の流れからすると」と言うことになる。そういう意味だとすると、この達観的な表現は驚くべき潔さと捉えられ、あまりにも空しすぎる。でも、だからと言って、この歌詞の主人公が自分の人生の柄を本当に理解しているのかというと、どうも、そうでもなさそうだ。

 「村柄」という言葉がある。民俗学の用語らしく、村のありさまのことを言うらしい。「村柄書上帳」というもので、江戸時代、領主が村の状況を見るために村人に書かせたものがあるそうだが、「柄」とは、単なる物理的な様子ではなく、「人柄」などと同様で、品位や格、レベル、性格のようなものを併せ持つので、「村柄」もアイデンティティを含んだ村全体の性格を表していると考えてよいだろう。

 特に、旧村単位や集落単位では、この「柄」が、集落の取り決めやコミュニティの存続に大きく関わっていて、地域の住民をまとめることができるのは、この柄がはっきりしていることが条件となる。

 農村づくりにおいて、自分たちの地域の「柄」はどういうものかをしっかりと考えた時、周辺集落との協力体制をどのように取っていくかも決まるのであって、なんとなく、集落同士集まって協力していけば、地域がまとまるものでもない。「柄」が読めれば、農村の将来のあり方は見えてくるのだと思っていたので、私の農村づくり支援においては、柄をしっかりと把握するよう指導してきました。

 しかし、この「Pretender (プリテンダー) 」という楽曲を聞いて、少し考え方を変えようと思った。

 「人生柄、君とのロマンスが続かない」と言うのだから、本来なら、人生の性質上の問題として続かないとまで言えば、究極の絶望感ということになるにも関わらず、結構あっさりと開き直って、違う視点から自分を見つめ、マイナーコードであるべきところをメジャーコードに変えて、ポップに歌って、「ふりをする人」を悲劇の主人公にはしていない。

(引用:歌手official髭男diisdm 作詞藤原総 作曲藤原総)

 令和という時代はやっぱりこれまでの時代の流れとは違い、感情や想い、これまでのしがらみには作用されない恋愛があるのだろうか。こんなに達観視している。

 ならば農村づくりも、替え歌で、

 村柄で、活性化しないと思っていても、開き直って、この歌の曲調ぐらいポップに村柄の融合に挑戦して行っても良いということになるのだろうか。

※次回は「楽ちん多面」について投稿します。是非、読んでください。

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