気象庁、生物季節観測やめるってよ

 「ちょ待てよ!」って、キムタクではないが(元スマップの木村拓哉のドラマでの名セリフ)、そう言いたくなるニュースが突然飛び込んできて、驚いている。

 気象庁が生物季節観測を廃止すると言うのだ。

 生物季節観測とは何ぞや。あまり聞いたことのない用語だなぁとお思いかもしれないが、実は気象庁の観測業務の一つです。観測には、身近な動物を観測する”動物季節観測”と植物を観測する”植物季節観測”の二種類があり、どちらも、季節の進み具合や長期的な気候の変動を把握するなども視野に入れた重要な観測です。観測機器だけではとらえられない季節の変化や、自然界の異変をキャッチするためにも必要な観測記録ですし、農業分野にとっては、感覚的ではあるが、農作業時期の割り出しに一翼を担っていると言えるでしょう。

 2020年10月現在の観測項目は、植物34種(桜や梅の開花など)動物23種(アブラゼミやウグイスの初鳴きなど)で、全国の気象台・測候所 58 地点で観測しています。観測の方法は、至って原始的で、観測者(気象庁職員)が実際に眼で見て、動植物の現象を確認した日を記録するものです。所謂、人海戦術によるものだ、しかし、単なる人海戦術でもない。たくさんの生物種の中から、その種を見つけ、見極める能力が必要となるので、専門的な知識がそうとう必要となるので、専門家海戦術(造語)となりますし、一地点を動かずに観測できるものではないので、足も使う必要があり、人件費もかかります。

 たいへんな業務ですが、気象庁では、この観測を1953年から行っていて、もうかれこれ70年続けていると言うのだ。なのに、感謝感謝の地道な観測のその9割を、急に廃止するとはどうしたものだろうか。

 私たち国民に最も身近に目に触れる観測結果と言うと、さくらの開花を観測したあの「桜前線」であるが、あれは正式には「さくらの開花予想の等期日線図」というらしい。毎年誰もが目に触れるものであるが、具体的に何に役立っているのと言われると、庶民的には「お花見の時期はどれくらいが良いか」とか、「卒業式、入学式にまだ咲いているのだろうか」とか、まぁ、「春が来たな」ぐらいかもしれないが、確実に人々の心の中に、なんやらほわっと「春!スタート」を感じさせる情報であることは間違いない。

 しかし、さくら以外となると、かえでの紅葉とイチョウの黄葉に代表される紅葉前線ぐらいが気になる程度で、それ以外の動植物種は、毎年意識して見ている訳ではない。只、何かの折に触れて、ウグイスやほたるやセミも、「ふぅーん、飛び始めたのか」、「鳴き始めたか」と全く気にならない訳ではないし、これらの情報がニュースなどで扱われると、逆にその情報から季節を感じ始めるということもある。人の季節感が鈍くなってきている現代かつ季節感の味わいにくい環境や社会下に生きている中では、情報はそれなりに重要だと思う。

 私のような無粋な人間は、きれいなお天気お姉さんがテレビで「今日、上野恩賜公園の桜がちらつきはじめました。気象庁の発表によると・・・」と流れて初めて、庭に目を遣り、「あっ、ほんとだ。家のもそろそろ咲きそうだな」などと気づく。

 気象庁はホームページにお知らせとして11月10日に、突然、この情報をアップしたが、理由については、「近年は気象台・測候所周辺の生物の生態環境が変化しており、植物季節観測においては適切な場所に標本木を確保することが難しくなってきています。また、動物季節観測においては対象を見つけることが困難となってきています。」としか書かれていない。ニュースや新聞での情報を見る限りでは、予算の問題とは言われていないようです。

 私も、今まで一度も見たことなかったが、生の観測結果(類型年表)が気象庁のホームページで公開されているので、いくつかデータを見させてもらった。

 例えば、「さくらの開花」という項目を開くと、横に1953年~2019年までの列があり、縦に観測地点として国際地点番号と地点名が103か所並んでいて、表内には確認された日と種目と構内・付近の別が数値で「411 9」と示されている。4月11日に正規種目が観測地付近で見つかった(9)ということを示している。さくらの開花と満開はこれからも観測が継続されるということだが、それでも、1970年代はほぼ100地点での観測記録があるのに、2000年代に入ったあたりから徐々に観測地点数が減り、2019年を数えてみると、58地点に減っている。最近はデータが少なくてさぞかし「等期日線図」は引きにくかっただろうと思う。

 それでも、さくらはまだ良い方だ。トノサマガエルという項目なんて悲惨だ。観測地点の多い1970年では、42地点で観測されているが、2019年は5地点となっている。観測を5地点しかやっていないということではない。探したけれど見つからないということです。

 おそらく、これだけバラツキや母数が減ってくると、この観測によって取られたデータが、気候の長期変化や季節の遅れ進み等を知るためのデータとして使えるかというと、難しいのだろう。専門家ではないので、よくわからないが、統計的な価値は落ちていることは否めない。でも、定点での観測によって、観測できなかったことを確認することにも意味があるし、データ取得の目的の幅を広げれば、定点である必要性もなければ、指標となる生物種も変わっていっても良いはずだ。観測を止めてしまったら、逆に生物が戻ってきて観測されるようになった時のデータが分からないではないか。「それは気象庁ではなく、環境省のお仕事では?」と言われるかもしれないが、気象観測とともにあるデータだから、単に見つかった見つからなかったということでもないように思います。

 すでに、気象庁のこの観測は業務法の枠を超えて、日本人の心の拠り所にまで働きかけている大切な業務なのだと思います。気象災害の頻発に伴う災害対応に、より人材や予算を重点しないといけないことはよくわかるし、国民の誰もがそれを望んでいますが、だからといって、データが取れないとか、役に立たなくなったからと言って、先人の築いた努力を放棄することはないのではないか。データというものは蓄積されてこそ意味があるのではないだろうか。

 人がいない、金がない、重点化の方向性が変わったのなら、やり方はいろいろとある。今はICTの時代であり、カメラセンサーの価格も下がり、AIによる画像認識も進んできたので、多点カメラでの画像観測データをビックデータとしてサーバーに溜めて、AIで生物種を特定するということも考えられる。先日、海上ドローンでイルカやサメの判定ができるようになったというニュースも見た。いきなり全部は難しくても、できない話ではないだろう。また、どうして、専門家や学術に拘るのだろうか、「信頼できるデータを公的に公表」することに責任を感じているのだろうが、桜の開花予測が少々間違っていても、謝罪する必要なんてないし、学会で認められた観測方法で取ったデータしかデータと認めないという時代でもない。今では、専門家に勝るとも劣らない市民専門家もたくさんいますし、SNSのネットワークはそれこそ業務範囲を超えて来るのではないだろうか。ボランティアや評論家も含めて、国民協働でやれることはたくさんあるように思う。そういうサポーター候補はいくらでもいると思う。実際に、ウエザーニュースなんかは、さくらの開花予想にサポーターを使っていると聞く。そういう支援者を取り込むことも重要だろう。

 廃止する種目・現象を含む観測方法を定めた指針を気象庁は今後準備しているそうだが、是非、新たなタイプの存続に向けた指針であることを期待する。日本人の心を観測しているのだという誇りをもって良いのではないでしょうか。

 何も知らずにいい加減なことを言って申し訳ありません。只、心に穴をあけられて、とても黙っていられなくなって、本当に、テレビに向かって「ちょ待てよ!」って、キムタク口調になってしまった。

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