組織づくり十カ条

 農村づくりにおいて、組織づくりはとても重要な過程です。例え、農村づくりに対する一人一人の思いが強くても、組織づくりに失敗すると、なかなか円滑な農村づくりに発展していきません。

 なんとなく、馬力のある主立ちが集まって、互いの地域に対する夢を語り合ったところ、同じ目標を目指せそうなので、農村づくりを進めようやということになると、先ずはここに集まったメンバーが言い出しっぺなのだから、数人で役割決めて進めましょうという感じで、進んでいってしまいがちです。または、新たに組織を一から作るのもたいへんなので、母体となる組織を集めて、その中で進めましょうということになります。

 集まり方というものは、地域毎に個性がありますし、地域リーダーの性格もありますし、それぞれの地域の歴史において築かれてきた暗黙の了解みたいなものもあるでしょうから、外部の人間が、そのやり方は良くないとか、こうした方が良いというのは烏滸がましく、あまり口を出すべきではないのですが、組織を作ることになったら、是非、チェックしてもらいたいポイントがあります。

 それは、次の十カ条です。これは平成16年に農林水産省農村振興局が作成した『美の里づくりガイドライン』に掲載されたものです。何を隠そう、私が作成したものですが、この10項目は、農村づくりの全国の事例と私自身の経験を分析して、推進組織を作るなら、このような点を考慮した方が良いと思われるものを並べたものです。すでに古すぎて、ガイドライン自体がホームページ上にアップされていませんが、私としてはとても大切な十カ条だと思っています。確かに、民主的な組織であることとか、既存の組織を使えとか、直接的な利権が絡まないことなどと、いつの時代のことを言っているのかって、つっこみたくなる条項もありますが、条項が示す本質は変わっていないので、今も使えると思っています。(平成初期の農村づくりでは、まだまだ封建的かつ女性の参画を認めない地域もたくさんあったので、こんな条項を残したのだと思います。)

  • 第一条 地域住民の意向が反映される民主的な組織であること
  • 第二条 既存の組織の様々な役割をうまく活用すること
  • 第三条 世帯主だけでなく、子供から大人までの種々の年齢属性の意見を集約できること
  • 第四条 特技や知識を持った集団が役割を発揮すること
  • 第五条 地域の資料、計画技術や専門家の紹介などの支援を行政から受けること
  • 第六条 組織の活動状況を常に住民に情報として提供すること
  • 第七条 他地域の組織と交流を持つこと
  • 第八条 直接的な利権の問題がからまないこと
  • 第九条 住民一人一人の身近な問題から、集落や地域全体の問題へ発展させること
  • 第十条 運営を円滑化するために、楽しさの演出が十分になされること

 この中で、とても大切な条項が第四条と第六条と第十条の3つです。本質はこの3つに集約されています。農村づくりを円滑に推進しようとすると、だいたいは、仲の良い人、自分たちの活動に協力的な人、考え方や価値観が同じ方向の人だけを集めることが多いです。最初から、いろいろと文句を言う人が入っていると、やりにくいし、せっかくのやる気が失せてしまいます。だから、反対者や非協力者を入れるのは、ある程度、活動が軌道に乗ってからで良いだろうと思ってしまいがちです。これは、ある意味正当なやり方ではありますが、よく考えてみる、上手くやらないと、後々逆にやりにくくなる方法でもあります。

 気の合った仲間だけで道を作ってしまうと、元々協力的でなかった人たちは、自分が関わってこなかった道を今から歩いて来いと言われても、余計に行きにくくなります。軌道に乗ってからではなく、軌道に乗れそうになってきた少し前から、反対者や非協力者もうまく組織内に入れていくことを考えるべきです。このタイミングはとても大切です。その活動に本当に反対する者もいるとは思いますが、多くは、総論賛成各論反対の方が多いはずですから、そういう彼らが気持ちよく参加し、活動の修正ができるようにしておくべきです。そのためにも第五条の「特技や知識を持った集団が役割を発揮できる」よう組織を構成し、早い段階から反対者や非協力者も巻き込んで(インボルブ)おきましょう。

 こういうことを言うと、すぐに、「いやいや、山本先生、反対者や非協力者は、初めから興味が無いからこちらに寄ってきませんから無理です」と言いますが、無理にすべての非協力者を巻き込めと言っているのではありません。必ず、非協力者であっても、各論のところで反対と言いたい方がいて、その方たちは、自分の出る幕が無いので、それを表現できないでいるのです。そして、案外そういう方が後々大きな協力者に変身する者なのです。この方たちとうまいタイミングで一緒にやれるようにしないと、非生産的だということです。また、「反対者や非協力者が加わらなくても、うまくやれる同士だけでうまくできるのではないか」と言われる方もいますが、私は、『同じ価値観を持ち、同じ方向を向いている人達ばかりが集まると、もし間違っていることがあっても気づかないのではないか。こういう人もいるから、時間はかかってもバランスの良い目標になるのではないですか』と言わせてもらう。

 そして、第六条と第十条が、この第五条の組織づくりをフォローするものとなります。気の合う仲間だけのお楽しみ会から、本格的な農村づくりに進展するためには、「こんな活動をやっていますので、是非、皆さん協働して参加してください」と、住民全員に情報公開していく必要があります。もちろん、支援者も増えますが、逆に反対者も増えます。それでいいのです。第六条「組織の活動状況を常に住民に情報として提供すること」で、何をやっているのかを全住民に伝えていき、見張ってもらい、ちょっとずつ修正していき、地域全体の活動に展開していくことです。そして、もう一つ大切なのが、第十条の「運営を円滑化するために、楽しさの演出が十分になされること」です。反対者であろうが非協力者であろうが、とりあえず楽しい活動であったり、地域の子供やお年寄りを喜ばせたり、地域の住民であることに誇りが持てるような活動になっていれば、徐々に一体感が出てきます。率先して農村づくりを推進している人たちは、頑なに、自分たちの農村づくりの夢や目標を押し付ける必要はありません。また、楽しさを演出することで、騙して反対意見を抑える必要もありません。非協力者や無関心者も集まるというところまでができればいいのです。

 かなり昔のことですが、私の経験で、集落の楽しいイベントの一日が終わった後の集会所で、このイベントに中心になって関わった人たちが、農村づくり推進派と反対派に分かれて喧々諤々やっているのを見たことがあります。聞いてみたら、こんなに意見を言い合ったのは初めてだと言うことでした。集まることさえできれば、互いの理解は深まります。雨降って地は固まるものです。だからこそ、楽しさとのセットメニューが重要なのです。

 組織づくりの本質は、多様な考えや意見を持つ住民(内外の支援者も含む)が集まり、それぞれが自分の役割を持ちながら、地域の多様な理想像を多様のまま一つにしていくことです。そのための組織づくりになっていなければなりません。

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