正月のしきたり

 新年あけましておめでとうございます。

 本研究会の会員の皆様、農村づくりに携わる全国の皆様並びにホームページの読者の皆様には、旧年中は、一方ならぬご厚情を賜り、誠にありがとうございました。

 昨年の正月はそうとう寒かったと記憶していますが、今年はだいぶ暖かいみたいですね。年末にはかなり降った北海道、東北、北陸の雪も、新年は少し休んでくれたようです。只、局所的な雨や雪は様々な地域であるようです。

 本年も、皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げますとともに、農村づくりや多面活動の運営に向けて、研究会として皆様のお役に立てるようがんばって参る所存でありますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 是非、この記事を読まれている方とそのご家族の皆様が御健康に日々を送られることを切に願います。

 さて、今年の三が日は、昨年から買っていてずっと読み残していた数冊の新書を一気読みしましたが、後は、久しぶりに揃って集まった息子たち二人を入れて家族水入らずで、ご馳走食べーの、カラオケ歌いーの、テーブルゲームやりーので、とことん遊び惚けました。

 例年はお正月の御馳走は私の料理の腕の見せ所ですので、結構せわしく働いていましたが、昨年骨折した右肩も完治しておらず、お雑煮で我が家秘伝の出汁を取るような面倒なことはやめて、出汁もお節も市販のものにして、お刺身から鍋から焼肉まで、1日から開いているスーパーで買ってきて食べました。おごそかでまったりとした正月の雰囲気は無くなりましたが、楽っちゃ楽でした。

 私は正月の家のしきたりについては本来は保守的な方で、山本家のお雑煮は丸餅でないと駄目とか、肉を入れては駄目とか、お屠蘇は必ず用意するとか、1日は奥さんが台所に立ってはいけないとか、父親からの言い伝えもあり、結構変な慣習に拘っているところがあります。ですから、いつもと勝手が違うと、あのルーチンを踏まなかったことで今年は縁起が悪くならないだろうかとか心配になってしまうのですが、今年だけはそういう心配もすべて止めてしまいました。

 3日に初詣はみんなで行きましたが、これもいつもなら、一家を神様の下へ導くのは家長の役目だと、私が必ず車の運転をしていたのですが、今年は規制緩和です。行き帰りすべて息子たちの運転で、殿様気分で後ろの席に座っていました。息子たちが私の右腕の不具合や、予想以上に進んだ老化を気遣ってくれたと言うことでしょうか。

 しきたりを守らず、緩めるのは簡単です。人間側が少し堕落すればいいだけなのですから。でも、しきたりの意味を含めて後世に伝えていくのは労力がかなり必要となってきます。妻と息子たちとたった二代だけなのに、多様な価値観やグローバルルールに阻まれて、その意味を家庭ローカルにさえ伝えていけなくなっていて、終いには、自分の事情で守れなくなってしまう。情けないけれど、しかたないようにも思います。

 ちょっと話は変わりますが、農林水産省では、「家族経営協定」の普及を推進しています。この制度は、平成5年辺りから始まっていますが、元々は農家女性の地位向上に端を発し、男女共同参画基本法を担っています。さらに、最近では、各世帯員が意欲とやり甲斐を持って経営に参画できる魅力的な農業経営を目指すために、経営方針や役割分担、就業環境等について、家族間の話し合いによって取り決めるものとして推進されています。この普及については賛否両論あります。ルール化によって気兼ねなく意見が言えるという賛成派の方もいますが、こんな肩ぐるしいものが夫婦や家族間に必要なのかとか、阿吽の呼吸は明文化すると、その文章によって逆に縛られ、封建的になってしまい、コミュニケーションのツールであるはずの協定が、法規みたいに捉えられてしまうということのようで反対だとか。

 私もどちらかというと反対派なのです。でも、家族経営協定によって農作業の役割分担や収益の分配、労働時間の取り決めることではなく、家族としてのアイデンティティをみんなで見つけるということは重要な課題だと思っています。それは、正月のルールとか日常のしきたりを守るとかではなくて、もっとフランクなものでもいいと思います。お雑煮の具の我が家の拘りぐらいでも良いと思います。我が家は他とは違うというのがあれば。

 重要なのは、家族の繋がりを促進するために、互いに持ち合わせたい暗黙の了解みたいなものかも知れない。しかも、それは時代時代で変化していっても良いのかも知れない。 今年、我が家が正月らしいことをほとんどしなかったのは、暗黙の了解があったように思います。約束事を決めたりしない、頑なにしきたりを継続もしない。知らない内に、「父親の体の衰えを考慮した正月を過ごそう」という家族の役割分担があったということでしょう。

※アイキャッチの写真は有名な「牛久大仏」世界一の高さ120mを誇ります。

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