ランドセル

 ♪仲良し小道はどこの道 いつもの学校へみよちゃんと ランドセル背負って元気よく♪(作詞・三苫やすし/作曲・河村光陽)は、「仲良しこみち」という童謡の冒頭の歌詞ですが、先日ニュースを見ていると、4月の小学校の入学式に向けて、ランドセル商戦が始まっていると言っていました。これ、今では「ラン活」と言うらしいです。最近はなんでも「活」をつけるんですね。

 ランドセルなるものは明治時代に始まったらしいのですが、元々は軍用の背嚢(はいのう)として使われていたランドセルが、その堅牢さから学童用の鞄として定着したものだそうです。教育制度の確立という中で始まったもので、ウィキベデアを見ると、’1887年(明治20年)、当時皇太子であった嘉仁親王(後の大正天皇)の学習院初等科入学の際、伊藤博文が祝い品として帝国陸軍の将校の背嚢に倣った鞄を献上、これに近い形状が現代のランドセルの基礎とされる。革を使っているため高級品であった事から戦前は都市部の富裕層の間で用いられる事が多く、地方や一般庶民の間では風呂敷や安価な布製ショルダーバッグ等が主に用いられていた。’と書いてありました。今のように誰もがランドセルを背負い始めたのは高度経済成長期辺りだと言われていますが、私の育った尼崎での小学校入学時、昭和39年の記憶では、誰も風呂敷包みで来ている子供はいなかったように思います。

 ランドセルはたくさん物が入るし、背負いベルトが太いので少々重くなっても軽々と背負い易く、両手が使えるので傘も持ちやすい上に、転倒時には手を突け、後ろにひっくり返った時はクッションにもなりますので、安全機能が高い。更に、強固に出来ているので長持ちして、子供の乱暴な扱いでも壊れないというのも利点です。

 昔のように、黒は男の子、赤は女の子なんていう、今だとジェンダー問題となるようなことは、今はなくなり、紫や緑という原色からなんやら色名を言いにくい中途半端なパステルカラーまでもたくさん出ていて、花やハート、星などの柄が付いたもの、形状や安全性も各社が工夫をして少しずつ変えて多様化しているので、ファッション性も出てきています。日本でランドセルファッションと言えば篠原ともえぐらいしか思い出せませんが、特に若い女性に人気で、海外でもそうとう売れているそうです。

 ただ、ニュースを見ていて驚いたのは、40万円近くするものから数千円まで価格差があるということです。この価格差は何なんだということです。親や祖父母にランドセルを買ってもらうのは一大お祝い事業であり、親世代にとっては、「よくぞここまで大きくなってくれた」と感動するための記念品でもあり、他の子のとは少し違うものや高いものを買ってやることで、親の威信を保ち、見栄を張る役割もあったように思います。ただ、子供としては思いがけないところで、このことが原因で学校へ行き辛くなることもありました。

 私は幼稚園からの友達で、カバン屋さんのNくんと非常に仲が良かったのですが、このNくんが当時、これは最高級だと思われるランドセルを背負ってきたことでいじめに遭いました。私は中間的な価格のものを背負っていたので、そのことでは直接いじめに遭わなかったですが、Nくんと友達だということだけで、仲間外れにされた思い出があります。Nくんはランドセルに落書きをされたり、傷つけられたりしていましたが、本人に、親には絶対内緒にしておいて欲しいと言われ、親にこのいじめが発覚するまで2年かかりました。どうして早く知らせなかったのかと、Nくんや私が怒られましたが、今と違って、いじめた方はたいしてお咎めも無く、しばらく仲間外れは続き、なんだか腑に落ちなかったのを覚えています。

 今では、これだけ多様にランドセルはある訳なので、小学1、2年生で、ランドセルの高級感を巡っていじめは起こらないと信じていますが、それでも、今は情報化の時代です。ランドセルが40万円であることはすぐわかるし、8800円のランドセルしか背負わせてもらえなかった子供としては、「我が家はそんなに貧乏なのか」となんとなく嫌な気分になるに違いない。子供には、「うちはうち、ひとはひと」、「8800円で何が悪い。コスパ最高だと胸を張れ」と諭されても、子供心には割り切りにくいところもあるでしょう。最近の一年生はこましゃくれていて、質が良いか悪いかとか好きか嫌いかよりもできるだけ高いものを選んだりするからたちが悪い。また逆に、子供が「8800円のが好きだからこれにするよ」と言われたら、親としてすぐに納得できるかというと、ちょっと見栄がじゃまをするのも確かですね。

 それにしても、いくら何でも価格帯が広すぎます。大人がファッション性で選ぶなら、ブランドや高級感もあり得ますが、小学生の人生がこんなことで振り回されて欲しくないのです。売っている方は、「売れるから作っているのだ」と言うと思うし、親世代も「買いたいから買っているんだ」と言うのかもしれませんが、数千円からの商品があるなら、せめて数万円のところで止めておいてもらいたいものです。私立なら校章でもカービング(革彫刻)してランドセルを指定できるかもしれませんが、公立だと学校内でこの程度の価格のものを準備してくださいと決めるものでもないですし、難しいところです。決して、メーカーも消費者も責めることはできませんが、そうは言っても学校用品で40万円というものがあるということが気になってしかたないのです。

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