今日から3日間連続投稿をします。一日目の今日は、先週に引き続き、もう一つ今年流行った言葉についてお話しすることにします。

 『おじキュン』という言葉があるらしい。ちょっと話題としては遅いのかもしれないが、今年は、おじキュンに限らず、『キュン』という表現が流行りました。

 おじキュンは、ドラマ「私の家政夫ナギサさん」(TBS系)で、企業戦士となって働きづめのキャリアウーマン役を演じる多部未華子さんを、料理、掃除の天才家政夫役の大森南朋さんが、あれやこれやと世話をやき、周りから優しく包み込み癒すことで、歳が離れていて、結婚はあり得ないと思っていた二人に恋の火が付き、行く行くは結婚までゴールインしてしまうというストーリーで、若い女性の視聴者の中には、「絶対ありえん」と思われた方もいたようですが、世の中のおじさん世代には、大きな希望と在らぬ期待を抱かせました。

 また今年、大ブレークした芸人のずん飯尾さんなんかは、ドラマの枠を飛び越えて、『おじキュン』で大もてのようです。テレビ、CM業界も、そこに目を付けて、彼を至る所に引っ張り出しています。ボートレース、明治のチョコレート、総務省のマイナポイントと言えば、ああ、あの人かと分かるのではないでしょうか。どちらかというと、ちょっと冴えないあのおじさん(人のこと言えませんが)ですが、なんとなくホッとします。

 『おじキュン』というブームは、明らかにこれらのメディアが火付け役となっているのですが、どうもそれだけではなく、社会構造の変化が、徐々にそのような風潮を作っていると考えられます。

 女性が社会の中で仕事を持ち、活躍する機会が増えてくると、バブル期の男性社員どうしの出世争いと同じで、女性とか男性とかではなく、社内の同世代はすべてがライバルとなってきます。そうなると、友人であっても気が抜けなかったり、神経を使ったりと、ストレスもたまってくる。そんな時、ふと「癒やされたい」と思う心の拠り所に、ライバルとか、男性とかという意識をしなくて済むおじさん世代は、女性にとって、癒しの人間関係を築いてくれるとても重要な存在になるのです。

 そんな女性の社会心理を的確に表し、おじさんに胸がキュンとなるという意味で、『おじキュン』ということに繋がると考えて良さそうです。

 昔から『ファザコン』というのはあって、父親が大好き過ぎて、なかなか離れられなかったり、他の男性にも父親のような愛情を求めてしまうことはよくあることで、「○○ちゃん、誰と結婚する?」と幼い娘に訊くと、「パパっ!」という奴が、そのまま年頃になっても抜けられないというのがそれだが、『おじキュン』というのは、それとは違い、癒しの問題のようだ。

 「ローマ法王に米を食べさせた男」の著者で、石川県羽咋市で過疎の村の活性化に奔走したスーパー公務員、高野誠鮮氏と、ずいぶん前に一度、地域づくりに関する講演会でご一緒したことがあるが、彼が面白いことを言っていたのを思い出した。彼は、羽咋市で学生などの若い人を農家に泊ってもらい農業体験をしてもらう制度で「烏帽子親農家制度」というのを初めた。昔、元服において、烏帽子をかぶせ、盃を交わせば仮親となるしきたりをうまく活用したものだが、その時に彼は、第一号の体験者に、酒が飲める女子大生という条件付きで人を呼んだと言うのだ。 

 講演の後の質問時間で私が座長だったもので、なぜ、そんな限定をしたのかと訊いたところ、農家の親父さんからすると、男子学生は男だから、いろいろと面倒なことがあると、どうしても、オス同士で敵意がむき出しになってしまうというのだ。自分と比較して、足りないことがあると、どうしても文句をつけてしまう。その点、女の子だと、娘みたいに思えてきて、まぁ、許してやるかと思うらしい。確か、そんなことを言っていたと記憶している。実際、女子大生が農家に泊っている間は、毎夜宴会で、酒を酌み交わしていたそうです。

 女子大生の方も、夜遅くに酔っぱらってしか返ってこない口うるさい自分の父親に、「そんなことで嫁に行けるのか」、「そんなことでよく給料もらっているな」とか言われるよりは、真っ黒に日焼けした農家のおやじが、「そうか、そうか」、「よっしゃ、よっしゃ」と話を訊いてくれて、そのやさしさに心を動かされる。朝早くからの農作業体験では、ハウスの中で実るトマトの鮮やかさクラっとして、トマトの向こうにニコッとおやじが笑っているとイイ男に見える。恋愛感情抜きで、『おじキュン』してもおかしくはない。

 ここまで話して分かったと思うが、未婚のおじさんは決して、鼻の下を伸ばさないように。フィクションだからゴールインするハッピーエンドもあるが、これは、おじさんそのものに『キュン』しているのではなく、おじさんが作ってくれる環境に『キュン』しているのです。

 農村づくりにおいて、農家のおやじの存在はとても重要です。自分の住む地域に誇りを持ち、その文化を大切にし、農業のすばらしさを高らかに宣言するおやじは、別に女の子でなくても、男でも『キュン』する。農家民泊して、夜、飯を一緒に食べながら、おやじさんが村に伝わる怖い話をしたり、かあちゃんとの出会いを照れながら話したり、畑に熊が出てきて撃退した話は、癒しそのものではないが、自分とは違うエネルギーを感じて、生きる勇気が湧いてくる。

 おじさんは、適当に生きているように見えても、それまでの苦難の積み重ねが見え隠れする。そんな分厚い人生の座布団に座らされているような居心地の良さ。それがきっと癒しであり、それを『キュン』と言っても良いのではないだろうか。

 『おじキュン』されたいなら、下心はいけません。飾ってもいけません。巣のままを出しましょう。只、「農業はだめだ。この集落ももう終わりだ。山も荒れている。良いところはここらには何もない」と言われてキュンと感じる人はいない。現状がもしそうであったとしても、『おじキュン』されたいなら、「農業はやり方ひとつでいくらでも発展する夢のある仕事だ。集落は限界に近付いているけれど、まだ終わりじゃない。いくらでも挽回できる。山は荒れているけど、みんなが来てくれれば、山はいつでも生き返る準備してくれている。自然も文化も景観も、こんな豊かなところは他にはない」と言わないといけません。

 『おじキュン』してしまうようなおやじのいない農村なんて、住みたくないですからね。

※農家のお母さんの存在ももちろん重要ですが、それはまたいつかお話します。今日のところは農家のおやじの『おじキュン』が重要ということで。

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