皆既月食

 26日夜、皆既月食があることを知っていたにも関わらず、今回は天気が悪いと決めつけて、外に出て、見えるか見えないかの確認さえもしなかった。もしかして、雲の間から薄っすらと見えるのではないかとの期待もまったく持たなかった。なんとなく、歳とってから、天体ショーにほとんど興味がなくなってしまった。

 特に、今年はコロナ禍で、地上においてこれまでにない怪奇現象が起きているので、単に、月が地球の影に隠れるぐらい珍しくもなんともないだろうと、皆既月食そのものが、それほど心をひきつけるインパクトを持っていないような気がした。もちろん、これまでに月食は何回か見ているので、日食、それも金環日食でもない限り、見ようという気にならないということかもしれない。今回は、スーパームーンの皆既月食なのだから、庭先に出るぐらいはと思うが、これほどまでに天体の不思議に心が動かされなくなった自分が悲しい。

 私は、これでも、高校では3年間天文部に所属し、望遠鏡を抱え山に登り、夜を明かして天体観測に明け暮れる熱心な天文少年でした。地学全般が得意で、授業をあまりにもきれいにノートに整理していたので、卒業式で地学の先生が私のノートを所望されたほどだ。中学生の時は、天文部が無かったので写真部ではありましたが、昭和47年のジャコビニ流星群の時は、「ジャコビニ彗星が来るぞ、流星雨が降るぞ」と大騒ぎして、中間テストの勉強もそっちのけで、高台に住んでいた友達の家に泊まり込み、天体撮影に励んだものの、天気も良くなかったし、そもそも流星群も大外れで、現像した写真には光の一筋も写っていませんでした。

 あの期待外れが相当ショックだったため、当時抱いていた天文学者になりたいという夢は消え失せ、カール・セーガンの書籍は本棚から姿を消し、ハレー彗星がブームとなった昭和61年には、すでに農林水産省の職員になって数年が過ぎていました。それでも、まだ若かった。天文熱は冷めきってはおらず、転勤で九州にいたもので、望遠鏡観測の腕も落ちていましたが、一所懸命、彗星を探したのを覚えています。流行のチェッカーズの「Song For U.S.A」の♪彗星が海越えてゆくよ♪と口ずさんでは、よく肉眼で見えたもんだなぁと感心しながら、再びの期待外れの上に、彗星がただの汚れた雪の塊だということを知り、意気消沈してしまった。

 『若い』ということはすばらしい。様々な自然の現象に心がときめき、不思議を感じ、何かを解き明かしたいという欲望が沸き上がってくる。「ああ、また月食ね」なんて言葉は絶対に出ない。

 農村づくりは、農村に住む居住者が、農村の暮らしの中に、如何にして、この心のときめきを沸き立たせるかと言う問題でもあります。当研究会のホームページの農村づくり講座に「農村づくりの技法」という講座がありますが、その中でも、農村づくりは「関心」から始まるとしています。そして、その関心の発端は、自分自身の気づきが重要だが、それを若者であったり、ばか者であったり、よそ者が先導してくれる場合もあります。彼らは、農村に様々な不思議や違和感を発見する力を持っているからです。

 でも、もし、彼らがそういうものを発見して、「こんな面白いものが、不思議なものがありますよ」と言ってくれたとしても、住民自身が「いつものあれね」と、心ときめかせないのであれば、面白いものは面白くはならないし、不思議なものも不思議とはならない。他者の心のときめきだけでも、地域の活性化に繋がることもありますが、住民のときめきでないなら、持続的な真の農村づくりとはならないのです。

 「歳がいった」と、胡麻化してはいけない。「皆既月食なんて」と言って、ときめかない自分自身の不甲斐なさに悲しくなってきた。そんな心根で、読者の皆さんに、『農村づくりとは・・・』なんて知ったようなことを言う資格は無いのだろう。

 もし、息子たちが「皆既月食、見てみようよ」と言ってくれたら、庭先にまで足を運ぶかもしれない。孫はまだいないが、孫が、「おじいちゃん一緒に見ようよ」と言ってくれたら、押し入れから古い望遠鏡を出したかもしれない。周りに助けられながらでも良いので、いつまでも、「どれどれ、今回はどうなんだ」と関心を持つ姿勢を持ちたいものだと改めて思いました。

※ネギ坊主みたいな紫の花は、アリウムギガンチウム。これが終わると、次は紫陽花。梅雨は近いか。

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