地域資源管理による農村振興(1)

※この講座は、これまでの論文を組み替えて構成し直したもので、少し難解です。また、内容は農業農村整備事業を例にしてお話しています。

1.地域資源管理の考え方の変遷

 時代の変化、農政の変化とともに、現場で必要な技術の内容は徐々に細分化され、これまでと違った技術ニーズに対して、農業農村に関わる事業の姿も徐々に様変わりしている。これら事業の変化を順次見ていくと、興味あることに気づく。

 それは、事業変遷の中で、「地域資源管理」すなわち、地域の水と土地や環境等の基盤資源とそれを管理する人と制度のとらえ方も徐々に変化していることである。農業農村整備事業を例にとって、このことを簡単に図1に整理してみた。

図1 地域資源管理の扱いの変遷

 近代化のための基盤整備初期の時代は、地域資源を保全するという考え方は薄く、農業を支える条件整備のための資源管理が重要である。「かえる」や「どじょう」がいることよりも、水がしっかりとの農地に巡らされることが重要である。農業に直接的に関わらない資源を守ることよりも、農業という産業を支えることが第一であるという時代における資源管理は生産に関わる基盤施設の整備のことを指す。それから少し近代化が進んでくると、水質悪化や生物生息環境が問題となり、間接的に生産に関わる資源の保全をしながら農業を支える時代が来る。しかし、食料・農業・農村基本法の制定の時期になると、資源の単なる保全ではなく、資源の総量や配置や質を管理しながら、どう利用し、どう持続的保全をしていくのかを考えながら農業の条件整備をしていかなければならないという時代に突入する。そこで出てきたのが、農業を営むことによって発揮される機能である「多面的機能」である。地域資源を管理することが生産条件の整備と直接的に繋がり、それにより農業が支えられているという地域資源の扱い方が出てくるのである。これについても、初期段階は、生産機能以外の他の機能「他面的機能」が重要な位置づけとなる段階から始まり、そのうちに、地域資源管理を行わなければ農業が支えられない、生き物を守ったり、景観を守ったりすることは農業生産とは別の事象ではなく、そのことが農業を支えているという「ランドスケープ」としての地域資源のとらえ方が出来るようになってきて、「多面的機能」が高く位置付けられるようになった。現代はこの段階である。しかし今後、更に深く地域資源管理の在り方を考えると、実は地域資源管理は農業だけではなく、農業を含む様々な産業を担っているのではないかと、当たり前のことに改めて気づくことになる。地域資源の扱い方は更に変わって、農政の枠を飛び越えるのである。

 例えば、地域資源管理は基盤施設の保全と繋がるが、農業・農村に関わる基盤施設のストック・マネージメントだけでは立ち行かなくなる。それらの基盤施設は公共の道路、水路施設ともリンクしていて、防災対策などを考える上では、行政の縦割りの資源管理では全体のポテンシャルを保つことはできない。また、地域資源管理として、地域の文化システムや生態系守ることは、観光政策にもつながっており、それは総合産業を支える基盤の持続性の担保となる。政府の仕組みもそれに合わせて徐々に全体を取り仕切る内閣府の存在感が増すことになる。特に、東日本大震災を経験し、省庁間連携による総合的な施策の重要性が増したのだと思う。

 こう考えていくと、地域資源管理の本質は、農業だけとか農村だけとかではなく、あまねく農村住民の生活全体の安全と安心、農業と農村の関係性や社会システムの保持、農村と都市の関係性を健全化していくためにあると考えられる。

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