屋久島が豪雨に襲われました。ニュースでも言われているように、50年に一度の記録的な大雨だそうで、6時間雨量では観測史上1位となる379mmを観測し、時間100mm以上降ったところも多発したという。私も縄文杉を見に足を運んだことがあるので、あの辺りのことは少々知っていますが、あの斜面から水が噴き出しているような状況下で、孤立していた登山客314名を無事に下山させたことは大変すばらしい。県警をはじめ関係各位の活動に感謝するとともに、被災された皆様にはお見舞い申し上げます。

 実は若かりし頃の話ですが、私は佐賀の研究所にいる時に、造成農地の土砂流亡に関する研究をしていたことがあります。ある時、造成一年目の農地で、時間降雨量80mm、10分間降雨量50mmという雨を経験しました。時間降雨量100mm越えは、最近は頻繁にあるため、もしかしたら、80mmは序の口かもしれませんが、もう30年も前のことになので、当時は割と珍しかった方です。また、10分間降雨量50mmというのは、気象庁の統計には、未だにないものだと思います。私が研究用に設置したものなので、正式の記録とはなりませんが、前人未到の激しい短期時間降雨を経験したことになります。

 この時の詳しい内容はまたの別の機会にお話ししようと思いますが、とにかく、流れて来る水が長靴の下を抜け、足元から崩れ、逃げようにも逃げられず、周りの造成法面からは水が噴き出し、整備されたU字溝などは法面を転がり落ちてきて、唯々、農地の真ん中で立ち尽くすばかりで、生きた心地がしなかったのを憶えています。

 庭に1㎡高さ10cmの水槽を置いて置き、どこからも流れ出さないようにした時、これに1時間で一杯になる水量が時間100mmの降雨量ということになります。なんだ、そんなものかと思うでしょうが、これはとんでもない量です。一般的な一軒家が例えば30坪だったとすると、一坪3.3㎡で計算して、約100㎡が屋根だとすると、1時間で10㎥、重さにして10tonの水が頭の上に降り注いていることになります。これは1分でどれだけかと言うと、60で割れば良いのだから、たった一分で0.17㎥が屋根の上に溜まっていることになります。もちろん、現実には、降ると同時に屋根の傾斜を伝い、雨どいに集まり、排水溝へ流れ出るので、そのまま屋根に溜まっていることはありませんが、それでも、0.17㎥の水を10リットルのバケツで吐き出そうとすると、17回バケツで汲みださねばならない。一分間で17回は完全に腰がやられるレベルだろう。

 家庭用の数万円程度の排水ポンプを買ってきたとしても、1分間100リットル程度なので、0.17㎥だと2分かかる。吐き出すまでに次の0.17㎥が流れ込んで来ても、追いつかないのです。

 時間100mmの降雨量と言うのは、それほど恐ろしい雨量なのです。今回の屋久島の雨は、しかもその状態が6時間も続いたのだから、その不安は如何ほどであったかは言うまでもありません。

 気象庁のデータに、全国の1時間降水量80mm以上の年間発生回数について統計があったので、見てみますと、最近10年間(2009~2018年)の平均年間発生回数約23回は、統計期間の最初の10年間(1976~1985 年)の平均年間発生回数(約14回)と比べて約1.6倍に増加しているということです。

 公共インフラに頼り切った防災・減災では限界があります。何か自衛策も用意しておく必要があるでしょう。情報共有の強化による共助・自助のソフト対策も当然ですが、戸建ての雨水貯留などのハード的な自助も必要かもしれないし、水田ダムの活用に向けた水田地帯と居住地の防災型土地利用、冠水しない道路の選択など、地域一体的に防災・減災計画をしていく考え方が必要となるのではないだろうか。

※写真の集落で、住民の皆さんに「最も気に入って地域の景観は」と訊くと、「この深いコンクリートの水路の景観だ」と言います。この水路が整備されたことで、頻繁にあった洪水や水田の湛水被害がほとんどなくなったと言うのだ。

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