国立研究開発法人農研機構では、農業者の生産性を飛躍的に向上させるためのプロジェクトとして、ロボット、AI、IoT等を活用したスマート農業の実証実験を、急ピッチで進めています。

 昨日、今日始まったことではなく、スマート農業自体は、用語としては平成25年の「攻めの農林水産業」の中で取り上げられ、平成28年度の第5期科学技術基本計画が閣議決定され、Society5.0社会を目指した政策が動き始めると、農林水産業分野でのICT利用促進はますます加速し、「スマート農業」は誰でもが知っている用語となりました。

 スマート農業と言う用語はまだありませんでしたが、私が農林水産技術会議の研究調査官で本省に赴いた平成9年には、農林水産業の情報化に関する技術方向はそうとう見定められていて、現在の原型はおおよそ揃っていたように思います。

 すでに、情報化のプロジェクトも推進されており、軽労化技術として、農業機械のICT化と作業体系の革新に突入していく段階でした。私は、日本型プレシジョンファーミング(精密農業)のプロジェクトを立ち上げようと試みましたが、当時、大規模経営体が少ない日本では精密農業は必要無いと言われ、プロジェクトは採択されませんでした。そういうことを言われるだろうと予想はしていましたが、その時点で、無人トラクターの話もあったし、GISを活用してバラツキをなくす施肥技術やピンポイント農薬散布等のアイデアも出ていたので、日本には日本の精密農業はあるのだと思い、敢えて「日本型」と題したのですが、技術会議の幹部には通用しなかったようです。また、情報プロジェクトでは、AIということではなかったですが、すでに、農家の生産技術をデジタル知識化するエキスパートシステムにも挑戦していました。

 平成23年TBSの夢の扉で、無人トラクターで日本の農業を変えると野口伸先生が息巻いていたと思ったら、あれよあれよという間に、アベノミクスの農業改革の柱にのし上がり、第5期科学技術基本計画とも歩調を合わせ、28年からは内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)において、次世代農林水産業創造技術プログラムも立ち上がり、野口先生は内閣府のPD(議長)になられました。まだまだ、本来の夢の実現までには長い道のりはあるのでしょうが、とりあえず夢の扉は開いたという感じです。

 そして今、いよいよSIPで開発された技術群は実証段階に入り、その一つとして、先日、「スマート農業実証プロジェクト(ローカル5G)」において、委託先に北海道岩見沢市、山梨県山梨市、鹿児島県志布志市の3地区が選定されたと言うことだと思います。

 今回は、スマート農業の中でも、特に5G技術(第5世代移動通信システム:高速大容量、高信頼・低遅延通信、多数同時接続などの特徴を持つ技術)を活用した実証プログラムを行うこととなっています。

 岩見沢市では、水稲と小麦で、自動トラクター等の農機の遠隔監視制御による自動運転の実現に向けたローカル5G等の技術的条件及び利活用に関する調査検討を行い、また、山梨市では、高品質シャインマスカット生産のための匠の技の「見える化」技術の開発・実証を行い、志布志市では、ローカル5Gに基づく超高速・超低遅延による自動運転およびDroneによる圃場センシング・AIなど営農・栽培データ解析による摘採計画の最適化体系及びシェアリングの実証を行うらしい。

 スマート農業というだけではなく、総務省が、地域の様々な主体が自らの建物や敷地内でスポット的に柔軟にネットワークを構築できる第5世代移動通信システム(いわゆる「ローカル5G」)を創設したことから、これらも視野に入れた取り組みになっています。

 5Gについては、最近、テレビでジャニーズの嵐さんなんかもイメージアップの宣伝として、世界中の多くの人とつながってバーチャル大合唱をしていますし、ドラえもんの実写版というのかどうか分からないが、ブルースウィリスさんがドラえもんを演じている宣伝で、ドラえもんが「タケコプターあるよ」というと、スネ夫役が「5Gでいいんだって(十分だっての意味)」、すかさずのび太くん役が「ドラえもんの道具要らなくねぇ」と言うものだから、ドラえもんが不貞腐れて飛んで行ってしまう宣伝がとてもユニークで、印象に残ります。

 今日のポイントはここです。確かに、技術は日進月歩で、ドラえもんの道具が要らなくなるほど、次々と驚くものが出てきます。トラクターの進化一つを見ても、昨日、直進走行の運転をアシストする機能の開発をしていたかと思うと、今日は遠隔操作で走行するトラクターになり、明日には無人自立走行トラクターになり、さらに明後日には超高速走行で耕運したり、おそらく明々後日にはコンバインに応用され、一度で大面積を収穫ができるようになるのだろう。「刈り遅れがあるなぁ」と感慨に耽る間もなくなるかもしれない。

 特に、このローカル5Gというものは、ドコモやソフトバンクなどの5Gサービスとは異なり、個別事業単位での通信ネットワークを構築することができるので、スマート農業の実現に向けては大きな役割を果たすでしょう。しかし、現地実証というのは、経営まで含めて実証するのものだと思いますが、ローカル5Gは整備費がかなりかかると思うのですが、そんなに簡単に行くものなのでしょうか。総務省の旗振りかつ他省庁との横並びで、少し推し込まれたと言うのが実際のところではないのだろうか。確かに、無人トラクターの走行精度の問題などで、5Gに期待がかかることは分かるが、農業分野としては背伸びし過ぎのようにも見えます。

 最終的な着地点としては、民間キャリアの5Gサービスと連動していくのかも知れませんし、医療やエンターティメントでは、ローカル5Gサービスのビジネスモデルも成立すると思いますが、いくら大規模化が進むと言っても、農業経営でのビジネスモデル展開はかなり難しいのでは。

 どう明るい未来を創造しても、現実にするには北海道や東北の平野部でギリギリという感じです。技術開発は一歩も二歩も先までを開発するものであることは理解できますし、国の税金をかけた技術開発がチマチマした手元の技術開発に固執しては成らず、十年先を見据えたモデルでなければならないことは理解できます。でも、それは高度経済成長期における技術開発のあり方であるのではないでしょうか。今は、経済安定期、コロナ禍も加わり、低成長から後退にかかり、さらには、社会保障費等の増大による国家経費のひっ迫が予想される中、如何に成長戦略としての技術革新だとしても、農業分野ではできる限り半歩先程度の現実味のあるところを目指すのが肝要だと私は思うのですが。

 私の耳に入ってくる一般農家のスマート農業に対する意見は、いつも「小遣い程度でできるもの」で、「いつでも、どこでもできるもの」で、「商用ではない、身の丈にあったもの」です。

 国の研究よ。先を急ぐだけが研究なのか。「今そこにあるICT」をなんとか誰でも使えるようにしてほしいといのが本音なのですが。いかがでしょうか。

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