暮らしの知を地域活性化に繋げる(4)

4.地域づくりは住民参加が基本

 地方自治体の規模拡大や地方分権が進む中、地域間の格差はこれまで以上に拡大し、地域個性の消失が懸念されはじめました。そのような時代においては、地域に住まい、その場を自分の一部として生きている者どうしが、親密なコミュニティを形成することによって、自らの生産・生活空間の価値を再認識し、自らの負担と行動において地域空間の価値を向上させるような地域づくりの視点が重要となります。

 また、農村で発生している自然、文化、教育、福祉、防災等に関する様々な問題は、より多様化、複雑化しており、行政だけでは対応しきれなくなってきています。平成の大合併によって、行政のサービスが行き届かなくなっているというのもありますし、ひっ迫する地方行財政に対応して効率化を図っているというのも要因です。そうなると、地域環境を地域住民自らが様々な側面から見つめ直し、問題解決に取り組み、将来の子供たちへ誇りを持って渡していけるよう努力しなければならない時代、黙っていると誰も何もやってくれなく時代がやってきていると思います。

 きれいに手入れされた生垣や伝統的な農家住宅、水路沿いの花も、下草管理の行き届いた里山の山際も、普通に存在する美しい農村景観です。でも、これらの景観の美しさはあたりまえにそこにある訳ではないのです。住民ひとり一人が暮らしの知を以て、日々の暮らしの中で、地域の自然環境と文化をよく理解し、体感し、感性を持った行動によって導かれた結果によって保たれているのです。よって、社会的情勢の変化によって、外部からの圧力で美しい景観が壊されること以上に、地域景観を美しく設え、楽しみながら豊かに暮らしたいと言う住民の想いが無くなれば、美しい景観は保てないのです。

 そして、住民ひとり一人が、地域環境を保全・形成する意識を高め、地域の一員である誇りを持つことが重要であることに違いはありませんが、ひとり一人の環境に対する意識を高めるだけでなく、地域住民どうしが地域環境について相互に理解し、適正な合意の下に地域づくりを進める取り組みが必要となります。

 また、これまでの地域づくりでは、経済的な活性化を目的とするため、その活動は、農業従事者や世帯主が中心となっていました。しかし、地域環境が、そこに住むみんなのものであることを鑑み、環境保全・形成の持続的な展開に当たっては、農業従事者のみならず非農業者、子供から高齢者、女性等の幅広い層の地域住民が、地域社会の一員として主体的に行動し、問題意識を共有し、現状の分析と課題の認識を行うことが必要となってきます。さらに、都市住民やNPO等のボランティア支援組織等の農的に繋がっている関係者の参画も得て、それぞれの役割分担に応じ、自然環境との調和、地域文化の認知、空間的な調和のための基礎技術も感性的に学びながら、活動に楽しみや喜びを感じつつ、地域の将来の具体的な目標を検討していく効果的かつ効率的な取組みが重要となります。

 そのためには、活動が適切に行われるように、行政や専門家が、住民へわかりやすく情報を提供し、地域づくりの手法などについて技術的な支援を行っていくアプローチも必要となります。

 住民参加こそが、農村再生の糸口であり、地域づくりについての住民参加の促進は、環境に関係するすべての問題への気づきの機会を拡大させることになるでしょう。

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