ジュリー!後期高齢者ライブを一生懸命

 樹木希林さんが、テレビドラマ「寺内貫太郎一家」で、「ジュリぃ~~」と沢田研二の壁ポスターに向かって叫んでいたのが今も忘れられない。沢田研二というスターは、そんなファンの一途な押しパフォーマンスが実に自然でよく似合う本物のスターだ。彼に対する黄色い声は、グループサウンズ時代の失神に繋がるような叫びとは違って、心の奥底から絞り出す敬愛を込めた叫びであったように思います。

 「失神」と言うと、グループサウンズ時代は、ザ・タイガースも大好きだったが、オックスにも傾倒していたので、この二つのバンドの違いを私はよく知っているつもりです。歌の内容は、同じおませ少女のためのロマンチック系ポップス(少しロカビリーが残っている)ではありますが、タイガースが初恋前の揺れる恋心の曲が多いのに対して、オックスは初恋に入ってからの大人の恋を夢見る曲が多いみたいです。だから、オックスは歌詞に「キッス」や「指輪」が多いのが特徴で、ここは間違いなく少女には填まるところです。おそらくは究極の陶酔に導かれ、至っては失神に繋がるのでしょう。しかし、タイガースの曲は、「モナリザの微笑」も「僕のマリー」も「君だけに愛を」も、是非興味のある方は歌詞を紐解いて見て欲しい。何か、恋心の深いところを敢えて言わずに表現している感じがします。甘い低音から透明感ある高音までなだらかに歌い上げるジュリーの表現力がそう感じさせていたと思います。

 いやいや、そんなマニアックなグループサウンズの曲分析はどうでも良い。言いたいことは、あれから50年の歳月が経ち、今は紛れもなく、私はジュリー派、沢田研二の大ファンなのだと言うことです。

 先週6月25日、埼玉スーパーアリーナで、沢田研二 75歳の誕生日、LIVE 2022-2023「まだまだ一生懸命」ツアーファイナル バースデーライブ!」が開催されたので、妻と一緒に見に行きました。

 今回は、ドラマ「相棒」で小野田官房長官役、「ドクターX」では名医紹介所所長の晶(あきら)さん役のサリーこと岸部一徳さん(ベース)や、タローこと森本太郎さん(ギター)、ピーこと瞳みのるさん(パーカッション)のタイガースの当時のメンバー三人もスペシャルゲストで出演ということで、これは大変なライブになるのではないかと期待をしていた。

 当日は19000枚のチケットは完売で、スーパーアリーナは始まる前から、昔恋に恋していたおませさん少女達の熱気にあふれていました。妻もその仲間に入るのかどうかは少女時代に付き合っていないので定かではありませんが、周りには、明らかに私たち夫婦よりもお歳を召された昔少女の方々で埋まっていた。

 期待は裏切られない! 「シーサイド・バウンド」で始まり、「銀河のロマンス」、「花の首飾り」など、往年の名曲を7曲並べると、二部は「サムライ」、「ダーリン」、「勝手にしやがれ」、「危険な二人」と沢田研二のヒットナンバーを15曲、もちろん「TOKIO」も歌ったし、その後にテーマとなる新曲「LUCKY/一生懸命」を入れてきた。

 「いろいろとこれまであったけど、私たちが今こうしてここに生きていられるのは、ラッキーなことなのだ。奇跡と言っていいのだと歌い、まだまだこれから歳をとっていくけれど、老後は楽しみだ。まだまだくたばらない。毎日が自己ベストの更新で一生懸命がんばろうよ。みんながんばろうぜ」と歌い上げている。

 今回の沢田のMCは長く、タイガース時代のこともたくさん話していました。全部入れてほぼ3時間のライブ。私の席は結構後ろで、彼は豆粒みたいにしか見えなかったけど、今年一の非常に満足なステージだった。

 「後期高齢医療保険証が送られてきました。・・・後期高齢者になったけど、紙の保険証は無くさないで欲しい」と彼は言っていたが、その後、ステージを縦横無尽に何度も走り回る姿からは75歳、後期高齢者であることは想像できない。昔は「ジュリー」、今は「ジジィー」なんて自虐ネタでこれまでも笑いを取ったりするが、とんでもないジジイです。私は前期高齢者になったばかりだが、まったく別の生き物の10年違いに思えてくる。こっちは、「勝手にしやがれ」だって右腕は頭の上で揺らせないので、勝手にしてくれだし、「片手にピストル・・・」ったって、頬に沿わすだけでサムライにはなれない。背中に人生もあるのだかないのだかよく分からない。

 どうしたらあんなカッコいい男になれるのか、情けなくなってくる。でも彼は、「LUCKY/一生懸命」でこう言う。「一生懸命 ジジジ ジジジジ Oh.GG」と。

 後期高齢者に入られた全国の地域リーダーの皆さん。まだ自分の役割を諦めたらだめですよ。沢田がロック魂を以って、死ぬまで歌い切るように、我々も農村づくり魂を以って、死ぬまで活動したい。「老害」は要らぬところにまで出しゃばるからだめで、突っぱるところは突っぱっていくのは老害ではないのです。私もまだまだ「農村づくり!一生懸命」で生きます。 ※第77回毎日映画コンクールや第96回キネマ旬報ベスト・テンで主演男優賞に輝いた映画『土を喰らう十二ヵ月』も素晴らしい作品でした。是非、ご覧ください。

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