日和ってる奴いる?

 「日和ってる奴いる?」は漫画『東京リベンジャーズ』に登場する東京卍会の総長マイキーこと佐野万次郎の名セリフです。映画もすでに2本公開されていて、最近の若手イケメン俳優陣総出演みたいな映画で、クローズやHI&LOW以来の不良集団抗争系の物語です。只、ちょっとこれまでのと違うのは、タイムリープというSF要素が入っていて、主人公となる花垣武道(タケミチ)が過去現在を行ったり来たりしながら、恋人を助けたり、恩人が喧嘩で死なないように細工をしたりする痛快なストーリーです。

 でも、そんなストーリーはご存知ない方でも「日和ってる奴いる?」の台詞だけでおおよそどんな場面で出たかは分かると思います。ようするに暴走族仲間の喧嘩に出発するときの掛け声です。「東京卍会」にパーというメンバーがいて、そのパーの親友が対抗勢力の「愛美愛主(メビウス)」という組織に襲われたため、仇討ちに行こうというときに、総長のマイキーがみんなに声を掛けます。「東卍(こん中)にパーの親友(ダチ)やられてんのに、迷惑だって思ってる奴いる?」「パーのダチやられてんのに、愛美愛主に日和ってる奴いる?」「いねえよな!?」と。

 現実的には喧嘩もいかんだろうし、つるんで暴走もいかんでしょう。でも、漫画だから楽しく読める。これ映画では、NHK大河ドラマ「青天を衝け」で渋沢栄一、映画「KINGDOM」で秦の始皇帝の若き時代を演じているイケメン筆頭の吉沢亮さんがマイキーを演じていますが、義理人情に厚い童顔がなんとも言えずはまり役ですね。副長ドラケン役の山田祐貴さんも負けていないイケメンぶりで、そこにポンコツだけど優しいタケミチ役(マイキーの親友)を北村拓海が演じ、誰も悪い奴らだと思えないほどの男前が揃っている。

 いやいや、今日はイケメンの話でもなければ映画の紹介でもない。脱線し過ぎました。本題は、「日和ってる奴いる?」です。

 私は今、この言葉を自民党に向かって発したいのです。そして、一番日和っている岸田総理に言いたいのです。周りの議員、メディア、そして国民までも、その関係に日和りながら、任命責任のある政府役職議員を次から次へと辞めさせて、責任も取らないし、上辺だけの体裁に終始し、本質議論にも踏み込まない。日和った政府を運営しているとしか言いようがない。昨年暮れに発覚した政治資金パーティーのキックバック問題については、国民の多くが連日のニュースを見て、「自分たちはちょっと税金の申告を間違っていても税務署にめっちゃ怒られて、有無を言えずに罰金なのに、政治家の事務所はなんだよ、間違っていましたで済まされるのかよ」、「そして、会計責任者だけが処分されて、議員本人は認識していなかったで終わりかよ」と思っておられるでしょう。東京地検特捜部は、とりあえず、安倍派は6億7503万円、二階派は2億6460万円のパーティー収入などを派閥の政治資金収支報告書に収入として記載していなかったなどとして、政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で両派の会計責任者を在宅起訴、また岸田派についても、3059万円のパーティー収入などを派閥の政治資金収支報告書に収入として記載していなかったとして、会計責任者を罰金刑の略式起訴したものの、結局その指示者である大ボス、中ボス軍団にはメスを入れられず、地検に対しても「おめえら日和ってんじゃねえよ」と言いたくなりますよね。

 「ひよる(日和る)」とは、「怖じ気づく・尻込みする・弱腰になる・ビビる(萎縮する)」などの意味で用いられる表現で、現代の若者言葉ですが、元々は「日和見(ひよりみ)」という言葉から来ています。本来は自分に都合の良い方へつこうと、形勢をうかがう態度をとることで、どちらも元の意味は「傍観するだけで関わらない」ことです。怖じ気づいているから関わらないし、弱腰になっていて形勢を窺っている。とても卑怯な態度です。最初に名乗り出た議員もいたようですが、おそらく多くは、未だに日和っているのでしょう。そろそろ、話題も終息するだろうと。

 派閥の良し悪し問題なんかで終止符を打たれたんじゃ溜まったものではない。問題の根源としては政治資金の透明性をどう担保するかが問題なのですが、どうも今回も、一先ず謝って、それを引き起こした原因を派閥問題に集中させて、派閥解散でシャンシャンである。そして、地検も一緒にシャンシャンである。派閥解散は政治屋にとっては大決断なのかというとそうでもないはず、何故なら、考え方なり政策の方向性がある程度一つの方向に整理されれば、解散してもまた集まって来るのが政策づくりの仕組みだし、まとめるのが政治屋の役割だし、更にパーティー券が無くなったとしても、利害を求める企業側も関係する政治家になんらかの便宜を頼みたいことはあるので、無くなりはしないと高を括っているようです。薄笑いをしながらの泣きの派閥解散劇だけが執り行われたに過ぎないと私は見ています。だから、問題はそこには無いということです。

 地検特捜部も特捜部である。派閥の幹部との共謀が認められないから立件できないという結論で終わるのなら、最初の「しんぶん赤旗」の報道や大学教授が告発状を提出したレベルとあんまり変わらない気がする。さっそうと段ボール抱えて事務所に入って行くところはテレビドラマで見るのと似ているが、ドラマなら日和らずに執念で起訴まで持ち込み、格好いいが、現実の出口はかなり格好悪い。まぁ、法律の専門家たちがその範囲で動いていての結論だから、私たち下々はしかたないと言うしかないのだろうが、なんとなく切れが悪い。マイキーの「日和ってる奴いる? いねえよな」がジーンと来るのです。

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