『エシカル』ってなんだ

 農林水産省と消費者庁と環境省が連携する「あふの環(わ)2030プロジェクト~食と農林水産業のサステナビリティを考える~」という取組が始まった。

 これは、2030年のSDGs達成を目指し、次の世代も豊かに暮らせる未来を創るべく立ち上げられたプロジェクトである。どんな活動なのか知りたくて、農林水産省のホームページで『あふの環プロジェクト』を調べると、初っ端にこんな言葉があった。

 「スペンドシフト~サステナブルを日常に、エシカルを当たり前に!~」を合言葉に、 生産から消費までのステークホルダーの連携を促進し、食料や農林水産業に係る持続的な生産消費を達成することを目指します。

 英語に弱く、勉強していない私が悪いのだろうか。私が一瞬に頭に描いた訳は『消費(スベンド)は変わる(シフト)~持続的(サステナブル)生活のためにエゾシカ(エシカル)を食べよう~』実は、恥ずかしいので、明かしたくないのだが、「スベンドシフト」もすぐには解せず、「スペードシフト」と読み、トランプの切り札の配置なのかと思ってしまった。

 最近、テレビでニュースを聞いていると、なんだか聞きづらい。特にコロナ関係などは、内容がわからないほど聞きづらい時がある。

 「パンデミック、クラスター、オーバーシュート、ソーシャルディスタンス」と次から次へと英語のままのカタカナ読みが使われるので、英語力のない私なんぞは、それって何だっけと一旦立ち止まって考えなくてはならなくなってしまう。特に、女帝の百合子さんは、カイロ大学出身で、アラビア語がお得意だと思っていたが、どうも英語も堪能なようで、使わなくて良いところまで英語で攻めてくる。

 「都民ファースト、サスティナブル」辺りはよろしいでしょう。「ウイズコロナ」、これもなんとかまだわかる。「ワイズ・スペンディング、アウフヘーベン(これはドイツ語)」と来ると、もうさっぱりわからない。

 さて、ここまでに出てきたカタカナ、読者の皆さん、クイズ番組みたいに、「日本語で答えよ」と言われて、ポンッポンッポンッと答えられますか。私は無理です。

 単語一つ一つ確認するのも大変なのに、これが、テレビで1分間300文字のスピードの口語の中に紛れ込んでいると、話の内容も分からなくなってきます。

 昔、年老いた母が、テレビで歌謡曲を聞いていて、途中に英語が入って、また日本語に戻ると、あれ、いつのまに日本語に戻っていたんだろうと、考えている内に、また英語が挟まれて、結局はオゥオゥとか、イェイイェイだけしか分からなくなると言っていた。で、昭和の歌謡を聞くと安心するんだそうだ。全部言葉が聞き取れるからだ。

 年寄は多かれ少なかれこういうことはあるとして、しかたないとしよう。それでは、若者たちは、このカタカナ英語をしっかりと把握しているのだろうかと思い、クイズ番組の「日本語で答えよ」を見ていると、どうも、若者もそうなんでも分かっているということではなさそうだ。東大王とか高校生クイズみたいな、偏差値の高い若者たちのクイズでの回答は別格として、高学歴若手芸能人は、現役高校生、大学生とそれほど歳も離れていないので、全問正解するのかなと思いきや、結構間違えているというか、言葉を知らない。

 池上彰さんは、情報弱者用にニュースの解説をしてくれているが、こりゃ、高齢化社会が進むと、プラス年寄り向けのニュースの解説もしてくれないといけなくなる。

 「都民ファースト」は「都民の皆様を第一に考えます」で良くないか。「ウィズコロナ」は「コロナと共に生活しましょう」で良くないか。「ワイズ・スペンディング」などは、「賢く税金を支出することが大切です」と具体的に説明された方が分かりやすい。

 女帝は、キーワード連発して、もしかして流行語大賞を狙っているのだろうか。

 さて、そうは言うものの、寧ろカタカナで表現した方が良い言葉もあることは事実だ。「サスティナブル」とか「アイデンティティ」とかである。先日、私の投稿で使った「テロワール」もその一つかもしれない。「サスティナブル」は「持続可能な」と一般的には訳されているが、持続の中身が地球環境を指していて、環境への配慮、優しい生活、相互理解、長く続く社会という意味合いがすべて含まれているように思うので、「サスティナブルな社会を創る」と表現した時に、単に「持続可能な社会を創る」と訳すと意味が中途半端になるように思う。同じように、「アイデンティティ」というのも、正式訳語である「自己同一性」なんて訳すとますます分からなくなる。かといって、「個性」とまで訳すと、違訳のようにも思う。「その物、その場所であること、その人自身であること、それを表す独自性」と言う訳が良いと思うが、日本語で、この訳を入れながら言葉にすると、これまた訳が分からなくなる。こういう、多くの意味を含む言葉、本来の日本語での意味が説明しにくいものはカタカナで良いし、我々は、歳を取ろうが、若かろうが向上心を持って勉強するしかないだろう。でも、それ以外は無理に訳する必要はないのではないかと思う。

 『あふの環プロジェクト』は、今後、プロジェクトメンバー62社(7月末まで)と農林水産省、消費者庁、環境省が連携して、勉強会・交流会(定期的に開催)、持続可能な消費を盛り上げるサステナウィーク、サステナブルな取組を表彰するサステナアワード(令和3年2月予定)等を通じ、持続可能な食と農林水産業の生産・消費を促進していくらしい。とても大切な活動だ。キャッチも大切かもしれないけど、問題は中身。関係者だけで恰好つけてやるのではなく、誰でもが分かりやすい活動にしてもらいたいものです。

 ところで、「エシカル」とはどう訳すのか。これは、「法律ではなく、みんなが正しいと思っていること、倫理的な」という意味で、『エシカルを当たり前に』というんだから、自然を敬い、環境にやさしく、思いやりのある社会を当たり前にぐらいかなのかな。

※「SDGs」は持続可能な開発目標の略称であり、2015年9月に国連で開かれたサミットの中で世界のリーダーによって決められた、国際社会共通の目標です。

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