ChatGPT(チャトジーピーティー)を使って見た(1)

 先日、情報サービス大手の「リクルート」の研究機関が日本のGDPの将来予想と、性別や世代別の働く人の割合などの見通しから『企業などで働く担い手の不足は2040年には全国で1100万人余りにのぼる』という結果を出したことが報道された。東京以外のすべての道府県で不足するらしく、不足率が20%を超える地域は18の道府県に及ぶらしい。と言うことは、益々、東京一極集中が進むということでもあり、地方と東京の格差はいつになっても解消しないのではないかと思える。

 10年以上前に、農村部の高齢化の急激な進展に対して、私は、「高齢者は健康年齢をできる限り向上させ、身体が動く限り地域内でやれる仕事は担った方が良いだろう」と言ったことがある。草刈りも高齢者ができるところを敢えて残すとか、地域の子供の見守りも高齢者が交代でしてもらうのも良い。散歩するなら、只のんびりと歩くだけじゃなく、センサー担いで集落内を動き廻れば、環境調査にも貢献できるし、脳機能の維持のためにも、パソコンも少し覚えて、多面活動や集落活動の事務運営にも積極的に参画すべきだなんてことを言ってきた。

 しかし、その当時は、高齢者はこれまで長く働き、社会に貢献してきたのだから、やっぱり、旅行をしたり、趣味を広げて、楽しく過ごした方が良いだろうとの思いもあり、冗談半分の発言であったが、今回の調査の内容からすると、冗談抜きで、高齢者はもっと働くことになるかも知れない。

 おそらくは、ロボットやAI(人工知能)がどこまで補ってくれるのか、若い世代の趣味仕事を含む多地点副業がどこまで広がり定着するのか、高齢者の健康年齢がどこまで上がるのかの3つのバランスで1100万人をどこまで縮めるかということになるのだろう。後者2つは生活スタイルや社会情勢とも絡んでくるので、なかなか難しい課題であるが、案外スイスイと進むのはロボットとAIの活用であるだろう。

 直ぐに思いつくのは、車の運転がすべてAIとロボットで出来てしまうなら、とりあえずドライバーはなんとか人と代われるのではないだろうかということである。すでに日産自動車ではキムタクの「やっちゃえ!ニッサン」のCMが印象的な手放し運転機能が出来ているし、ドローンによる物流革命も起こりつつあり、中山間地域などへの無人ドローン配達の実験も進んでいる。農業についても、無人トラクターや無人播種機なども開発されつつあるので、この辺りは期待されるのではないだろうか。

 AIの活用については、人類への深刻な問題を含んでいるため、手放しで崇拝する訳にはいかないが、ここでは2回に渡って、最近流行のChatGPT (チャットジーピーティー)について活用事例を挙げながら、その可能性と問題点に少し触れてみたい。

 さて、ChatGPTについては、最近読者の皆様も新聞等で見られて、「なんじゃ、そんなものがあるんか」といった感じでしょう。でも、おそらくは、まだ自分の仕事とは関係ないという捉え方ではないかと思います。Chat GPTとは、自然言語処理技術を用いた人工知能で、OpenAIによって開発されたチャットロボットです。GPTはGenerative Pre-trained Transformerのことで、直訳すると「生成可能な事前学習済み変換器」となります。

 大量の文章データを学習しているため、そのデータから自然で高度な回答を導くことができます。簡単に言うと、会話形式(Chat:チャット)で質問すれば、それに対する回答を人間と話しているみたいに返してくるというものです。言われたことに対して機能としてデータを検索するShiri(シリー)などとは異なり、何を聞きたいのかを理解して(いるかのように)回答してくるのが特徴です。また、会話をするごとに学習が深まっていき、パーソナライズされた検索が可能となります。但し、元々の学習情報には間違ったものもあるため、それをそのまま回答してきた場合は、「嘘つきだ」ということにもなります。

 名前は前から知っていましたが、「どうせ、たいした仕事はしないだろう」とたかを括っていましたが、何やら知らないでは済まされないぞと思い、使って見ることにしました。Web上で使えるので、インストールも何も必要ありません。サブスクの契約でログインできれば、その日から使えます。(※無料版もあります)

 最初に、知識そのものはどれほどの実力なんだろうかと気になったので、「農業の多面的機能を維持するためにはどうしたら良いか」と質問してみました。そうすると、1分程度で次のような回答が返ってきました。

 文章的には気になるところもありますが、それなりに書けています。驚いたのは、「環境に配慮した農業生産の実践」、「農業と自然・景観の共生」、「地域の文化・伝統の継承」、「地域住民との協働」と4つの軸で整理している点です。何度か同じような質問を繰り返すと、少しずつ異なる文章で回答してきましたが、なんとなく物足りなさを感じるものの、テストの回答ならまぁ80点ぐらいにはなりそうです。

 これは知識の質問ですし、多面的機能は情報量も多いのでなんとかなるのだろうが、それじゃあ概念的な質問にはどう返答して来るだろうかと、次に、「農村づくりとは何か」と質問してみた。すると、これまたお手本みたいな回答が返ってきました。

 私が回答するなら、「住民の地域社会と環境に対する認知機能の向上」なんてのを入れたいものだが、テストの回答としては、それは寧ろマニアックな回答で、ChatGPTの回答の方が点数は良いだろう。あまりにも優等生で、癪に障ったので、これならどうだと、「日本の農業、少子高齢化、農業の多面的な機能を使って話をひとつ創作する」と質問した。

 ちょっと考え込んでいたが、しばらくすると、「昔々・・・」から始まる文章が返ってきた。恐れ入りました。なんと多面的な機能は、日本の山深い地域に住む老夫婦のアイデアであったという物語になっている。おそらく、「日本の農業」というキーワードから「山深い地域」を舞台とし、「少子高齢化」というキーワードから「老夫婦」しかいない地域で多面的機能が関係人口の拡大に努め、最後は活性化したという話にしたのでしょう。この思考方法は実に興味深い。質問の仕方やキーワードを変えれば、話は違ってくるのだろうが、ChatGPTは創作もできるということがはっきりした。

 そして、ここまで試してみたところで、やっぱり、将来的な人類とAIとの付き合いについてはしっかり考えておかないと恐ろしいなと思ってきました。

 ターミネーターという映画は皆さんよくご存じだと思います。人工知能スカイネットが人類を地球存続に必要のない存在と判断し、核戦争を引き起こそうとするものを人類が阻止する闘いを描いた映画です。今回、ChatGPTを使っている内に、何かあの話がSFからものすごく身近に感じ、本当に起こりうるものだと確信しました。

 そうは言っても、使えるものは使いたいということもあって、次回はChatGPTの実際の身近な仕事への活用やこれからの課題について考えてみたいと思います。

※アイストップの写真は山形市内の国指定史跡山形城跡「霞城公園」の桜だ。満開の中の満という咲き方であった。東北大学農学博士で、3月末まで山形大学にいらっしゃった村松真先生に案内していただき、東大手門からの写真を撮った。

関連記事

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。