住み方改革

 3月11日、東日本大震災から14年が経ちました。亡くなられた方々に鎮魂の祈りを捧げます。その地震の時に、津波で大きな被害を出した岩手県大船渡市では、先月2月25日より、大規模山林火災が発生しました。現役時代に、大船渡市吉浜地区の復旧・復興計画策定に当たって、いくばかりかの農村計画の専門的知見を提供させていただいた一人としては、テレビで見る場所はどこもよく知っている場所なので、毎日、「もうこれ以上広がるな、早く鎮火してくれ」と祈っておりましたが、3月10日にようやく避難指示の全てが解除され、とりあえず安堵致しました。出火から12日目の鎮圧までの焼失面積は約2900ヘクタール、人的被害は死者1人、建物被害は210棟に上ったようで、この火災は平成以降、国内の林野火災で最大ということです。ニュースなどを見ていると、津波で家を失った方で、ようやく再建をして落ち着いた生活が戻りつつあったところに、今回の火災で、再度家を無くされた方もいたようで、もう、なんと言ったらお悔やみの言葉になるのかもわかりません。被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。そして、たいへんだとは思いますが、一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。

 今回、現地に行って直接見た訳ではありませんが、情報を見るところでは、減災におけるソフト的な対策については、かなり完璧だったのではないかと思います。避難指示も的確ですし、消防組織も自治消防も極限まで効率的に動いていることは、ニュースから伝わってきました。連携マニュアルの整備も進み、おそらく、国、県、市、市民、ボランティアの連携や内閣府、総務省、気象庁、国交省、農水省、厚生省などの各分野の連携もうまく行ったのではないかと思います。

 今後、これらのソフト対策の評価については、専門家によって検証が行われ、次の災害に備えて更なる改善が施されることと思いますが、今日は私、ここでちょっと無茶苦茶なことを言わせてもらおうと思います。なんの根拠もないことを言います。たいへんいい加減な考察に基づいた意見ですので、途中でばからしくなったら読むのを止めて頂いても良いと思います。

 本日、私が言いたいことは、現在のハード対策とソフト対策は頭打ちになっていて、昨今の異常気象や多発する地震への災害対応としては限界があるので、次の一手が必要ではないかということです。ハード対策としては、地震、津波、洪水対策として、建築物の耐震、耐火の推進、強靭なダムや河川堤防の築堤、代替道路整備等などがあり、多額の費用を投じながら少しずつ前進していると思われます。只これは、人間活動に追い付いていないし、逆に老朽化が追いかけて来て、後退せざるを得ない部分もあります。また、ソフト対策では、ハザードマップの整備、避難計画策定の徹底、防災まちづくりの推進、最近ではICT等の活用による正確な情報の提供などで命を守ることを優先した自主活動が進んで参りました。これらの対策は、それなりに効果を出していますが、一つどうしても変えられていない部分があります。それは土地利用と住み方・生き方そのものを変えてしまうことではないでしょうか。

 今の住み方では、住みたい場所に住んでいますから、災害リスクの高い地殻、地形条件の上で生活して行かなければなりません。もちろん、リスクはあっても、そこはリスク以上に有益な土地であり、文化継承の土地であるから住んでいるのですが、如何にご先祖様の守って来た土地で、景色が良くて、水が美味しくて、生き物が多様に生息していても、その土地に、毎年洪水が来て、3年毎に豪雪で動けなくなり、5年に一回大山火事になり、10年もしない内に地震があるのなら、そこは果たして生活拠点として守るべき土地なのかということを再度検討し、地区内でのより低い災害リスクの土地への移動も考えねばならないということです。これは実に乱暴な意見です。人に寄り添っていないことも承知しています。住んでいる人がいるからこそ、その土地が守られていることもよく理解しているつもりです。

 でも、新しい時代の到来に対応した新しい考え方もなければなりません。考えてみれば、道路や鉄道網がこれだけ発達し、通信網も完備された時代に、何故に、一所で一国一城の主みたいに自分の家を守っていかなければならないのだろうか、元規模の邸宅を建てねばならないのだろうかと言うことです。それも、リスクの重なる土地にです。農家だって、漁師だって、仕事場である農地や沿岸に作業場さえあれば、帰る家は都市機能集中拠点の高層耐震・耐火タワーマンションであっても良いのではないか。小さな地方都市なら、数棟建てれば十分。そうすれば、地域みんなの安全・安心な居住が確保される上、仕事も継続できます。もちろん、前よりは不便になることは確かだし、じいちゃん、ばあちゃんが、「落ち着かん」、「お墓へ直ぐ行けん」と嘆くかもしれませんが、病院は近くなるし、免許を返上したって仲間がすぐに集まれます。温泉でも整備しておくのも良いかもしれません。役場は下層階に設けておけば、水道、電気、ガスなどの集中管理もやり易くなるだろうし、経費節減にも繋がります。農協も漁協も郵便局も商店街も全部タワーマンション内に集めれば良い。

 また、都市住民は何故に東京にずっと留まるのだろうか。複数地方拠点居住生活を送るようにして、好きな地方都市に住めばよい。副業型生活の地方での人材確保ともなりますし、地域コミュニティの維持にも貢献できます。そして、大都会の必要のないインフラ整備をストップし、それを地方都市の複数拠点居住のための整備に当てたら良いのではないだろうか。何をやれば良いかというと、政府主導で、もっと大胆な住み方改革をやるのです。各地域毎に都市機能集中拠点と安全・安心居住拠点の整備をして、集団移転を推進し、リスクの高い場所には住まないで、作業場所と文化拠点や都市からの移転者の居住場所だけをリスクの高い土地に残るようにすることであろう。移転を強要すれば、憲法22条の引っ越しの自由に抵触してしまいますが、そもそも何もないところに住むことはできないのだから、災害リスクの高い所は住めなくすれば良い。乱暴ではあるが、なんらかのやり方はありそうです。災害の度に復興のための政府予算を充填するよりは長期的には経済的な感じもします。そうそう、都市での自社ビルなんていう考え方も考え直した方が良い。データがクラウドにあって、作業場所が確保できたなら、後は集まったところがどこでも会社で十分ではないだろうか。

 戦争になれば、機能集中拠点は一発のミサイルで住めなくなるかも知れないので、そのリスクに対応して、地方都市の人も複数拠点居住も考えると良いだろうし、ICT化が進んでいくと、首都としての行政手続きや経済機能もやがて分散していくだろうから、47都府県がバランスを持って得意分野を受け持って、互いに補完すれば良いだけではないか。人口減少下において、廃屋問題ももっと表面化していくだろうから、その対策にも一人が2、3軒持っておくのも良い。基本は所有者の維持管理とはなるが、こう言うところに国庫補助が入ればよい。 今回は無茶苦茶なことを言ってしまいましたが、異常気象や多発する地震、キナ臭い世界情勢に対応して、大きな住み方思想の変換を図らねばならない時代にもう突入しているような気がしてならないのです。

※復旧・復興の繰り返しは続き、同じ場所に同じ景観が蘇って、心の安寧は取り戻せるが、また、災害と対峙せねばならなくなる。

関連記事

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。