備えあっても憂いあり

 東日本大震災から10年が経ちました。大切な方を亡くされた方、愛するふるさとに戻りたくても戻れない方、被災された多くの皆様におかれましては、心痛める日々であったと思います。皆様の絶え間ない努力により、復旧・復興は一歩一歩進んではいますが、まだ道半ば、10年は決してひと昔と言えないことを切々と感じます。当時私も、復旧・復興に携わる一人の技術者として現地に入りました。陸前高田市や山田町の海岸沿いに立った時のことを忘れることができません。目を閉じれば、瞼の裏にあの時の光景は鮮明に蘇り、亡くしたものの大きさを思い返し、未だ戸惑うばかりです。心より、お悔やみとお見舞いを申し上げるとともに、一日も早い復興をお祈り申し上げます。

 前回の「言わせてもらえば」では、行政の防災情報の伝え方なり、それを元にした新たな防災意識啓発のための取り組みが、地域住民に真に理解されていないのではないかと指摘させていただき、サイエンスコミュニケーションの促進が重要であると述べました。

 致し方ない面もあるのですが、行政が出す情報というものは、上から下に一律的になるものが多いように思います。よって、一住民として情報を見た時に、何か遠い世界で議論されていることで、自分たちにはそれほど関係ないのではないだろうかと思ってしまいます。テレビや新聞などのメディアを通して、政府の動きは掴めますが、なかなか自分たちの生活に落とそうとすると、理解しにくいことが多い。コロナにおける支援金や給付金のような生活に直結したものでさえ、結局は、その制度の細かいことは国や都道府県の出先や市町村役所・役場の窓口に聞くことになります。

 国から広報される情報は、政策方針決定の報告、海外協議の成り行き、災害や鳥インフルエンザ等に関わる情報、不祥事の報告まで、農業者や食品業界にとって、どれも有用ではありますし、毎日チェックを欠かさない人もいらっしゃるとは思いますが、おそらくは、読んで直ぐに、我事感とするのは難しいものが多いでしょう。しかし、一市民、一住民がそのまま使える情報を国がまったく出していない訳ではありません。農林水産省のホームページの報道発表を見ると、時折、そのまま私たちに役に立つ情報が出ていることがあります。1月27日に公表された、「自然災害等のリスクに備えるためのチェックリスト」と「農業版BCP(事業継続計画書)」などは、農業者の皆様に直接有用な情報と言えます。

 災害による農林水産関係の被害額の低減に向けて、農業者が自然災害等への備えに取り組みやすくするために、災害リスク対応のフォーマットを国が自ら作ったということです。政府の目論見は、利用率の低いMAFFアプリの普及と農業保険への加入にあるようですが、内容を細かく見ますと、農業事業者が災害時対応を考える基本情報になっているようです。興味ある方は是非チェックしてみてほしい。

 私も、これに刺激を受けて、それなら、農村づくり・ICT支援研究会として、地域や集落の被害軽減のためのチェックリストを作ってみようと思い、いくつか調べてみました。全国の自治体はほぼすべて事業継続計画を策定していますし、集落基本台帳などの整備は進んでいます。しかし、農村集落の昔ながらの互助活動はあるものの、災害対策を体系的に検討するための計画書を準備しているところはまだ少ないようです。日常的な集落のコミュニティ力が低下している中で、自助では対応できないものも多いので、自治体に任せるしかないということかもしれません。しかし、本来、集落のコミュニティは非常時にこそ機能しなければならないものだと思います。再度、集落コミュティの強化・復活のためにも、今一度、集落としての防災対策を練ってもらいたいと思います。

 作成したチェックリストは、『集落自治組織において災害対策で検討すべきチェックリスト』と名付けましたが、これは、いくつかの自治体にあった災害時の自治活動のチェックリスト事例をベースにして、東日本大震災復旧・復興研究会「現場知」研究グループが2018年3月に作成した『「現場知に学ぶ」農業・農村震災対応ガイドブック2018』の内容を盛り込んで、会長の私が自主的に作ったものです。よって、粗々過ぎて使えないと思われるかもしれませんし、逆に、集落ではここまでやらなくてもいいだろうと思われるかもしれません。女性の視点ももっと入れないといけないでしょう。でも、それでいいのです。こと防災については、「備えあっても憂いあり」ぐらいが丁度いいのです。何よりも、自分たちで意識してみる、考えてみるということが大切です。

 Excelで作っており、ダウンロードもでき、自己評価もできるようにしましたので、皆様の参考になれば幸いです。

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