多面活動もっと情報発信を

 先日の日曜日、東京都内にコンサートを観に行った帰りに、妻と二人で居酒屋に立ち寄った。もう夜遅い時間だったので、どこでもいいやと新橋駅近くで店に飛び込んだところ、若い人が一杯で賑わっていました。直ぐに店員さんがテーブルに来てくれましたが、テーブル毎に、自分のスマホでQRコードを読み込んでメニューオーダーに繋げるタイプの店で、店員は最初の一杯目のお酒のオーダーだけ取って、後は「システムご存知ですか。こちらからよろしく」とだけ言って、テーブルに立てかけたQRコードを指さしながら、料理や酒を運ぶため急いで去って行った。人がそもそも足りないのでしょう。料理を運ぶだけで精一杯のようです。

 最近多くなったセルフスマホオーダーという奴で、やり方は分かってはいるものの、まだまだ接客によるオーダーに安心感がある世代なもので、面倒だなぁと思いながら繋げてみた。以前友人と行った店では、アプリのデザインが悪く、なかなか食べたいメニューに辿り着かず、最終的に店員さんを呼んで、このメニューどこに載っているのと聞いたりして、システム導入による効果を削いでしまった。しかし、今回のアプリは結構洗練されていて、メニューは選びやすかったので、なんなくササっとオーダーをして、ササっと食って、ササっとスマホ会計して、つくばに戻った。代金支払いまでスマホでOKなので、店員と声を交わしたのは、最初の「システムご存知ですか。こちらからよろしく」、「角ハイ2杯」と帰りの「ありがとうございました」、「ごちそうさん」だけだった。人不足に対応し、労費を抑えて、経営を楽にするという点からは、このシステム導入の意味はよく分かるのですが、なんだか無味乾燥ですね。「何がお薦めなの?」とか「美味しいからもう一つ追加!」なんて言えない雰囲気です。

 ICT化を進めることで、省力化、軽労化が図れると言いますが、導入によって、逆に対人コミュニケーションの促進に繋げることが本当は重要だろうと思うのです。これまでの対人関係以上のコミュニティに発展させる要素としてICT導入があっても良いと思うのです。

 これにピタッと当てはまるのが、多面的機能支払制度において国が活動指針及び活動要件として定めている『広報活動・農的関係人口の拡大』です。この活動は多面的機能の増進を図るもので、任意の実施なので、この項目を計画に選択している地区はまだあまり多くないとは思いますが、是非、活動促進を図るために、ICT、SNSやスマホの活用を検討していただきたいと思います。

 都市部の人たちは、農村の水路や農地の維持管理を農家がやっているのは、農業がやりにくくなるからで、農村地域を守るためだろうぐらいにしか理解していません。自分たちのお金儲け(農業生産)のための資産管理なのだから自分たちのお金で賄えよと言いたいのです。農地や水路を守り、多面的機能が維持できることで都市が守られているなんて実感できていないのです。だから、どうしてそんな農村だけに税金をばら撒くのかみたいな議論となってしまうのです。

 農村部も農村部で、直払いは農地や施設維持に使いやすい金だなということで、我が農村のコミュニティが促進されれば、役割は果たしているぐらいにしか考えていない場合もあります。だから、地域内のコミュニティの促進には積極的だが、外へ情報を発信していくことは億劫がるように思います。ここに情報発信の大問題が存在するのです。

 農村地域の人たちが日頃からどんな活動をしているのかをリアルタイムで世界、日本、都道府県という外部へ発信するとともに、更に内部の情報共有として自分たちの地域へ発信し、それぞれの段階でコミュニケーションを広げ、コミュニティを促進していくことを考えるべきでしょう。

 こういうことを言うと、直ぐに噛みついて来る人もいる。「そんなに広げて情報発信したからと言って、なんの役に立つんだ!」とか「誰もそんなもの見ないだろう」という。役に立つとか立たないとかではないし、直ぐに何か効果を生むとか生まないというものでもない。大切なのは、自分たちが胸を張って、国民に、特に都市部の人たちに、「農村は都市の防人である」と言えることと活動記録の積み重ねです。

 都道府県においては、地域資源の保全活動に関する普及・啓発のため、広報誌の発行、ホームページによる情報提供、研修会の開催、事例集やパンフレットの配布、一般市民向けのイベントなどを実施しています。同様に、推進組織や市町村、一部の活動組織においても、ホームページを作って、活動の PRや SNS(Facebook:フェイスブック、Twitter:ツイッター、YouTube:ユーチューブ、LINE:ラインなど)を活用した情報発信などが行われています。

 でも、末端組織の生の声はGoogleで検索してみてもあまり見つからないように思います。ホームページやSNSを誰が作って、誰が管理するのか、発信できる情報ってそんなにあるのか、金がかかるじゃないか(実際には無料でもやれる)と、消極的になる要素ばかりが議論されて、二の足を踏んでいるのでしょう。

 つい最近、かなり充実したSNSを見つけました。今年、楽ちん多面のユーザーになっていただいた岡山県笠岡市のよしだむら環境保全組合のfacebookで「よし今だ!農業新聞」です。無理に飾らないで、リアルタイムに地域環境を守るのに努力している様子がよく分かるし、ちゃんと商売や地域のPRにも繋がるようにしている。アプリをうまく利用すれば、事務連絡にも使えるし、関係人口との情報共有にも広げられる。多面事務是非一度立ち寄ってみて欲しい。

 もう3年前から情報発信を始めているようですが、まだ見ている人は少ない。でも、着実に進んでいます。短い文章でやったことと写真がアップしてあるだけだが、私はこれで十分だと思います。継続は力なりとなる日が必ず来ると思いますし、そして、やり方によっては、都市部を巻き込んだ大きな活動に発展していくと期待しています。

 この地区以外にも情報発信をしている組織は全国に多くありますので、今後も、参考になるものを見つけた時は紹介していきたいと思います。

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