農業の有する多面的機能とは何か

 初めての「言わせてもらえば」の投稿をさせてもらいます。

   最初に何を書こうかと悩みましたが、「農業の有する多面的機能とは何か」という、「そんなことは今更聞きたくないよ!」と言われそうな題材を選びました。表題だけ見て、それは知っているからと、ここで読むのを止めずに、是非、最初の投稿なので、最後までお付き合いいただければ幸いです。

  農業・農村の有する多面的機能とは何かと言われると、農林水産省のホームぺージにあります、「国土の保全、水源の涵養(かんよう)、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等、農村で農業生産活動が行われることにより生ずる、食料その他の農産物の供給の機能以外の多面にわたる機能」というのが最も一般的で、これは、平成27年4月1日から施行されている「農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律」において、多面的機能の定義が書かれた第三条と同じ内容です。また、第一条には法律の目的が次のように示されています。「この法律は、農業の有する多面的機能の発揮の促進を図るため、その基本理念、農林水産大臣が策定する基本指針等について定めるとともに、多面的機能発揮促進事業について、その事業計画の認定の制度を設けるとともに、これを推進するための措置等について定め、もって国民生活及び国民経済の安定に寄与することを目的とする。」と。

 平成19年より、法的根拠のないまま進められてきた農地・水・環境保全向上対策は、今や多面的機能直払い、中山間直払い等、日本型直払いとして法的根拠に基づいて実施される事業となった訳です。

 只、平成19年以前より、多面的機能の維持向上に向けた独自の活動をいくつかの地域で手掛け、支援してきた私の見方としては、法律ができて、予算と制度は手堅くなったものの、その分、制度維持のための申請手続きや経理がハード過ぎて、多面的機能維持に向けた活動の趣旨は、実際に活動を担う住民には十分に伝わらず、なんとなく、「草刈りしたり、水路の補修をしたら国からお金もらえるんだって」みたいなことになってしまっているように感じます。経理や活動記録も、まるで悪用がないことの証明みたいになってしまい、この使い方によって、多面的機能の維持発揮を通して、地域の活性に繋がっているのかなんてことを考える根拠になっていないように思うのです。

 極端な言い方をすれば、俺たちの地域は、集まって酒さえ飲んでいれば、多面的機能は維持され、活性化も図れるんだと豪語される地域があるなら、酒代に使って良いんじゃないのと言いたいぐらいだ(すみません 言い過ぎました)。 

 私が言いたいのは、制度維持のための活動にならず、自分たちの地域を活性化するための多面的機能をしっかりと見定めて欲しいということ、そして、行政にはそれが充実するような簡易な制度設計にしてほしいと言うことです。その上に成り立つ交付金であるということです。 (地域活性化という言葉を私はよく使いますが、私の言う活性化は、考えた挙句、我々の地域は活性化せずに良いという結論が得られたのなら、それも活性化です。是が非でも活性化すべきという意味ではありません)

 また、多面的機能というと、上記したようなお決まりの機能が羅列されて、「なんとなく、農業を続ければ、こういう機能が守れるんだってさ」って開き直らないで、是非、機能を生活の中で実感を以って進めてもらいたいと思います。

 何かよくわからない機能に対して、国民的合意はなく、法律を盾にしてはいけないと言いたいのです。アベノミクスで景気が良いと言われるが、実感できますか。そうではないでしょう。自分の収入や給料が上がることを以って初めて景気が実感されるように、多面的機能も自分の生活の質を以って実感していくべきだと思います。

 本来、多面的機能は、制度によって維持しているのではなく、そこに住み、農業を営むということで維持でき、発揮され、それがまた農業と農村の持続性を担保するものだという原点を忘れてはいけないのではないでしょうか。

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