新発田市上三光地区で勉強会

 7月4日、上三光農村環境保全・清流の会の勉強会に呼ばれ、かなり激しい雨の日ではありましたが、朝から車を走らせ、つくば市から約400km新潟県新発田市まで出かけました。

 この地区は、多面的機能支払交付金の活動組織として、平成24年から活動されていますが、母体となる地域づくり協議会はそれ以前から活発に活動をしており、農村住民主体での持続可能な「新たなムラづくり」を目指して、これまで様々な課題に挑戦し続けています。

 私がこの地区を初めて知ったのは、確か平成24年に金沢市内で開かれた多面的機能支払いの北陸地区「農村振興リーダー研修」であったと思います。その懇親会の席で、会の代表で、現在も代表を務めておられる小柳繁氏と地域づくりについて意気投合しました。当時、私は農村工学研究所の教授職でありましたが、その後、現地にも伺い、地域づくりの技術の一つとして、GIS(地理情報システム)の紹介をさせていただきました。土地や施設、文化、景観、生態系等の様々な資源をGISで管理することで、農村と農業の存続のための戦略が生まれて来るのではないかと講義し、その一つとして、農研機構で開発されたVIMSの導入も提案しました。

 なお、地理情報システムは地図上で、圃場、建物、道路、水路などの地物に番地、名前、構造や土地所有、営農の情報をリンクさせてデータを管理するパソコンのプログラムで、地図上で、例えば一筆の圃場をクリックすると、その所有者や貸借状況、作目、土壌状態などが一覧表で示されたり、所有者や耕作者の圃場がどことどこに分散しているかなどが地図に色分けて表示されるものです。

 私が力説するまでもなく、小柳氏は、地域資源の見える化は、共助の意識を再構築するためにも絶対に必要だということをよく理解しておられました。その後、私は、平成25年4月より農村工学研究所の企画管理部長を務め、研究の第一線から外れることになったため、後進に道を繋げ、上三光地区との直接の関わりは無くなりましたが、この地区が積極的にVIMS(農研機構開発で株式会社イマジックデザインが販売しているGIS)を導入し、これに農地の所有者、耕作者、用水路、地域の歴史・文化、集落電気柵、荒廃農地の情報などを入力し、一元管理していることは聞いていました。

 あれから9年が経過し、私も定年退職、癌を患い、細々と研究会をスタートさせておりましたが、今年の3月になって、急に小柳氏から電話があり、上三光へ来ませんかとお誘いを受けたのです。内容は、VIMSの活用において、頼みの綱になっていた農村工学研究所が撤退することになり、VIMS利用が滞っていること、かつ、将来的にこのシステムをどうしたらよいのかの迷いもあると言うことで、言い出しっぺの山本に話を聞いてみようということでありました。

 上三光地区では、夕方の4時から集会所に役員をはじめ5人の若い世代を含めた10人が集まりました。小柳氏によると、VIMSを活用して、農地の一筆ごとの土地の状況がすべて露わに見える化されたことで、耕作放棄地の解消には大いに役に立ったということでした。特に、猿の被害対策については、電気柵の位置データも入力でき、蕎麦の作付けによって、人の流れを猿が見ている山際に向けることで、人の圧力を猿に感じさせ、猿害対策として大きな成果を得たと思っている。そういう意味では、VIMSになるかどうかは分からないが、GISは使い続けたいという意見でありました。また、小柳氏は、出席した若い世代に、「自分の土地がどことどこにあるか、すぐわかるか?すぐ出てこないだろう。そういうのを一目で見られるのはどう思う」と声をかけました。声をかけられた若手は、「ここまでずっと、話を聞いてきたけれど、そもそもGISってなんですかという感じです」と、私の顔を見られた。GISを知っている人たちが集まっているものだと思って当たり前のようにGISについて話していた私は、まだその価値が若い世代に伝達されていないことを知り、少し驚きましたが、小柳氏によると、親父さんたちにはGIS活用していることは伝えているが、おそらく、彼らがそれを家に帰って、息子さんたちには伝えていないということだと言っていました。

 ここまで聞いたところで、問題は明白になりました。もちろん、若い世代がこの日の話をどう受けとめたかが鍵となってくるものの、ようするに、上三光地区の私への相談は、「GISの利用を続け、若い世代へ繋げていきたいなら、どうすれば良いか」と言うことなのでしょう。

 GISについては、本ホームページの「農村づくり講座」や「農村ICT講座」で紹介しているものの、とてもお金のかかるソフトであることには違いなく、また、VIMSについては、他社のGIS製品よりは操作が簡単ですし、価格もそうとう安いものですが、素人が使うにはやはり難しく、かなり勉強をしてもらわないといけません。地図情報や正確なデータをそろえるにも、ソフト自体の保守管理にもお金がかかり、「労力」と「資金」をそれなりにつぎ込まないと使えない代物です。

 最近、クボタの「KSAS」や富士通の「アキサイ」のような営農・生産管理を中心にした安く簡単にできるクラウド型のGISも出てきました。VIMSは確かに、山本が関わって開発されたもので、宮城県下を中心に、岩手県、茨城県などでも普及しているので、もっと全国で利用してほしいとは思っています。しかし、VIMSでなければならないとは思っておらず、どんな市販ソフトを使ってもらってもいいのです。大切なことは、簡単なことをやるだけなのに、様々な機能を搭載した価格の高いシステムを使う必要はないということで、そのためにも、『自分たちがやりたいことを明確にし、それを実現する「効果」と、情報を子孫へ残していくために導入するGISシステムの維持のための「経費」と、それを持続的に使っていける「体制」の3つ皿を天秤にかけ、平衡に保てるかを考えることです。』

 多面的機能支払いの活動項目の中に、「遊休農地の有効活用」だとか、「鳥獣被害防止対策及び環境改善活動の強化」、「防災・減災力の強化」、「外来種の駆除」なんて項目がありますが、これらは、計画して実施すれば良いと言う活動ではなく、何をやったらより効果があったと言えるのかが問題となります。実施すれば、それらしいことはできるだろうし、それをやったら計画達成とはなるだろう。でも、真剣に考えれば、結構難しい問題であり、勉強し、分析する武器がなくてはならないだろう。多面的機能支払交付金において、草刈り機を買うことには誰も文句を言わないが、土地利用を戦略的に進め、多面的機能の維持増進を図るための頭を使うところのICTに金をかけようとすると、直接的にその道具が草を刈ってくれる訳ではないから、不必要と判断されるみたいだが、私はおかしいと思う。

 多面活動の事務処理もそうだ。事務処理が多面活動の目的ではないので、事務処理ソフトを使ってスマートにやってしまえば良く、もっと集落を良くするためとか、多面的機能を最大限に発揮するための戦略づくりに時間をかけてもらいたい。そのために、研究会は事務処理軽減ソフト「楽ちん多面」を販売しているつもりだが、未だにそういったものは交付金で買えないと思っている地区や市町村もあるようです。

 上三光地区は、まさに、土地情報を徹底的に見える化することで、将来像を見据えようとしている。多面的機能支払交付金においては、これから広域化も進んで、お金も集約され、活動の幅は広がるはずだ。今回、上三光の勉強会に参加して、私は確信した。戦略的な多面活動を進めるためのICTの活用はとても重要だということだ。農村は情報リテラシーが低いから、そんな高度なことはできないなんて、そんなところで止まっていてはいけないと思うのだ。皆さんはどう考えますか。小柳さんをはじめ、上三光・清流の会の皆様、たいへん良い勉強になりました。呼んでいただきありがとうございました。

※小柳氏は、令和2年度には、第七回ディスカバー農村漁村の宝を、個人部門で受賞されており、清流の会は平成30年には、「鳥獣対策優良活動表彰」で農村振興局長賞も受賞しています。第六回ディスカバー農村漁村の宝でも、筆者が関係した山形県河北町の元泉地域農地・⽔・環境保全組織運営委員会も選出されており、2年続きで私としては嬉しい限りです。

※アイキャッチの写真は圃場整備が終わった上三光地区の田んぼ。雨にけぶった静かな佇まいだが、何とも言えぬ力強さを感じる。

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